第19話 新たな力
愛らしく、エモい戴冠式を眺めていると……ルーちゃんが「あっ」と、短く声を上げ、宙を見つめてニッコリと微笑んだ。
うちの子はなにをしても可愛いなあと、パンさんと二人デレデレしていると、たったたったとルーちゃんが駆けてきた。
「ユウ、ママ! 聞いて聞いて!」
「んー? ルーちゃん、どうしたんだい?」
「どうしたのー?」
「あのね、あのね! ルーちゃんね、出来ることが増えたみたいなの! ルーちゃんのスキル見てみて!」
そう、嬉し気にルーちゃんから言われ、パンさんと二人ワクワクしながら見てみたところ。
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名前:ルト
職業:ダンジョンコア
LV:12
体力:7600
魔力:9200
スキル:人化 ダンジョン管理LV2 勧誘 使役 召喚 自動翻訳
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「パン先生……ダンジョン管理にレベル表記がついてんすけどこれは……」
「フロアマスターを指定した実績でアンロックされた……という考え方でいいんじゃない?」
「相変わらずフワッフワな解答をくれる女神様だねえ」
「うるさいですね……」
「ダンジョンを構成する要素が最低限揃ったから、ユリカゴシステムに認められて仮登録から本登録になったみたいな感じだったりしてな」
「……無駄にそれっぽいこと言うのやめなさ……大体合ってた……」
「マジかよ……」
「フロアマスター、つまりボスキャラを配置したので、コアとしてきちんと認められたみたい。これからは何か成し遂げるたびに管理レベルが上がってできることが増えるみたいね」
「ほんと自分の世界の仕様知らねえよな……って、わかった。これはダンジョンシステムだから、ユリカゴシステムとちょっと違う管轄なんだな?」
「察しが良いわね……そうよ。ダンジョンシステムは後付のMODみたいなもんだからさ、まあ、こういうこともあるわよ」
「雑に誤魔化しよったわ……それで、ルーちゃんは何ができるようになったんだ?」
「んー……ざっくり言うと、ダンジョンを今以上に弄れるようになったみたいね」
「んー……あの湿原をますます広げられるってこと?」
「半分正解ね。さらに広く出来るし、今以上に外と変わらない環境を作れるようになったみたい……といっても、リプラシルだと地形や気象くらいしか恩恵がないけどね」
「ああ、動物いねえからな」
「くっ……でもね、それはおまけみたいなものよ」
「これがおまけだと……」
「驚きなさい、なんと五階層まで作れるようになったわよ!」
「うおおお……まじか! ということは?」
「ええ、森の階層を作って、ウサギたちを招待することができるわ!」
「やっとかあ……これでクロベエが帰ってくるわ……」
「あはは、クロベエちゃん、なんやかんやいってヒカリちゃんとこに居座ってるもんね」
「ほんとにな……」
「あ、あとさ。自由度が上がったおかげで、私が介入できることが増えたのよ」
「ほう、詳しく聞かせてくれ」
「ダンジョンのリスポーンシステムってあるじゃない?」
「なんか、死なないようにするやつな」
「そうそう。それを含めたシステム周りに、ユリカゴシステムを組み込んで色々できるようになったのよ」
「おお……それはいいことを聞いた。前も言ったけど、ダンジョンでやりたいことがあるからさ、後で相談にのってくれよ」
「何を企んでるのかわからないけど……話くらいは聞いたげる」
◇◇
というわけで、さっそくその場で第二階層【森エリア】をルーちゃんに作ってもらった。
と言っても、最初にできるのは、ベースとなる何もない小さな仮階層で、そこに降り立って、あれやこれやコアの力で環境を整えていくそうだ。
普通に面白そうだし、ルーちゃんが活躍する様子は見たかったんだが……仮階層にはパンさんとルーちゃん以外は入れないとのことでなあ……。
俺は一人寂しくお留守番ですわ……。
前はさ、こんな時にもクロベエが居てさ、モフモフに埋もれてお昼寝してたんだけど……あいつ、ヒカリちゃんに取られちまったからなあ!
まあ、しゃあない、しゃあない! クロベエくんが幸せならええねん!
ええねんけど!
ちょいちょいタルットが絡みに来んのがとってもだるいねん!
