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朝起きたら、 飼い猫が美女になっていた  作者: ベル


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第十七話 他の女の匂い

金曜日、直人の帰宅は少し遅くなった。


「ただいま」


玄関へ出てきたこはくは、返事をする前に鼻をひくつかせた。


「女の人の匂いする」


「またそれ分かるの?」


「肩」


直人は上着を見る。


思い当たるのは、エレベーターで佐伯美咲と一緒になったことくらいだった。


「佐伯さんかも。会社で近くにいただけ」


「美咲?」


「そう」


こはくは美咲を嫌っているわけではない。


むしろ自分から連絡を取り、休日にも会っている。


それでも眉が寄っている。


「何か嫌?」


「美咲は嫌じゃない」


「じゃあ何?」


しばらく黙ったあと、こはくは直人の肩を見たまま言った。


「直人から、私じゃない女の人の匂いするのが嫌」


直人は返事を失った。


「でも会社なら仕方ないだろ」


「分かってる」


「じゃあ」


「分かってるのと、嫌なのは別」


言い切られ、直人はそれ以上説明できなかった。


風呂から上がると、こはくがまた近づいて匂いを確かめる。


「なくなった」


「満足?」


「うん」


「俺、今どんな匂い?」


こはくは考え込む。


「家の匂いに近い」


「家?」


「シャンプーと、洗濯した服」


こはくは自分の髪をつまんだ。


「私も同じシャンプーにする」


「好きなの使えばいいだろ」


「同じがいい」


理由を聞くと、一拍置いて答えた。


「家の匂いするから」


直人は何も言わず、新しいシャンプーを買うことだけ了承した。

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