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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
4章 あらたなおともだち

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第9話 フラグはさっさと回収するものさ

 ガサガサ……ガササッ……


 ガサッ!


 藪を掻き分けて現れたのは、先ほどクロベエにクッコロされた白猫だった。


「ピャッ!」


 妙な声を上げたのは、ウッサロップ達だ。


 やべえやつが戻ってきたぞと、ビビリ散らかし、シュシュシュシュっと、素早く穴蔵に潜り込んでいった……と、思ったら、ピョコピョコピョコっと、顔だけだして妙な歌を歌い始めたぞ……。


「クロベエ クロベエ くろきせんし われらの せんし であったやつは やつざきだ」


「「「やつざき! やつざき! やつざき!」」」


「うなる かぜのは(・) てきをたつ」


「「「きりさけ! きりさけ! きりさけ!」」」


「クロベエ クロベエ われらのせんし みるものすべてを やつざきだ」


「「「やつざき! やつざき! やつざき!」」」


 物騒な歌を合唱してんじゃねえ! つうか、無駄に洗練されたコーラスいれんのやめろ!


 歌を聞いたクロベエはとても嫌そうな顔をしているが、白猫からの視線を遮るように、ウッサロップたちとの間に立った。


「もう来るなって、言ったよね?」


「まて……くろいやつ。われは……そいつらをかりにきたのではない」


「じゃあ何しに来たの? だったらここには用がないでしょ?」


「おまえとてもつよい……われと、こをつくってほしい……」


 ワァオ……。


「聞きましたパンさん!」


「ええ、ええ! 聞きましたとも、いやだわ、プロポーズですわよ、ユウさん!」


「情熱的ですわねえ……最近の若い子は凄いわねえ……」


「本当に……って、なにやらせんのよ!」

 

 ノリノリだったやろがい! しっかし、マジかよ。まさかのプロポーズだぜ。


 みろよ、白猫のやつ、ゴロンと横になって、腹を見せてるぞ。


 これ、完全に屈したやつじゃん。


「ねえねえ、ユウ。見なさいよ、あの子の顔……」


「うっわ、めっちゃトロンとした顔でクロベエみてんじゃん……」


「これ、完全に自分より強い男にときめく女騎士さんじゃない。うける」


 こいつめ、俺と同じこと考えてやがる……。


 マジでそんな感じだよなこれ……クロベエくんは……まんざらでもない顔してるな。


「ユウー……ヤバいよこいつ。ねえ、どうしたら良いかなあ?」


「お前はどうしたいんだよ?」


「えー? 困るよー。いきなりつがいになれって言われてもさ、嫌だもん。こいつ、もっかい殴らないとだめかなー?」


 尻尾の動きがうっきうきで草なんだ。


 なあなあクロベエくんよー。


 お前、心底嫌だぜーって声で言ってるがよ、俺がお前と何年一緒に過ごしてきたと思ってんだよ。


 困ってますよって顔をしてるけど、尻尾はブンブン振られてるし、チラチラ、チラチラ白猫ちゃんを見てるじゃん。

 

 うんうん、綺麗だもんなあ、あの白猫。


 デケえだけでまんま長毛の白猫だもんなあ。


 そういやお前、かーちゃん大好きだったな。


 お前のかーちゃん、ムギちゃんは……白猫だったもんな。


 なるほどな……ムギちゃんにどことなく似たアイツはドストライクってわけか。


 なあクロベエくん。


 俺は言ったよな? あっちの世界じゃ自由にさせてやれなかった分、こっちで好き勝手遊んでいいぞって。


 とはいえ、素直になれない気持ちはわかる。


 ようし……ここは飼い主であり、親でもある俺が背中をギュッと押してやろうじゃないか!


「あいつさ、なんか反省して大人しくなってるっぽくね?」


「そうかなあ……? うーん、そうかも……」


「なあ、せっかくだしよ、ちょっと向こうに行って話し合って来いよ」


「ええー? おれたちだけでぇー?」


「ここじゃウッサロップどもがうるせえだろ? 静かなところで話し合ってこいよ」


「うーん、ユウがそういうなら……仕方ないなあ、ああ、仕方ないなあ。ほんと仕方ないから、あっちでお話してくるよ」


 あいつ……めちゃくちゃ早口でいうじゃん……。


 みろよ、嬉しそうにブンブン尻尾振って白猫のとこに向かってったぞ。

 

 ふむ……藪の中に連れ込んで……ちぇ、普通に話し合いがはじまったわ。


 ……けど、この話し合い……内容がまた……うっわ、うっわ!


「ねね、ユウ、ユウ。もしかしてカップル成立しちゃう? しちゃうの?」


「そうね……白猫ちゃん、クロベエちゃんに一目惚れしちゃったみたいだし、クロベエちゃんも満更じゃないもの。きっと素敵なことになるわよ……ウフ、これから楽しくなりそうね」


「な、なにいきなりオネエ系保護者ムーブかましてんのよ……」


「だってよお……あの甘酸っぺぇ空気……素面で見てられねえよお……」


「ああ……確かに……」


 もっと離れりゃいいのにさ、すぐそこの藪に行ったもんだから、めっちゃ話し声が聞こえてくんのよ……。


 なんなのこいつら、初々しくて甘酸っぱくて聞いてるこっちが恥ずかしくなっちまう。


「お、おまえさ、本当におれに従うの?」


「ああ、したがう! われよりつよいおす、はじめて! おまえすごい!」


「まあね! おれは強いんだ!」


「われ、おまえすき!」


「お、おおおおおれがすき?」


「うん! すきだ! だから、こづくりしよう!」


「そんなに、おれがすきなの?」


「なんかいでもいう! われ、おまえがすき!」


 たぶんさ、文字に起こして読んでしまえば微笑ましい会話にしか見えねえんだよ。


 けどさ、俺の耳にはさ、気が強いアマゾネスの戦士がさ、とぼけた顔した異世界主人公に完堕ちしてさ、トロットロの甘ったるい声で子作りをせがんでるように聞こえるんだよ……。


