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朝起きたら、 飼い猫が美女になっていた  作者: ベル


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第九話 風呂は嫌い

風呂だけは、こはくがどうしても好きになれなかった。


「入らない」


浴室の前で腕を組む。


「昨日もシャワーだけだっただろ」


「だから今日はいい」


「よくない」


猫だった頃も水が嫌いだった。


直人が一度洗った時には、腕に引っかき傷が残った。


「湯船は入らなくていい。シャワーだけ」


「上から水くる」


「来る」


「嫌」


結局、直人は浴室の外から使い方を説明することになった。


三十秒もしないうちに、浴室から声が飛んできた。


「直人」


「何?」


「冷たい」


「温度上げろ」


それから一分もしないうちに、また呼ばれた。


「直人」


「今度は?」


「泡、目入った」


「流せ」


「水嫌」


「流さないほうが痛い」


しばらく格闘した末、こはくはどうにか一人で出てきた。


髪はびしょ濡れだった。


「ちゃんと拭け」


「疲れた」


「座って」


直人はタオルで長い髪の水気を取る。


そのあとドライヤーを見せると、音を出した瞬間にこはくの肩が跳ねた。


「これ嫌」


「弱くする」


風量を落とし、距離を取る。


「熱くない?」


「平気」


直人が髪を分けながら乾かしていると、こはくは鏡越しにこちらを見た。


猫の頃なら毛を乾かすために触れることなど何とも思わなかった。


今は首筋や肩が近い。


直人は必要以上に意識しないよう、手元だけを見る。


乾かし終えると、こはくはソファへ移動した。


「頑張った」


「自分で言うんだ」


「ご褒美」


「何がほしい?」


こはくは直人の膝へ頭を載せた。


「これ」


直人はため息をつきながら髪を撫でる。


「風呂入るたびに要求する気?」


「嫌?」


「嫌じゃない」


「じゃあいい」


最近、この返しに弱い気がする。

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