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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
4章 あらたなおともだち

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第3話 しゅうかく

 今日は待ちに待ったユウ農園の収穫日です。


 エブリデイ収穫日みたいなもんじゃねえのかって? 違うんだよなあ。


 今日収穫するのは、品種改良(ガチャ)のために植えた野菜じゃなくって、ルーちゃんと一緒にキャッキャウフフと植えた野菜たちなんだよ。


 せっかくルーちゃんとやるのだからと、味と栄養素を改良し、成長速度を上げ……ついでに食事バフも気持ち程度にいれてさ。


 今んとこ最強! って感じの種を蒔いたのが一昨日だったか?


 ルーちゃんが自分でお水をあげて、すぐにぴょこんと顔を出した芽に――


『がんばれ、がんばれー!』


 ――って応援してあげた野菜たちがデビューするんだ……。


 ああ……今日、この日が俺達の収穫日だ……! 最高の一日にしようぜ!


「ユウー、まだー?」


 おっと、浸ってる場合じゃねえな、ルーちゃんが待ちくたびれちまう。 


 軍手をはめた手をパタパタと振って、早く早くとジャモ畑で俺を呼ぶルーちゃん。


 あっ……かわい……スマホでパシャリ……。


「ユウ、はやくー!」


 くっ……! すまねえ、ルーちゃん。可愛さに我を忘れてしまったぜ!


「ごめん、おまたせ! じゃ、先に俺がやってみせるからみててね」


「うん! ユウ、頑張って!」


 ジャモは葉っぱがちょっと違うが、まんまジャガイモだ。


 だから収穫方法もまんまってわけでな……よいしょぉ!


 茎を両手で掴み、一気に引き上げると、モサモサモサっと抜けてきた。


 土が良いのかなんなのか、子供でも楽勝で抜けそうだ。


「わあ! 凄いね、たくさんついてるよ!」


 握りこぶしくらいのジャモが六個くらいか。


 いい感じだな。


「ユウ、おれもやっていい?」


「おう、構わねえぞ。じゃあ、クロベエは向こうのジャモを収穫しといてくれ」


「まかせてよ! いっぱい掘るから揚げイモつくってくりー!」


「揚げイモか……よし、まかしとけ!」


 ふふ、クロベエも張り切ってるぜ……つうか、こいつの場合は穴掘りしてえのもあるんだろうな。


 調子に乗って畑を広げすぎたから、手伝ってくれるのはめちゃくちゃありがたいぜ。


「じゃあ、ルーちゃんもやってみよう!」


「はーい! えっと、えと……どれにしようかな?」


「ふふ、ジャモは逃げないから、ゆっくり選びなさい」


 とことことジャモに向かい、キョロキョロしながら収穫するジャモを選んでいる。

 

 懐かしいな、俺も子供の頃こんなだったわ。


 芋掘り会みたいなイベントに行ってさ、なるべく多くのイモがついてるのを抜きたくって、めっちゃ熟考した覚えがあるわ。


「これ! これにするー!」


「おー、がんばれルーちゃん!」


「がんばってね、ルーちゃん!」


「うん!」


 やる気満々のルーちゃんが、ジャモをギュッと掴んで……一気に力を込めた!


「わあ!」


 ジャモがスポーンと土から抜け、ルーちゃんがものすごい勢いでゴロゴロと後転していった。

 

「ルーちゃあああん!」


「きゃー! ル、ルーちゃん大丈夫!?」


 パンと二人で駆け寄ると、むっくりと起き上がったルーちゃんがニッコリ笑顔でジャモを掲げて見せた。


「えっへっへー! どう? ユウ、ママ! いっぱいとれたよー!」


 ああ……泥だらけのいい笑顔だ!