「ユウ……これさあ、藪の中にいて姿が見えないからよけいに効くわよね……」


「言うなよパンさん……考えないようにしてんだから」


「だってえ……」


 ったく、耳まで真っ赤に染めて言うことじゃねえだろ。 


 それはそれで俺にクリティカル判定だわ。


「しょ、しょうがないなあ……お、おれのツガイにするかどうかはまだだ。とりあえず、な、仲間として付き合ってみてからだ!」


「ほんとうか! それでもうれしいぞ! うれしいぞ!」


 がばり立ち上がったかと思ったら、素早くクロベエに飛びついて、そのまま一緒に藪から飛び出してきたぞ……うわあ、めっちゃスリスリぺろぺろしてるじゃん……。


「やめろ! まだそういうのははやいだろ! こら、離せ! 離せってば!」


 白と黒のモフモフが組み合ったまま、こっちにゴロゴロ転がって来たぞ……。


 うーむ、こうしてみると黒縞のメインクーンもどきと白いメインクーンもどきがモフモフとじゃれあってるようにしかみえねえ。


 姿が見えれば、なんてこたねえな。めっちゃ癒されるわ。


 サイズはバグってっけどな!


「白猫、そこに居るのが俺の親のユウだ。仲間になるなら、ちゃんとユウに従うんだぞ」


「クロベエのおやなら、われのおやだ! よろしくたのむ!」


「お、おう……よろしくな」


「ユウ、こいつに名前をつけてあげて。このままじゃ呼びにくいからさ」


「名前か……なあ、俺がつけても大丈夫か?」


「かまわないとも。ユウはわれのおやじどのになった、もんだいない」


「そっかあ……じゃあつけるけどよ……うーん、名前なあ……クロベエの奥さんかあ……うーん、光姫……いやヒカリにしよう。お前の名前はヒカリだ!」


「ひかり……よきなまえをありがとう、おやじどの!」


「わたしはルーちゃん! ユウとママの子で塩のダンジョンのコアだよ!」


「おお……つよいちからかんじるとおもったら、おまえはコアだったのか……めがみさまと……おやじどののこ……つまり、クロベエのいもうとか」


「うん、そうだよ! クロベエはルーちゃんのおにいちゃん! それで、こっちがママだよ!」


「ええ、私はルーちゃんママで、この世界の管理神をしているの。よろしくね、ヒカリちゃん」


「ルーチャンとクロベエのははうえどの……おやじどののつがいか! われ、めがみさまにも、したがう!」

 

「つがっ……ち、ちがうわよ! ユウとはそんな関係じゃ無いから!」


「ははうえどの、すまない……われ、むずかしいことばわからない……」


「うー……あいつはルーちゃんのパパだし、あたしはルーちゃんのママよ? けどね、そういうことはしてないの。わかる?」


「うむ、あのコアはふたりのこなのだな。つまり……つがい!」


「あーーーーもう! めんどうだからもうそれでいいわよ!」


「よくねえだろ! 諦めんじゃねえ!」


「賢くなってから訂正するからいいの!」


 ……できればいいけどなあ……知らねえぞー? 後々気まずくなんの嫌だからな? マジでなんとかしてくれよな。


 この件に関してはパンに委ねるとして……本題に入ろうか。


「ヒカリ、頼みがある。聞いてくれるか」


「おお、おやじどの、なんでもいってくれ!」


「こいつら、ウッサロップを外敵から守ってくれないか?」


「ふむ……こいつらをか……」


 ウッサロップたちがマジかよって顔で俺を見ている。


 マジなんです。


 ヒカリもマジかよって顔で俺を見ている……いや、チラチラとクロベエの顔も見ているな……。


 なるほど、そういうことか。


「大丈夫だ、ヒカリ。なにもずっとやれってわけじゃねえし、守るのが終わったら、クロベエと一緒に暮らせるようになっからよ」


「ほんとうか?」


「ああ、本当だとも。それに……終わるまでの間、クロベエもここに通わせっから寂しくないぞ」


「ユウ、そんな勝手に……おれは別に――」


「おやじどの、まかされた! クロベエ、おまえくるの、たのしみにしてる!」


「――うぐっ……しょ、しょうがないなあ……」


「よし、交渉成立だ! ウッサロップたちよ、よく聞け! この『ヒカリ』は俺たちの家族となった! もうお前らを襲わないし、敵から守ってくれるぞ!」


「しろきまじゅう、われらをくわぬ?」


「食わぬ食わぬ! もう絶対食わぬし、守るぞ!」


「おお! われらのしゅごしゃがまたふえた!」


「しろきせんし! しろきせんし!」


「「つがいのせんし! われらのみかた!」」


「おれとヒカリはつがいじゃないよ!」


「ふふ、くろべえ、われうれしい……」


「もー! ユウー、こいつらなんとかしてくれよー! 笑ってないでさあ! ユウー!」


 わりいクロベエ……俺もパンも……こればっかりはどうにもできねえわ……。


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