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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
3章 かぞくっていいな

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第22話 ルーちゃんの説明会

 朝礼台の上に立ち、ぐるりと妖怪たちを見渡すルーちゃん。


 ルーちゃんは満足そうに頷くと、パンちゃんから手渡されたマイクを片手に説明を始めた。


 ……まったく、にくい小道具を用意しやがって。どっからどう見ても可愛い校長先生だわ。


「まず、いっこめね。元のおうちにいきたい時は、わたしにお願いすること! 今はまだ勝手に外に出ちゃだーめよ! ふたっつめは……えっとえっと……」


 ルーちゃんがなにやらごそごそとポケットを漁っている……あっカンペ取り出したぞ……。


「えっとね、わたしとけいやくしたみんなはー、ダンジョンにいるあいだは、しにません! 大けがとかして、システムから、しぼうはんていをうけたら消えるけど、ちりょう部屋で……なおしてもらってからダンジョンに戻されるんだって。

 えっと、だから、わたしとけいやくしている魔獣はご飯にはできないし、できても禁止だからね!」


「なあ、パンちゃん。あの子、たどたどしくすげえこと言ってるんだけど……」


「ああ、あれは元々のダンジョンアセットに含まれてる仕様ね」


「そうなん?」


「ダンジョンには死亡判定というのがあってね、まあ……致命傷の一歩手前くらいの状況になったら、そう判定されて、回復部屋に収納後、五体満足でポップポイントに戻されるの」


「ははあ……それがダンジョンでいうリポップにあたるわけか」


「そういうことね。ダンジョン運営の難易度を下げるための仕様らしいんだけど、正直助かるわよねー」


 たしかに。


 この世界を動かしているらしい、ユリカゴシステムにも魔獣のリスポーンが仕様として存在している。


 ただし、そちらの場合は「死亡判定」ではなく、ガチの死だ。


 システムが個体の死を確認すると、一部の記憶を引き継いだ若い別個体としてリスポーンするらしいんだが、その理由は通常の繁殖と違って親が居ない状態で放たれるため、ある程度の知恵がないとリスキルされるからである、とのことだ。


 よく考えられた仕様だなと感心したけれど、ダンジョンでも同じ仕様だったらキツかったろうな。


 だってさ、いくら記憶を引き継いで転生するつっても、最低限だけだし、前の体を引き継げるわけじゃないんだぜ?


 例えば、コアが丹精込めて育てた中ボスが居たとするじゃん。


 ユリカゴシステムに沿ったルールでも、そいつはリスポーンするけれど、それは同一種族の別個体。


 数々の激戦で培った経験という名の記憶はほとんどが失われ、若返っちゃうから鍛え抜かれた体も失われてしまっているわけだ。

 

 コアからすれば大事なユニットが、がっつりデスペナ貰った状態なわけじゃん。


 そうならないように保証されてるってだけで、よっぽど楽ちんだよな。


「死亡判定を受けたら回収されて回復……リスポーン扱いってことは、完全回復する感じだよな?」


「そうね。腕の一本や二本どうにかなっちゃったとしても、きっちり元通りになるわ」


「ほーん……良いこと聞いた」


 これはやりようによっちゃあ、おもしれえことできそうだ。


 ……じっくり計画をねって、後でちゃんと相談しよっと。


「あ、ちなみに寿命が来たらきちんと死ぬからね」


「きちんと死ぬて。まあ、そらそうだよな、だって、ダンジョンに使役されてるって言っても、普通に交配できるんだろ?」


「こ、ここ交配って! やらしーわね!」


「変に意識すんじゃねえよ、俺まで恥ずかしくなるだろうが。不老不死のタルットが、ダンジョンで無限に増えたら嫌だよなって話をしたかったの」


「あ、ああ! そういうことね。たしかに、塩のダンジョン生まれの子とかもいずれはでてくるでしょうねえ」


「運営が上手く行ったら、ここも手狭になりそうだな」


「その頃にはルーちゃんも成長してるでしょうから、階層をもっと広くできるはずよ」


「それもそうか」


 ざわざわ……ざわざわ……。


 ……パンちゃんと話し込んでて気づかなかったが、ルーちゃんの説明に妖怪達がざわついている。


 どうやら、さっきルーちゃんが言った『契約されてる魔獣はごはんにできません』が原因のようだな。


「しーーずーーかーーーに!!!! おはなしをーー!!! きいてっ!!!!」


 >< こんな顔で両手をブンブン振って、妖怪達の混沌に対抗するルーちゃん。


 必死なルーちゃんを見た妖怪共が、和みきった顔をして大人しくなった。


 ふふん、可愛かろう。あれ、うちの子なんですわ!