「うんうん、上手だぞ、ルーちゃん。その調子でどんどん掘ってくれ」


「はーい! がんばるね!」


「ジャモめっちゃあるからさ、パンさんもがんばってくれな」


「仕方ないわねえ。その代わり美味しく調理するのよ?」


「おう、任せとけ! じゃ、俺はあっちの野菜を収穫してくるわ」


 ジャモはルーちゃんたちに任せ、俺は別の畑に。


 そうだな、まずはキウンバ畑からやるか……。


 タルットたちがキウリーと呼ぶ、どう見てもキュウリにしか見えん野菜なんだけど、見た目通り味もキュウリなんだから手抜き感を感じるよな。


 このとおり、まんまキュウリなので、冷やして丸かじりしても良し、サラダにしても良し。


 ……タルットたちがうるせえ時にチラつかせてヨシと……まあ、便利な野菜ではある。

 

 ふう……キウンバはこんなもんか……お次はタマナだな。


 これは、原種であるタメニンを魔改造し、煮て良し、炒めて良し、生でも良しのハイパー野菜キャベツさんを再現したものだ。

 

 味の改良より丸くするのに苦労するっつう、アホなことをしちまったが、こうしてずらりと並ぶタマナ畑を見ると苦労した甲斐があるなって思うわ。


 さて……収穫だ。


 今日は……ひとつひとつ丁寧にやらねーとならんから……地味にキツイ。


 ……


 …


 ひい……ひい……わしの腰は満身創痍じゃわい……。


 ジャモみたいにたくさん植えないでほんと良かった……マジしんどいわ。


「ユウー! ジャモぜーんぶとっちゃったよ! 今度は何を取ったらいいー?」


 腰をさすりながら休んでいると、全身土まみれになったルーちゃんが、ニッコニコしながらやってきた。


「すげーな、もう終わらせちまったのかよ。そうだなー、今度はダイズをとってもらおうかな」


「おー!」


「ルーちゃんたちは……そうだな、こうしてひとつずつちぎって、このザルにいれていこうか」


「わかったー!」


 大豆、もといダイズ。


 これも俺の努力の結晶で、似ても似つかないマメ科の植物を品種改良しまくって、無理やり産み出したんだ。


 いつか、住民たちにも豆腐や醤油・味噌を作ってほしいという思いから、頑張って改良したのさ。


 うちのダイズは、品種改良の甲斐があって、枝豆としても、大豆としても美味しくいただける品種だから、枝豆として食いたかったら、若いうちに摘んでしまえばいいんだ。


 ……ダイズだの大豆だのややこしいな。別の名前で登録してもらったら良かったわ。


 というわけで、今から、この青々とした豆を全部収穫するのだが、枝豆として食べるのは半分だけにして、もう半分は大豆にするんだ。


 なんか変なこと言ってる気がするだろ? 

 

 SNSに書いたら、秒でノートつけられるような、変なこと言ってんだよなあ……。


【製作】さんがさあ、ほんとチートだからさあ……枝豆を大豆に変換することができちまうんだよ……。


 我ながら変なこと言ってる気がするけど、できるんだからしかたがない。


 ほら、野菜を素材に種子にする機能があるだろ? そのノリでぷりっぷりの枝豆をカラッカラの大豆にできるんだよ。


 それに気づいたからこそ、どちらも美味しく食べられる品種を頑張って作ったってわけさ。 


「こっちをプチ、こっちもプチー! あはは、プチプチ取れて面白いね、ママ」


「ふふ、そうね。あ、ほらこっちに大きなおまめさんがあるわよ」


「わ、すごいおっきい! ルーちゃんに採らせて!」


「はいはい、どうぞ、ルーちゃん」


 パンちゃんと二人、ザルに枝豆を入れるルーちゃん。見ろよあのパンの母性に満ち溢れた顔……テントで寝屁をしていた女神と同じ者とは思えないよな……。


 そういやクロベエは……と探してみれば……穴掘りに夢中になってるし……。


 うっわ、ジャモが山盛りだ。あいつ、ずいぶん掘ってくれたよなあ……って、なんでまだ掘ってんだ?


 ああ、なるほど……物足りなくてなんもないのに穴掘りして遊んでんのか……。


 畑は簡単に直せるから別にいいけどさ……お前、めちゃくちゃ泥だらけじゃねえかよ。


 でも、こういうのも楽しいんだよな、収穫ってさ。 


 みんなでワイワイと、土まみれ、泥まみれになってさ。

 

 腰が痛いのなんのってボヤきつつも、大きな野菜に歓声を上げたりして。


 家族で楽しむ収穫ってのは、やっぱ機械に頼らずに頑張ってこそだよなあ。


 ……けどよお。


 風情を大切にする俺でもよう……そうは言ってられねえモノってのが有るんだわぁ……。


「ミーン……おめえだけは……おめえだけは本気でやらせてもらう……」


 麦に該当するこの穀物の収穫だけは……人力でやっちゃならねえ。


 こいつは主食であるパンを作るために作ることにしたんだが、小麦粉があればコナモン全般的に作れるわけじゃん?


