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朝起きたら、 飼い猫が美女になっていた  作者: ベル


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第二十四章 耳がない朝

翌朝、直人は洗面所から呼ぶ声で目を覚ました。


「直人!」


何事かと走ると、こはくが鏡の前に立っている。


「耳」


髪の間にあった猫耳が、完全になくなっていた。


人間の耳は残っている。


「痛い?」


「痛くない」


「熱は?」


「ない」


尻尾はまだある。


直人は反射的に、「帽子いらなくなる」「外出やすくなる」と便利な点を並べかけ、こはくの表情を見て止めた。


「どうした?」


「私、かわいくなくなった?」


「何でそうなる」


「耳なくなったから」


「耳で決まらないだろ」


こはくはようやく安心したように鏡を見る。


その日は帽子なしで外へ出た。


昼には写真が届く。


《普通に歩けた》


やがて、もう一件届く。


《かわいい?》


直人は画面を見つめてから、《かわいい》と返した。


夜、こはくはリビングで頭を触りながら言った。


「楽だった。でもちょっと寂しい」


「俺も少し」


「直人も?」


「八年見てたから」


こはくは尻尾を見る。


「これもなくなるかな」


「分からない」


しばらくして、こはくが直人の隣へ座った。


「耳なくても撫でて」


「耳のために撫でてたわけじゃないよ」


「じゃあして」


直人は髪へ手を置いた。


尻尾がゆっくり揺れる。


その夜までは、耳がなくなったことを、ただ一つ変化が増えただけだと思っていた。

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