第9話 魔石大事マジ大事
……朝かぁ。
スマホを見ると時刻は朝七時。
長年染み付いたクセで、出勤時間に合わせて目が覚めちまうんだよなあ。
はあ……せっかく気ままに過ごせる異世界に来たっつうのによお……するか? しちゃう? うん、せっかくだし二度寝しちゃおう!
……なんて、思ったところで腹が『クゥ』と鳴った。
寝起き早々に飯を求めるたぁ、俺の胃も元気になったもんだ。
ええと、確かカロリーバー的なアレがあったよな……文句は言ったが、普通に助かるわ。やることありすぎて食料まで手が回らなかったからな。
たぶんしばらくの間は、こうしてログボを通じた援助があると思うんだ。
けどさ、どうせそのうち無くなるんだろうなって思うんよ。
だってパンちゃんだぜ? きっとどっかのタイミングで、うっかり一日忘れたりしてさ、そっからズルズルと配信しなくなるんだ。
『自給自足を促すためよ。ちゃんとできてるようだし、もう私の援助はいらないわね……』とかさ、へたくそな嘘をついてごまかすのが目に見えるわ……。
うん、確実にそうなるな!
……そうなる前に、マジで自給自足を実現しとかねえとヤバそうだ。
近々訪れるであろう危機に震えながら身体を起こし、スマホをいじる。
貰えるうちはちゃんと貰っておかないとね……アプリを立ち上げてっと。
『……今日のログインボーナスはこれ! <水三日分>明日はこれがもらえるよ! <魔石一個>』
ドサドサっという音をたて、肩をかすめて二リットルボトルに入ったミネラルウォーターが三本降ってきた。
あっぶねえ!
横になってたら顔に当たる位置だったぞ! わざとか? わざとなんだろ!
つうか、一日二リットルってどうなんよ。なんか根拠あるんかな……適当かもしれんな、パンちゃんだし……つうか、泉みっけたから今更感がすげぇ。
でも、ペットボトルが手に入ったのは嬉しいな。透明な容器なんて自分じゃ作れる気がしねえからな。
……異世界にペットボトルというオーバーテクノロジーを持ち込みやがってという気持ちもあるが、これは何かと便利に使えるからな……サバイバルものでめっちゃ使われてるの見るし。
ここは素直に感謝の気持ちを念じておこう。
(ありがとう、パンちゃん様)
朝食後、ソシャゲができない手持ち無沙汰から、【リパンニェル】を立ち上げてみたところ……なにやら『クラフト』という項目が増えていた。
なんじゃこりゃと押してみると――
【開拓】 【建造】 【製作】
と、三つの項目が表示されたが、なんなんこれは。
名前からして、それぞれの作業に使う道具たちが格納されてんのかな。
もしそうならすげーありがたいけど、パンちゃんだからな……嫌な予感がすげえするわ……。
なんにせよ、道具は必要だ。とりあえず適当に押してみよう。
【開拓】をタップすると『クラフト中 残り時間 十二時間』と表示された。
パンちゃんさん?????
一体何がどうなってんのか、まったく説明がないんですけど?????
つか、完了まで十二時間てなめてんのか。
どうせソシャゲを真似たんだろうけどさ、あれって、プレイヤーをアプリに拘束するための仕組みじゃん?
そんなのこのアプリに実装してどうすんだよ! こういうのは、押したらぱっと使えるようにしろよな!
まあ……でも。
ソシャゲが封印されちまって暇だからな。こういう遊び心は悪くない。
十二時間後に何が起こるのか……楽しみに待とうじゃないか。
ガチャみたいにランダムなのか、セットでくれるのかはわからんが、なにかしらの道具を貰えるのは確かだろう。
クラフトを待つ間、地図を見ながら開拓の予定を立てるとするか。
そこそこうろついたから、結構範囲が広がっているはず。本宅はこの周辺に建てるとして、畑やら道やらも考えないとなあ……と、マップアプリを開こうとしたときに電池残量が目に入った。
【25%】
……おかしいな? なんかすっげえ減って見える。もっかい見てみよう。
困ったことに、何度確認をしてもものすげえ減ってる……。
これまで何をしても減らなかったのに、どうみても【25%】になってるわ……。
「おいおいおーい! 電力消費をしなくなったんじゃないのかーい!? ノベルにありがちな無限バッテリーにしてくれたはずだろー?」
ポコン!
『電力消費はしない、しないがバッテリー残量が減らないとは言っていない』
「どこのくそじじいだよ! 一体どういうことなんだ?」
ポコン!
