第16話 おさかなとれたー?
モルモルとクロベエを引き連れ、水たまりのパトロールに向かったルーちゃん隊長に代わり、フワフワの実をたんまりと調達したユウ隊員です。
いやぁ……フワフワの実、やべえっすわ。
手触りに脳を焼かれちまってよ、危うく湿原の地形が変わるほどに収穫しちまうところだったぜ……すいませんね、お魚ちゃん達……あ、そうだったわ。魚も捕らなきゃだった。
……やっべえ、肝心なこと忘れてたわ。
魚やらエビやらを捕るのはいいけどさ、ダンジョンまでどうやって運ぶかまったく考えてなかったぞ。
お家の水槽で飼うくらいの量なら、バケツに入れて持って帰れるけどさ、ダンジョンに放すとなると、水産業者か! ってくらいの量を持ってかないとならないじゃん。
やっぱここはルーちゃんに使役してもらって……エビや小魚って話が通じるほどの意識をもってるのかな……いやいや、そうじゃねえわ。
だから、どうやってお魚さん達をダンジョンまで連れてくんだって話だっつーの!
百歩譲って、小動物くらい賢かったとしよう。
ルーちゃんが使役をして「ついて来て」って言えばついてくるのかもしれんが、ルーちゃんの後をついてビチビチ跳ねながら進んでくんだぞ……ダンジョン着く前に干物になっちまうよ。
ここはあれだわ、やっぱ専門家の意見を聞くしかねえな。
「なあパンちゃん先生よ、モルモルの依頼に取り掛かろうと思うんだが、どうすりゃいいのかまったくわからんのだが!」
「ああ、一人で百面相してるからなにかと思ったら、そんなことで悩んでたの」
「そんなことってひでえな。そもそも、エビやら小魚やらにルーちゃんの言葉が通じるもんなん?」
「流石に無理ね。知能レベルは体長と比例するわけじゃないけど、エビや小魚レベルだと、ほんと単純なことしか考えてないから、会話しようとしても無理なのよ」
流石にルーちゃんでも無理か……なんかそれ聞いてホッとしたな。
エビと仲良しさんになられたら、エビフライとか作りにくくなっちゃうもん……。
あ、そうだ。これもついでにきいとこ。
「俺はヒッグホッグの言葉がわからなかったけど、ルーちゃんならいけるん?」
「ある程度はね。ただ、お世辞にも賢いとは言えないから、ルーちゃんでも高度な命令はできないと思うわ」
「そっか、それを聞いて安心したわ……」
「流石に会話ができるような魔獣は食肉用にすすめないわよ……」
「それもそうか……ちなみに見た目で判別できたりは?」
「フシュー……フシュー……」
「口笛下手くそかよ。そうか……判別できねえのか……」
これからも初見の魔獣さんには声掛けするようにしよ……。
……ってそうじゃねえわ。
「それで結局、小魚やらエビちゃんやらはどうやってダンジョンまで連れてったらいいんだよ?」
「ふふん、ヒントはあんたがずーっとお世話になってるあれよ」
うっわ、うぜえ。突然のクイズ形式きたわ。
「……パンちゃんさんが運んでくれる?」
「な、なんであたしの名前が出てくるのよ! あたしじゃないわよ、スマホよ、スマホ!」
動揺して自分から答え言ってるの草なんだ。
「スマホ……? ええと、もしかして【開拓】に【漁業】が追加されてて、漁や出荷ができるようになってたり……?」
「んなわけないでしょ……そんなんやったら、あんた無限に漁業しちゃうでしょうが」
「いくら俺でも……いや……うん、それで、じゃあなんなんすか!」
「図星で逆ギレすんの笑うからやめてね。なにってストレージに決まってるでしょ」
「ええ……? アイテムボックスに生物は入れられねえって……あ、ストレージは別なのか」
「そうよ。箱型のアレだと間違えて誰かしら落ちちゃうからね。前に時間停止って言ったけど、厳密にはちょっとちがくてね……一億年ボタンっていったらわかるかしら?」
「うっわ……わかりやすいけど嫌な例えでてきた……」
「そう。だから入れるのは意思が希薄な魔獣だけにしておきなさいね」
「そうするわ……それで、お魚さんたちはどうやって収納したらいいんじゃ? 網で取ってバケツに入れたのをそのままみたいな?」
「そんな面倒なことしなくても、範囲指定で魚ごと水を収納すればいいじゃないの」
なるほど……これはまた……楽しそうなことを聞いちまったぜ!
つーわけで早速実践だ!
左手にスマホを持ち、右手を水たまりに向けて……範囲指定……からの収納!
うおおお! おっもすれ。中に小魚が泳ぐでっかい水球がふわっと浮かんでスマホに吸い込まれていくわ。
これ録画してもらって逆再生したら水魔法撃ってるように見えんじゃね!?
「なあパンちゃんよ!」
「録画ならしないわよ……」
「また心を読んだな!」
「読まなくてもわかるわよ! バカなこと考えてないで、ちゃきちゃき働きなさい!」
くっ……そんなわかりやすい顔してたのかよ……。
いいもんね、普通におもしれえから言われなくてもやるもんねーだ。
しっかし、これおもしれーな。なにがいいって、魚やエビが普通に泳ぐ丸い水槽みたいなんだもん。
ある程度は俺の意思に沿ってるのか、ゆっくり目に飛んできてくれるからさ、新しい形の水族館、って感じで愉快だわ。
ちょいちょいヤバめの牙が生えたものや、リヴァイアサンの子供みたいなのが泳いでるのが気になるが……まあ、魔獣だからな……。
「わー おさかなたくさん すごいねー」
「ユウ! おれにも! おれのぶんもとってくれ! おれも魚くいたい!」
ピョンピョコ ピョコピョコ
探検から戻ってきたルーちゃんたちが水球に気づいたようだ。
はっはっは大盛り上がりだぜ。
どうやら留め置くことはできないようなので、なるべくゆっくりと移動するように念じ、ルーちゃんたちに見せながら収納していく。
「わー! おもしろいね、ユウもっかいやって! もっかい!」
「ようし、まかせろ。今度はあっちからとるぞー」
「ユウユウ、そこやったら、あっちもやってね!」
「ユウ! おれにも いっぴき!」
「クロベエ、わかったから、おいこら、しがみつくな! 落ちるだろ!」
ルーちゃんとクロベエにせがまれ、あっちで収納、こっちで収納としたおかげか、多種多様な水生魔獣を捕まえられたぞっていうか、マジで種類が豊富だわ。
……しっかし。
「なんだかルーちゃんの出番を取ったみたいで申し訳ねーな」
「大丈夫よ。ルーちゃんのお仕事はこれからだもの」
「これから?」
「そうよ。ついでに沼地の魔獣をスカウトしてくのよ。折角来たんだし、魚捕まえるだけじゃもったいないでしょ」
ふむ、まだお昼前……か。
そうだなあ、今日は時間にも予定にも余裕があるから、変なイベントが始まっても大丈夫か……。
じゃ、お昼を食ったら沼地の魔獣をスカウトしに行きましょうか。




