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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
3章 かぞくっていいな

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第23話 おふろ

 風呂を掃除し、お湯を張ったところで元気がいい声が聞こえてきた。


「たっだいまー」


「ただいまー」


 パンちゃんとルーちゃんのお帰りだ。


「おう、おかえり。ほら見てくれよ、念願のタオルだぜ! これで風呂が使えるぞ」


「おお、よくやったわ。ほんとへとへとでねー、お風呂入りたかったから嬉しいわ。ルーちゃん、いきましょ」


「はーい。それで、おふろーってなにー?」


「うふふ、とってもポカポカで楽しいところよ……」


「ほんとー?」


 賑やかな声が遠ざかっていく……そうかあ、ルーちゃん、お風呂はじめてだもんな。


 ゆっくりと楽しんでくると良い。


 ……


「マーマ、これなに? すっごい、もこもこする!」


「ふふ、ボディソープね。こうすると……きれいになるのよー」


「わ、きもちいいね……あ、みてみて! もこもこのモルモルだよ!」


「あら、上手にできたわねー」


 ……風呂場からルーちゃんとパンちゃんの楽しそうな声が聞こえてくる。


 くっそ、いいなあ、楽しそうだなあ……。


 でも流石になあ……ルーちゃんと一緒にお風呂は……今の御時世だとなあ。


 ルーちゃんが男の子タイプのコアだったら、一緒に入れたんだけどなあ……。


 まあ、なんとなく、俺が俺で居る以上、そういう世界線は生まれねえ気がする……。


 あーーーーー! パンちゃんが羨ましいぜ! どうにかして俺も今からママになれたりしねえもんかな?


 いや……無理だしきっついな……誰よりも俺が一番俺のTS化をキツいと思っちまうから無理だわ……って重てえ。


「ユウ……おれがいるぞ……」


 何かを察したクロベエが、ズシっとのしかかってきた。


 そうだよな……クロベエはなんか俺のこと親だと思ってくれてんだもんな……ありがとうよ、クロベエくん……嬉しいよ。


 でもな? お前さ……前にも言ったけど、そのサイズで……のしかかられると……うっ……潰れてしまうから……あまり激しい甘え方はやめ、やめ……――


「ぐえー」


「にゃおろぐにゃん!」


 うおおおお! クロベエくんのスイッチがはいっちまった! めっちゃ喉鳴らしてる! いや、かわいいよ? かわいいけど、お前マジで重てえから! 潰れる、ええい、ここか! ここをモフモフしたら降りてくれんのか?


「ぐろにょろおおん!」


「逆効果だったー!」


「お風呂あいたわよー……って何じゃれ合ってんのよ……ほら、さっさとお風呂入って綺麗にしてきなさいな」


「そう……したいんだが……クロベエが……降りて……」


「あっ……今助けるわ……」


 ……ふう、助かった。


 致死量のクロベエを浴びてリスポーンするところだったわ……いや、俺死なねえらしいけど。


 ……さて。


 風呂だ、待望の風呂だ! それなりにこだわって作った、自作の風呂だぞ! 上がらねえわけがないよなあ!


