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朝起きたら、 飼い猫が美女になっていた  作者: ベル


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第十六話 ひとりで帰れる

土曜日、こはくは美咲と駅前の商業施設へ出かけた。


午後になり、美咲に家族から連絡が入った。


予定より早く帰らなければならなくなったらしい。


「一緒に帰る?」


そう聞かれたこはくは、少し考えた。


「もう少し見てから帰る」


美咲と別れたあと、一人で店を見て回った。


黄色いマグカップを見つけ、手に取る。


気に入ったが、その日は棚へ戻した。


代わりに必要だった髪ゴムだけを買う。


帽子がずれていないか、尻尾が見えていないかを鏡で確かめ、駅までの道をスマートフォンで見る。


電車のホームでは、進行方向を何度も確認した。


直人からメッセージが来る。


《迎え行こうか》


こはくは考えてから返した。


《いらない》


《帰れる》


《家で待ってて》


電車を降りたあと、駅前でプリンを二つ買った。


こはくが玄関を開ける。


「ただいま」


「おかえり」


直人がすぐ出てきた。


「迷わなかった?」


「迷ってない」


「電車間違えなかった?」


「間違えてない」


「変な人に――」


そこまで言って、直人は口を閉じた。


「ごめん。聞きすぎた」


「ちょっと怖かった」


こはくが靴を脱ぎながら言う。


「でも分かんなかったら直人に電話すればいいって思った」


「それでいい。必要なら迎えに行く」


「今日は必要なかった」


「うん」


こはくは紙袋からプリンを二つ出した。


「これ、直人の」


「ありがとう」


「一人で帰れたからご褒美じゃないよ」


「分かってる」


「食べたかったから二つ買った」


「それも分かる」


張っていた空気がほどけ、二人で笑った。


その夜、ソファでは肩を寄せて座った。


家に帰ることと、一人で帰れることは矛盾しないのだと、直人も少しずつ分かり始めていた。

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