第6話 実家の庭みてえな魔獣の森
今日は魔獣の森までピクニック、じゃあなくて、マリハナの採取に来たはずだったのだが……。
なぜかウサギの集団に崇められ、勇者様御一行の如き扱いを受けている。
どうしてそんな事になっているのかというと――
◇回想◆
「ユウ! 起きなさい! 森に行くわよ!」
なんて、どこぞの団長みたいなセリフとともに起こされた俺は、早朝から魔獣の森に向かうはめになった。
いやまあ、マリハナほしいな、どこにあるのか教えてねって言ったのは俺だしさ、取りに行きたいなとは思ってたけどさ、なにも朝六時に起こさなくても良くね?
いつもなら俺に起こされるまで起きねえやつがさ、起こしに来るっておかしくね?
パンさん……あんたどんだけリプラシル産ビールが飲みてえんだよ……。
つーわけで、急かされるように朝食をとり、魔獣の森に来たわけだが……ここで張り切りだしたのがクロベエくんだ。
「ユウ、このあいだ見つけたいい場所があるんだ。そっちいってみない?」
詳しく聞いてみると、前にレッグコッカを狩った場所らしく、見慣れない草がいっぱい生えていたとのことだった。
本来の案内役である、パンに意見を聞いてみたところ『マリハナがあるのもそっちの方だし、クロベエくんについていきましょう』とのことだった。
クロベエはこの森を庭のように駆け回っているみたいだからな。きっと俺たちにいいところを見せたいのかもしれん。
それに……見ろよ、あの顔。パンの言葉を聞いて嬉しそうに頷いてるわ。
そんなの、任せるしかねえよなあ!
「よーし、今日はクロベエにおまかせするぜ!」
「そうこなくっちゃ! ルーちゃん、おれがせんとうを歩くから、ちゃんとついてきてね」
「はーい、クロベエ、がんばってねー」
「まーかせて!」
尻尾をブンブンふって先頭を歩くクロベエ。
とっても機嫌が良い証拠だな。
ルーちゃんに頼られ、俺にも頼られて。気分が上がらないわけがないよな。
クロベエのガイドでしばらく歩くと、確かに見慣れない木の実や花が目に入るようになった。
うーむ、小一時間ほど歩いただけでここまで植生が変わるとは……流石はパンが雑に作った世界だわ。
特定の場所にだけコロニーを形成している山菜があったりするけどさ、そんなレベルじゃなくって、もうがらりと変わってんだもん。
ゲームみたいで楽しいからオッケーだけどな。いやあ、図鑑埋めと素材集めが捗るったら無いな!
あれはいい、これもいいと、ストレージに様々な素材をぶち込みながら歩いていると……やたらと開けた場所に出た。
小さな池があって、その周りに可愛いお花畑があって。
なんだか、ちょっとした公園のようになっている。
「お、なかなか雰囲気がいい場所じゃんよ。ちょうどいい、ここでお昼にしようか」
「さんせーい! ユウ、今日はなに作ってきたの?」
「ほらほら、ルーちゃん。先にこれを敷きましょうね」
「はーい」
「ユウー、おれは焼いた肉があったらいいからね」
「揚げジャモも持ってきたんだが、クロベエはいらないと」
「うそうそ! ジャモもたべる……ねえ、ユウ。聞こえた?」
む……?
「ひゃー……おたすけえ……」
聞こえた! 悲鳴というか、か細い声で助けを求める声が聞こえたぞ。
おい誰だ、変なフラグ立てたの! これからお昼だってのにイベント始まっちまったじゃねえか!
ていうか……魔獣の森に人が……居るだと?
ここから一番近い集落は、キンタたちのところだが、あそこの連中がここに来るわけがない。
しかし、確かに声が聞こえるし、なんだか複数人の声が聞こえるぞ……。
なにが起きているのかはわからんが、誰かが魔獣に襲われているのは確かだ。
「パンさん、ルーちゃんを頼む! クロベエは俺と一緒にいくぞ!」
「りょうかい!」
「あ、ユウ! ちょっと……ねえ、ユウ! 待って、この声は――」
パンにルーちゃんを任せ、クロベエに乗って声がする方角へ急ぐ……あれれ? なんか思ったより声の場所は近そうだぞ……。
それこそ、すぐ目の前の藪の向こうから聞こえてくるような……。
ぴょいんとクロベエが跳ね、藪を飛び越えた瞬間、大きな白い長毛のネコが数匹のウサギたちに牙を向けているのが見えた。
助けを求めていたはずの声の主、人々の姿はどこにも見当たらなかった。
「ちくしょう……遅かったか……」
クロベエがシュタっと地面に降り立つと、猫とウサギたちが一斉にこっちを見た。
さて……どうする?
ウサギは……なんかデカいけど、たぶんロップの類だろう。
あれはとりあえずほっといても良さそうだ。
だが、あの猫型の魔獣、あれはやばそうだ。ちくしょう、スマホランスを用意してから来るんだったな。
こうなったら、スマホナックルでやるしか――
「ああ!!! あのときの! くろいせんし!」
「またわれらを! すくいにきたのですね!」
――ロップたちが喋ってる……だとぉ? あ! そうかルーちゃんか!
ルーちゃんの自動翻訳はパッシブスキル。特に発動をさせる必要が無く、その範囲内に居る自我を持つ生命体は互いに会話が出来る様になるんだった。
ここなら広場に居るルーちゃんの範囲内。さっき聞こえた声はこのデカいロップたちってわけか……なるほど、全てが繋がった、繋がったが……問題はまだこれからだ!
「な、なあ。戦士ってなんのこと?」
「せんしはせんし! くろいせんし!」
「おい! そこのくろいの! われのえものをうばうきか?」
なんか女騎士さんみてえな声がするなってウッキウキで振り返ったら白いクソデカキャッツでした。
知ってた。




