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朝起きたら、 飼い猫が美女になっていた  作者: ベル


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第二十話 同じ家の、少し遠い場所

数日後、こはくは物置代わりにしていた小さな部屋を片づけ始めた。


「何するの?」


「私の部屋にする」


直人は意外に思った。


「今までリビングで足りてたじゃん」


「服も増えたし、私のもの置くところほしい」


もっともな理由だった。


直人が棚を運ぼうとすると、こはくが先に持つ。


「手伝う」


「これは私がやる」


「重いだろ」


「無理なら言う」


直人は手を引いた。


机の上には、こはくが今日自分で買ってきた黄色いマグカップが置かれていた。


「前に見てたやつ?」


「うん。やっぱり欲しかった」


直人の知らないところで、自分の部屋に置くものまで選ぶようになった。


その夜から、こはくは自分の部屋で寝ることにした。


以前なら直人の寝室へ来ることも多かった。


電気を消すと、家の中は静かになった。


数分後、スマートフォンが震える。


《直人》


《起きてる?》


《起きてる》


《静か》


直人は画面を見ながら小さく笑った。


《隣の部屋だから》


《でも遠い》


《数メートル》


《それでも》


しばらく迷ってから返す。


《俺も少し静かすぎる》


すぐ既読になった。


翌朝、こはくが自分の部屋から出てくる。


「寂しかった?」


「少し」


「私も」


直人はコーヒーを注ぎながら言った。


「寝る場所は自分で決めていいよ。たまにこっち来てもいいし」


「毎日は?」


「それは相談」


こはくが笑う。


距離を取ることは、離れていくこととは違う。


同じ家の中に、それぞれの場所ができた。

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