「なあなあ、ユウさん、ユウさん。わいもモル丸さんみたいにしてくれや」
「うっせえなあ。タケだっけか? お前みてえなアホを強くしたら面倒なことになんの目にみえてんだろ」
「せやかてユウさん……チアキに先越されたら嫌やし……ユウさん、チアキにお願いされたらコロッと行ってしまうやろ?」
「行かねえから! あーもう、うっせえなあ。これやるから、お前がどっか行け!」
うるさすぎて辛くなってきたので、ストレージからキウンバを数本取り出し、遠くに向かってポイポイ投げてやった。
「うおおお! キウリーやんけ! もったいないことすんなや! おい、こら! 拾うな! ワイのや!」
……ふう、静かになった。
やっぱあいつら、河童だよなあ……どっからどうみても河童だ……つうか、河童に似非関西弁喋らせんじゃねえよ……どっかの野球好きなアレみたいだろうがよ……。
うーむ……静かだ。
ジメジメっとしちゃいるが、池に釣りに来たと思えば気分も安らぐってもんよ。
ああ、そのうち釣り道具でも作って釣りしてえな。
……タルットが釣れたりして。
「なあ、ユウさんもっとくれや!」
「うまいキウリーがもらえるときいてきたで」
「くそがよ、増えてんじゃねえよ……おら!」
……ふう。
「キウリーわいにも!」
「わいもわいも!」
「うまいらしいやん!」
うおおおおお! 追い払えば追い払うほど増えていく! 増えるタルットとか悪夢でしかねえ!
「ピィイイイイイイイイイ!」
……こういう時は指笛吹いてモル丸を呼ぶに限る。
ほうら、ピョンコピョンコ飛んでやってきたぞ。
「いかがなされた、ユウ様」
「……こいつらどっかにやってくれ」
「了解した」
タルットたちが、モル丸にくるまれて去っていく……いやあ、マジで頼もしいなモル丸。
つうか、最初の時点でやっとくべきだったわ……。
「ユウー! すっごいのできたよお!」
……なんてやってたらルーちゃんたちが戻ってきたぞ。
タルットたちが良い暇つぶしになったのがなんか悔しいぜ。
「おかえり。さっそく見に行きたいんだけど、どっからいくんだ?」
「ふふ、ユウ、あんたさ、ルーちゃんのお仕事見たがってたでしょ」
「ああ、今日ばっかりは、なんで俺は管理神じゃねえんだって悔しかったよ……」
「そんなユウにルーちゃんのお仕事見せてあげるわ」
「どういうこと?」
「二階層への入口はね、まだ無いの。今から作るから、見せにきたのよ」
「おお……パンさんが女神に見える……」
「うっさいわね! 見えるも何もはじめっから女神だっつーの!」
そうでしたね。
「じゃ、ユウみててね! そこに入り口、創るから!」
「おう! ルーちゃんの頑張るところみてっからなー!」
目を閉じて両手を前に伸ばすルーちゃん。
「えいっ……むむむむー!」
可愛らしい掛け声とともに、周囲に石でできた壁が生成されていき、それがパラパラと削れて小さな神殿のようなものが作られていく。
床には魔法陣が描かれていて、ぐぐっとATMのようなものがせり上がり……最後にピカっと光って転移門が誕生した。
前に聞いたとおり、入り口と一階層を繋ぐゲートより小ぶりのもので、一度に通れるのはせいぜい六人前後といったところか。
「ねえねえパンさん。これってここの妖怪どもも使えちゃったりするの?」
「いいえ? あいつら馬鹿だから、間違いなく二階層の子達に迷惑かけるでしょ?」
「確実に『森のフロアマスターはわいや!』とかいい出すわ……」
「でしょ? まあ、でも完全に隔離するのもアレだから、ルーちゃんから許可証を付与されたら通れるわよ」
「ほーん……素行がいい奴は行き来できるか……面白いな……だってさ、残念だったな、アホども。行きたかったら妙なこと考えねえでお行儀よくしとけ」
「げ、げえ! バレとる! 撤退や!」
さっきから藪の中からこっちガン見してたからな……ほんとアホだわ……。
「なあ、提案なんだけどさ、ここをフロアマスターの部屋にしようぜ。さっきから馬鹿共がチラチラ見えてんだよ」
俺の言葉が聞こえたのか、懲りずに戻って来たらしいタルット共がギクっとした顔で目をそらしている。
「そうね、そうしましょう!」
「モル丸、このお部屋をよろしくね。ルーちゃんのゲート守ってね?」
「仰せのままに、ルー様」
整備されてて綺麗だもんな、お前らだって気に入らないわけがないよなあ。
けど、たまり場にさせるわけにはいかねえんだわ。
おら、モル丸さんのお部屋になったぞ、諦めて散れ散れ!