『この世界には電力という概念がありません。そこで、電力の代わりに魔力を消費する仕様に変更しました』
ポコン!
『最初はサービスでこちらから魔力を送信していたので、残量が減らないようになっていました』
ポコン!
『ですが、自分のを充電できないことに気づ……』(削除されました)
ポコン!
『……自立してもらうため供給を絶ったのです。クラフト機能の解放はそれを実感してもらうためでしたが、どうですか? 機能を使ったため一気に魔力を消費してしまったでしょう うふふ(口元を抑えて笑うネコのスタンプ)』
「うふふじゃねえんだわ……充電器もう一個買えばいいだけの話じゃねえかよ……」
ポコン!
『ち、ちがうってば。自立を促すためだって!』
「まあ、いいけどさあ……充電……充魔? 面倒だから充電でいいや、それはどうすればいいんだ?」
ポコン!
『簡単ですよ。魔石を用意して、その上にスマホを乗せるだけです。ほら、スマホでも無線充電とかあるでしょう? 板的な充電器に乗せるやつです。ああいう感じでいけます』
「ああ……明日のログボの魔石、なんやこれって思ってたけど、このためかよ」
ポコン!
『ですです。必要なものを必要になる頃に配布する、神采配でしょ? 女神だけに』
「やかましいわ! 思ったんだけど、ソシャゲで新要素が追加されたときってさ、チュートリアルで必要なアイテムくれたりしねえ? 魔石ってまさにそうだよな」
ポコン!
『たしかに……』
たしかにじゃねえんだわ……ぜってーノリと勢いだけでやってるだろ、こいつ。
「それで、その魔石一個でどんくらい充電できんの? パンちゃんのことだから、百パーセントってこたねえよな。半分くらいはいける?」
ポコン!
『……十パーセントです』
「え? 耳にスマホが詰まって聞こえねえ。五十パーセント?」
ポコン!
『十パーセントって言ったのよ! ログボ石なんだし、そんくらいが適切でしょ!』
「じゅじゅじゅ十パーセントォ? マジで言ってんのかよお前……つうか、クラフトしたせいで残量が二十五パーセントになったんだけど、他の機能もそんなに使うの?」
ポコン!
『そうですね、コストによりますが他のも結構使いますね』
ポコン!
『普段はほぼ減りませんが、クラフト機能を使っちゃうと、ログボ石くらいの魔石なら、三個から九個は使わないと賄えませんね』
「えぇ……普段減らねえのはいいけど、肝心のクラフトがそれじゃきつくね?」
ポコン!
『でしょうねww これから大変ですね、あははは(クソ笑ってる猫のスタンプ)』
「あははじゃねえんだわ! ログボ魔石が来るまでスマホが使えねーんじゃ、加護の意味がねえだろうがよ!」
ポコン!
『魔石は自分で取ってきてもいいんですよ?』
「えっ」
ポコン!
『魔石はこの世界の生命体の殆どが持っているんですよ? 魔獣を倒せば確実に手に入れられますよ』
「そうだった……なんか急に話が生々しくなってきたな……そうかあ、狩りかあ……」
ポコン!
『それ言ったら、いつまで経ってもお肉を食べられませんよ? お魚や山菜でお腹を満たす日々、きっと辛いですよお』
「うっ……それを言われると、ぐうの音も出ねえ」
ポコン!
『でしょ? 魔獣はそこらにポコポコ居ますので、頑張って倒しましょうねえ』
「気軽に言うけどよお……言葉の加護があるやん? 「痛い!」とか聞こえてきたら……ねえ?」
ポコン!
『ああ……そういうことですか。まともなコミュニケーションを取れるほど賢い魔獣はそれほどいないから平気ですよ』
「そうなん?」
ポポコン!
『ですです! 相対して言葉が通じるようなら戦わない、それでいいじゃないですか』
『というわけで、サクっと狩りに行こうぜ!(大剣を持ったネコのスタンプ)』
「狩りゲー誘うみてえにいうんじゃねえ!」
まったく、気軽に言ってくれるもんだぜ。現代人は生き物をころころするの慣れてねえんだぞ……。
でも、今後を考えると魔石は絶対に必要だし、肉は欲しい……。
……一回やったら耐性つくかな? きっとつくよな!
この世界で二年も過ごさなきゃならねえんだ、慣れるなら早いうちがいいに決まってら!
ようし、いくぜクロベエ! 狩りの時間だ!