「ヒャッハー! 風呂の時間だァ!」


 タオルを肩にかけて、元気いっぱいに浴室に入ると、モルモルが湯船にぷかぷかと揺蕩っていた。


「おお、すまぬ主の主よ。湯の浄化をしにきていたのだ。なに、我の事は気にせず身体を清めるといい」


「お、おう、ご苦労さん」


 そうか……ルーちゃんのスキルか。


 自動翻訳スキルは常に展開されている。だから、ルーちゃんが家にいる間は、こうしてモルモルとも普通に会話ができちまうわけだな。


「あ、ユウー? シャンプーとかあるでしょー? それ使っていいからねー。流石にそればっかりはまだまだクラフト出来ないしねー」


 外からパンちゃんの声が聞こえてきた。


 おお、色々置いてくれてるな。


「おー、ありがたくつかわせてもらうぜー」


 湯シャンって良いとは聞くけど、俺はしっかりシャンプーで洗ってトリートメントつけたいからな。


 すっかり失念してただけに、マジで助かるわー。


 身体と髪を洗って湯につかる。プカプカと湯船をたゆたうモルモルがお風呂アヒルの様だ。


「こらこら、主の主よ。我をつつくでない」


「ああ、すまんすまん。ついな」


「主の主よ」


「どうした?」


「浄化は我だけで事足りるが、地下にいる同胞も湯にいれていいか?」


「別にかまわんが……あ、もしかしてお前らって温水好きだったりすんの?」


「いや……そうではないのだが、この湯に浸からせたくてな」


「どういうことだ?」


「ここに来てから、頭の霞が解けていくのを感じるのだが、この湯の浄化をはじめたところ、さらに冴えわたるではないか。この奇跡を同胞にも分け与えたいと思うのだ」


「奇跡て……待てよ……そういやうちのモルモルたちって、ダンジョンのより言葉がしっかりしてるよな……」


「この湯には、上質なマナと、我が知らぬ未知のなにかが溶け込んでいるのだ。主の主よ、どうか、同胞にも分け与えてくれ」


「別に構わねえよ。お前らが賢くなりゃ、俺も助かるしな。なんなら、ルーちゃんに頼んでダンジョンの奴も浸けてやったら良いさ」


「おお、それは同胞たちも喜ぶであろう。感謝する、主の主よ……」


 ……うーむ。


 この家に来てから霞が解けた、この湯は特に効果が高く、マナの他に未知のなにか……導き出される答えは……。


 ……この湯って、そうか……ルーちゃんと…………パンちゃんの残り湯か……。


 いや、今さら思春期みたいなこた考えねえよ? ちょっとだけアレな気持ちにはなったけど。


 それよりも、残り湯の効果だよ。


 たぶん、これはモルモル特有の現象だと思うんだよな。上質なマナはルーちゃんから、未知のなにかは、恐らくパンちゃんから出た神気とかそういうやつなんだろうと思う。


 それを、仮にそこらの魔獣に飲ませたところでどうにかなるわけじゃないと思うんだよな。


 モルモルはなんでも溶かして吸収しちまうから、神気も栄養として取り込めちゃって、謎に強化されてんだと思う……。


 やべえな……女神の出汁……。


 よし、色々と収まったからそろそろ出るか……。


◆◇


 リビングに戻ると、パンちゃんがぐびぐびとビールを飲んでいた。


 ……これですわ。パンちゃんは、これだからいいんだよな。


 風呂でほのかに芽生えたラブコメの波動がスンっとしたのを感じますわあ……。


「おっ 上がったわね。ほれ! ごほうびよ!」


「っと、さんきゅう」


 ぽいっと冷えたビールを投げてよこしよった。まったくよお……地球のもんをよお……不用意に……カシュ……もちこんじゃ……だめ……ゴッゴッゴッゴッゴッゴ……。


「くっふぁあああ! さいっこうだな、おい!」


 火照った体にキンキンに冷えたビール! 湯上り特有の幸せを噛みしめたままでいたいところだが……忘れないうちに報告しとかんとな。


 ……すっげえ言いにくいけど!


 ……かくかく……しかじか……。


「つうわけで、風呂の浄化をしたモルモルが賢くなってたんだが……マナや神気って水溶性なんだな……」


「は、はあ? なななななにいってんの? ば、馬鹿じゃないの? そんなことあるわけないじゃない! あ、どうせ『んー女神の出汁が効いてる』とか変なこと考えたりしたんでしょ! やーらしんだから!」


「か、考えてねえよ! それに言ったの俺じゃねえからな? モルモルが上質なマナと未知のなにかが溶け込んでるーって言ってたんだ!」


「はあ? モルモルがー? ……ちょっと調べてくる!」


 真っ赤な顔で俺を責め立てていたパンちゃんだったが、モルモルと聞いて何か気づきがあったのかドタバタと風呂に駆け込み……間もなくしてバタバタと戻ってきた。


 慌ただしいやっちゃな……。




「あー……お湯の成分を軽く分析してきたけど……」


「なんすか、言いにくそうっすね?」


「祝福がかかってた……」


「えっ」


「私は悪くないわよ? あんたが悪いんだからね?」


「直ぐそうやって人のせいにするのは貴方の悪い癖だって先生いつもいってますよね!」


「だれが私の先生よ! ほら、あんた水道引いたでしょ?」


「ああ、泉の水が出るようにしたな」


「まあ清浄な泉だから水質はそれで問題ないけどさ、フィルターもなんもつけないからたまに砂とか混じるのよ」


「え、まじかよ」


「しょうが無いなーって、そんくらいは手間でも無いからさ、浄化フィルター作ってつけたんだけどね? 女神である私が作ったパーツじゃん? 神器と言えるじゃん?」


「あ……もしかして……」


 台所に行き、コップに水を汲んで鑑定してみると……。


=========================================

 名前:泉の水(祝福)


 こんこんと湧き出る清浄な水が貯まった泉の水。

 女神の加護を得ることによりさらなる効果を得た。


 効果:潤い 美肌 回復+2 成長+1

=========================================


「潤いに美肌、回復ってなんか温泉みたいな効能だな……さりげに混じってるバフ効果がすっげえ気になるわ」


「んー、気持ち成長が早まるようなものみたいね」


「……気持ち?」


「そうねえ、畑にまいたら、倍くらいの速度で成長する感じかしら? まあ、人や魔物が飲んでもそこまで変化は無いはずよ」


「ほーん……畑はやろうと思ってたから助かるな」


「ま、特に気にするようなものではないわね」


「モルモルはどうなるんだ? 知力が異常に上がってるんだが……」


「わかんないのよね……ユウ、最近賢くなったなあとか感じることあった?」


「いや……別に……」


「そうよねえ……相変わらず変なことばかり考えてるものねえ……」


「微妙にディスったみたいにすんのやめろよな」


 確かに頭が冴えたとかそういうのは無いけどさ!


「まあほら、あれよ。追々調べていけば良いわよ。うん、そうよ。あんた暇でしょ? 今後の課題にしたらいいじゃない。私はほら、ルーちゃんとダンジョンの調整したり忙しいからさ」


 こいつ、考えるのが面倒くさくなったな……しょうが無い、暇なときにでもモルモルたちを呼んで調査してみるか……。


 でもいいんだろうか、お前は「わたしの残り湯を調査しなさい」って言ってるんだぞ?


 ……いや、やめとこ。あんま考えると俺にもダメージが来るわ。


「そ、そういや、モルモルの固有ポップポイントの件はわかったか? ダンジョンの他にカッコして(ユウの家)ってなってたじゃん」


「あ、ああ……あれね。多分だけど、家もダンジョンのワンフロアになってるのかもしれないわね」


「えぇ……マジで?」


「まあ、仮にそうなら悪いことじゃないわよ? モルモルが事故って乙っても、ダンジョン仕様でリスポーンするってことじゃないの」


「あ……それはいいな。なにげによく話してるから、いきなり死なれたらすげえ悲しいし……」


 それに……自宅がダンジョンって、実はちょっとだけ憧れがあったんだよなあ。俺だけのプライベートダンジョンで鍛えるとか、儲けるとかさ……。


 まあ、うちの場合は、家にダンジョンがある、じゃなくて、そのものがダンジョンって感じっぽいけどな……。




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