 揚げ物にも使うし、おやつだって作れるじゃん。

 

 小麦って用途ごとに品種があるよなあって思ったけど、作るのめんどくせえから、万能麦みたいにするべって、大抵の用途に合うっつう、ファンタジーならではの品種改良を施したわけじゃん。


 そんな便利なの、めっちゃ使うよねって、たくさん植えたわけじゃん。


 俺の腰はよ、タマナですっかりすり減ってんのよ……こんな、金色の海原みたいになってる畑に挑んじまったら、間違いなく何日か動けなくなっちまうわけじゃんよ……。


 収穫の喜びはほかの野菜で味わったからもういいだろ? 


 いいよね? いいぞ、やっちまえ!


「うおおおおおおおお! 収穫されて収納されちゃえええええええええ!」


 スマホを掲げ、問答無用で範囲収穫する。


 液晶に映る範囲がごっそりと消え去り、ぽっかりとさみしげな空白が生まれた。

 

 ……まさに無情! 


 だが……これはこれで、面白い!


 ぽんぽん、ぽんぽんとミーンを収穫していく。人力でやったら数日くらいかかりそうな量が十数分で終わっちまった……。


 これだからチートってやつぁよお……!


 ……よし、ルーちゃんたちを手伝うか。


「お、ルーちゃん。いっぱいとれたな!」


「えっへっへー。さっきね、おっきなの採ったんだ!」


「そっかそっか。ようし、俺も頑張るぞー」


 ちらりとパンさんを見ると目があった。


 つらそうな顔で苦笑いをしているあたり、かなり腰に来てるんだろうなー。


 身体強化みたいなことできんだろ? それをやりゃあ楽にできそうなもんなのに、それをやらないってのは、俺がスマホに頼らないのと同じ理由なんだろうなあ。


 ……いや、相手はパンさんだ。ワンチャン忘れてるかもしれんな……。


◆◇


 二時間ほど腰を痛めつけ、ようやく収穫が終わった……。


 めっちゃきつかったし、次からは容赦なく全てアプリで収穫しようと思う。


 早くも次の収穫を心待ちにしているルーちゃんがいるのだが、それは規模を縮小した『ルーちゃん農園』みたいなのを作って、そっちでやればいいさ。


 ルーちゃんは自分が好きな野菜や果物を好きなように植えられて嬉しいし、俺とパンさんも腰が悲鳴を上げない規模でルーちゃんと楽しめて嬉しい。


 まさにWIN-WINの農園ってわけよ。


 さーて、後は少し休んでお疲れ会だな……と、その前に。


「みんな、収穫お疲れ様! 土で汚れちゃってるから、おうちに入る前に池の水道で手と靴とクロベエを洗ってから入ってね。それが終わったらルーちゃんとパンさんはそのままお風呂に入っちまいな」


 その言葉に「はーい」と元気よく返事をするルーちゃんとパン。そして絶望した顔でこちらを見るクロベエ。


 ふふふ……見ろよ、クロベエのやつ、ルーちゃんに『洗ってあげるね』って言われて逃げられなくなってるぞ。


 なんなら、水洗いの後、そのままルーちゃんたちと風呂ってもいいんだぜ? 

 

 モル助がピッカピカにしてくれたお風呂だ、ついでにお前も綺麗にしてもらうがいいさ!


「ユ、ユウ……お、おれ良い子にするから……今日はゆるしてくれー」


「良い子は黙って綺麗に洗われるんだぞ。良い子になるんなら洗われないとなー」


「ルーちゃん、明日にしよう」


「だめだよクロベエ。今日の汚れは今日落とさなきゃ、だよ!」


「クロベエちゃん? ルーちゃんの言うことを聞かなかったら……わかってるわね?」


「ひぇえーーーー!」


 晴れ渡る空に響き渡るクロベエの雄たけび。


 いやあ、なんとものどかで楽しい一日だったなあ。


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