「ふう。みんなが静かになるまで10びょうかかりました。 ここには、ルーちゃんとけいやくしていない子たちもいます!」


 おおお……と、声が上がったが、ルーちゃんに睨まれてピタリと止んだ。


 うける。


「こほん! ルーちゃんとけいやくしてない子たちはお外にいるのと同じです! お魚や虫さん、エビさんなどはご飯にできますが、食べたらいなくなります! でも、お外のよりふえやすくなっています! みんなのたいせつなご飯です! たべすぎないでね! たべすぎたらユウがおこるよ! ユウをおこらせたらこわいんだから!」


「きいたか、魚食い放題やって!」


「ばっかお前、増えやすいけど加減しろって言ってただろ!」

「誰がバカやねん!」


「こらこら、喧嘩しちゃダメよ、ルー様に怒られるわ」


「ここは草や苔ですらマナが満ちて旨いぞ。タルットよ、キウリを育ててみたらどうだ? 旨いものができるかもしれないぞ」


「ほんまかいな! あのユウとか言うやつにやらしたろうかな?」


「やめろ。ユウは……ああみえて強い男だ。素手で岩を砕いているのを見たことがある」


「ヒェッ……せやな、ルー様の親やもんな……逆らわんとこ……」


 いちいちざわざわうるさい妖怪どもだ。


 つーかモルモルめ、ああみえてってなんだよ。言わせてもらうけどな、強いのは俺じゃなくてスマホなんだぞ!


 俺は見た目通りのスペックしかねえっつうの!


 


「説明はだいたいおしまいです! あとはお外と同じ感じで暮らしていて下さい! 困ったらルーちゃんになんでも言ってね! じゃー、かいさん!」


『解散』の声と共にザワザワと妖怪達が散っていく。


 ああ、息がしやすくなった……。


 これから、ここに妖怪達の新たな生態系が産まれるのだろう。


 どんな魔窟になるか楽しみなような怖いような……。


 ……なんかどっと疲れたな。


 ルーちゃんは……まだまだ居たそうにしているな。


「わりい、先にクロベエと帰ってるわ」


「わかったわ。ルーちゃんは私が見てるから、帰ってゆっくりしてなさいな」


「おう、そうさせてもらうぜ。行くぞ、クロベエ……クロベエ、クロ……こいつ、寝てやがる」


「あはは、よっぽど退屈だったのねえ」

 

 ◇


 自宅に帰り、ちょっと休んだら妖怪たちに奪われていた心の余裕が回復した。


 ふむ……夕方まではまだまだ時間があるな。


 そうだ、風呂だよ風呂! せっかく作ったのに、タオルがねえからってお預けにしてたんじゃん。


 ルーちゃん達が戻るまでにタオルやら着替えやら作っておこっと。


 まずは服から行くか……つっても、ルーちゃんの服はパンちゃんが揃えてくれたから、クラフトする衣類は俺のだけでいいんだよな。


 ルーちゃんの服を日本で買ってきたと聞いたときは、羨ましく思ったんだけど、パンちゃんに『ほら、あんたのパンツよ』って渡されたら、それはそれで嫌だったよな……。


 んで、パンちゃんはアホだからさ、渡す時になって、やっと自分がなにやらかしてんのか気づくんだよ……。


 ぜってえ互いに気まずくなるやつだったと思う……。


 うん、やっぱ自分のことは自分でやらねえとな!


 というわけで、アプリを立ち上げてタオルを選ぶ。綿のタオルが作れるようになってたので、取りあえず……そうだな、十枚作っとくか。


 タオルのクラフトは、一枚あたり五秒程度かかるようだ。十枚で五〇秒か……タオル十枚のクラフト時間が家より遅いってどうなんだ?


 ……後で運営さん言いくるめて改良してもらおっと。


 さて、次は俺の着替えだけど……やたらと色があるなあ。


 好きな色を選べるのはいいんだけど、色ごとに染色用素材を調達しないと色付きは選べないわけ。


 つまり、今作れるのは白と生成り、あとショア由来のカーキだけなんだけど、作れない色違いまで個別のマスに収まって並んでるんっすよ。


 色違いで七十二色くらい、ズラッと並んでんだよ……。


 うおおおおおおお! めんどくさい! スクロールするのが、次ページボタンを押すのがめんどくさいんじゃあああ!


 ぜってー改良させてやる! プルダウンメニューからカラー選択出来るようにさせてやるんだから! 


 ……


 …


 クソみたいなUIにぼやきながら、綿の下着上下にシンプルなジャケット、そしてズボンを作った。


 クラフト時間よりもページ移動の時間のがなげえとか、マジで笑えねえんだけど……。


 ちなみに、下着は白と生成り、ジャケットとズボンは生成りとカーキにしたよ。


 生成りも選べるようにしてあるのだけはマジグッジョブだし、ショアでカーキが作れたのも助かった……。


 もしも白しか作れなかったらきつかったろうな……。


 下着は別に白でもかまわねーけどさ、白のジャケットにズボンってさあ……ねえ?


 あ、よく見たら紺色も選べんじゃん……材料は女神の森で採った良くわからん草か……ジーンズ風のズボンも作っとこっと。


 ……紺色使えんなら、ボクサーパンツもその色のが良いな……よし、作っちまえ、作っちまえ!


 あ、そうだ! 布団も作らねえと! あーもう、忙し忙し……やることだらけでたいへんだぞい!


 ……


 …


 そんなこんなで……気づけば夕方だ。


 そろそろルーちゃん達が帰ってくる頃だな……。


 風呂でも沸かして出迎えてやるとすっかね。


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