第十二話 見つけてしまった動画
新しいスマートフォンを持って数日で、こはくの検索履歴は急速に増えた。
料理や猫、服、髪型、電車の乗り方まで次々に調べていて、直人が帰宅すると、分からなかったことを一つずつ確認される。
その夜、こはくがソファで動画を見ていた。
「直人」
「何?」
「これ何してるの?」
差し出された画面を見て、直人は固まった。
画面に映っていたのは成人向けの動画だった。
「何でこれ出てきたの?」
「恋人って何するか見てたら出た」
「そういう検索の仕方するなよ……」
直人は画面を閉じた。
こはくは不満そうに直人を見た。
「教えて」
誤魔化せば、また自分で調べるだろう。
直人は言葉を選んだ。
「大人同士が、お互いにしたいと思った時にすることがある。身体を触ったり、もっと近いことをしたり」
「恋人ならする?」
「する人もいる。でも、恋人なら絶対するものじゃない」
「片方だけしたい時は?」
「しない。二人ともいいと思ってることが大事」
こはくは真剣に聞いている。
「途中で嫌になったら?」
「やめる。最初にいいって言ってても、途中で変わっていい」
「動画の人も?」
「動画は見せるために作ってるものだから、現実と同じだと思わないほうがいい」
こはくは答えを探すように黙った。
「直人、したことある?」
「そこまで聞く?」
「ある?」
「……ある」
「ふうん」
妙に気になる反応だった。
しばらくして、こはくがまた聞く。
「私と直人もする?」
直人は思わず咳き込んだ。
「何でそうなる」
「私、直人好き」
猫だった頃から何度も聞いてきた意味の「好き」なのか、それとも違うのか、今のこはく自身にもまだ分かっていない。
「好きにも色々あるんだよ」
「色?」
「家族みたいな好きも、友達の好きも、恋人の好きもある」
「私のは?」
「それは俺が決めることじゃない」
こはくは少し不満そうだった。
「分かんない」
「急いで決めなくていいよ」
「直人いないと嫌だし、帰ってくると嬉しい。撫でてほしい」
「それは知ってる」
「でも恋人かは分かんない」
「じゃあ、今はそれでいい」
こはくはしばらく考えたあと、直人の隣へ寄った。
「撫でて」
「結局そこ?」
「これは分かる」
直人は苦笑して髪へ手を置いた。
自分のほうは、以前より簡単に考えられなくなっていた。




