第二十二話 直人が熱を出す
月曜の朝、直人は目覚ましが鳴っても起きられなかった。
喉が痛く、身体が重い。
「直人」
こはくが額へ手を当てる。
「熱い」
「仕事行く」
「行かない」
「会議」
「倒れたらもっと困る」
体温は三十八度一分だった。
しばらくして測り直すと、三十八度四分まで上がっていた。
直人は諦めて会社へ連絡した。
こはくはスマートフォンで発熱時の対応を調べ、水と冷たいタオルを持ってくる。
「何食べられる?」
「何でもいい」
「それ困る」
「おかゆ」
「作る」
台所から何度か物音がした。
出てきたおかゆは水分が多かったが、熱のある直人にはちょうどよかった。
「味どう?」
「うまい」
「ほんと?」
「今日は本当」
薬を飲み、また眠る。
夕方に起きると、こはくはベッドの近くで本を読んでいた。
「ずっといた?」
「ずっとじゃない。洗濯したし、ごはんも食べた」
以前なら、看病するのは直人の役目だった。
「ありがとう」
「昔、直人もしてた」
「猫の時?」
「うん。病院も連れてった」
夜になり、直人が「こっちで寝てもいい」と言うと、こはくは首を横へ振った。
「風邪うつる」
「急にまとも」
「調べた」
自分の部屋へ戻る前、こはくはドアを少し開けておいた。
直人の寝室のドアも開けたままにする。
夜中、目を覚ますと、こはくが水を確認しに来た。
「ありがとな。今日のこと全部」
「早く治して」
翌朝には熱が下がっていた。
直人は出社しようとしたが、少し考えてもう一日休むことにした。
こはくは何も言わず、笑った。




