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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
3章 かぞくっていいな

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第15話 ふたたび湿原へ

 いやぁ……昨日食べた鶏鍋……ヤバかったなあ。


 レッグ・コッカつったっけ? 見た目はいかついクッカなのにさ、味がぜんっぜんちげえの。完全なる上位互換って感じだったな。


 あれくっちまったせいでさ、醤油の醸造もちょっと考え始めてんのよね。


 なんでって、ラーメン食いたいだろ、ラーメン! 


 くっそ、思い出したら腹減ってきた……飯の話はこれで終わりだ、終わり! 湿原の話すっぞ!


 はい、というわけで、我々、ルーちゃん探検隊は湿原に来ていまーす! 


 メンバーはわたくしユウとクロベエにパンちゃんさん。リーダーを務めるのが、我らのルーちゃんで、その眷属であるモルモルも二匹ぽよぽよしてますねえ……。


 うん? どうしてモルモルもいるんだって? 


 それはみんなで朝食を食べている時だった……


 回想開始……


 ぽわんぽわんぽわーん……。



「なあなあ、今日は湿原に行こうぜ。フワフワの実を集めたいんだよ」


 パンちゃんは……乗り気な顔だな。そうだよな、干草のベッドに文句言ってたもんな。フワフワのお布団、欲しいもんなあ。


 ルーちゃんは……もちろんめっちゃ乗り気のようで、ニッコニコで跳びはねてる。はは、モルモルまで一緒にぴょこぴょこしてら……って、これなにか訴えてんじゃねえか?


「なあ、ルーちゃん。モルモルさ、なんか言ってね?」


「ほんとだ、なあに?」


 なんだか、深刻そうな感じにふよふよしてるな……。


「あるじのあるじよ しつげんにいくなら われらもいきたい きょかをくれ」


 通訳のルーちゃんが、キリリとした顔で言う。


 なるほど、俺らが湿原に行く話を聞いてて自分たちも行きたくなったのか。


 そんなん、わざわざ許可取らなくてもいいのに。


 モルモルさんたちのお仕事は、一日一回適当なタイミングで地下のゴミ集積場と浄化槽で吸収処理をすればおしまいだし、それも早朝に一時間もやれば終わるらしいんだ。


 自由時間はいっぱいあるんだから、好きなようにしてもらって構わねーのに。


「前にも言ったけど、出かけるのに許可はいらないぞ? 湿原でもダンジョンでも好きなときに行ってきなよ」


「いや いちどあるじと ともに いきたいのだ」


「ルーちゃんと……?」


 ルーちゃんと行きたい……こりゃダンジョンマスター案件か?


「ええと……ダンジョンに関係する話かな?」


「そうだ きいてくれよ あるじのあるじよ」


 ルーちゃんがみぶりてぶり、ぴょこぴょこと翻訳してくれたモルモルの話は、今後のダンジョン運営にも関わるかなり重要なことだった。


 話をまとめるとこうだ。


 モルモルは雑食である。


 ゆえに、この家に来たモルモル二匹は、様々な物が食べられてとても幸せなのだという。


 ……俺としてはなんかこう、微妙に複雑ではあるが……幸せならいいんだ。


 しかし、ダンジョンに棲み着いた八匹のモルモルたちからクレームと言うか、要望が入ったのだという。


 なぜ、それを家のモルモルたちが知っているのかと言えば、モルモル固有の、特殊能力のおかげらしい。


 モルモルは分裂をして増えるらしいのだが、増えた個体と元の個体はどれだけ離れていても会話ができるんだと。


 それで、ダンジョン組と家組でちょいちょい雑談をしているらしいんだが、そこで問題になったのが食事の話だった。


 ダンジョンは環境的にはとても素晴らしいのだが、悲しいことに苔や植物しか無いのだという。


 雑食のモルモルとしては、それではちょっと満足できないと言うか、家に住んでるモルモルたちはずるいのでは? なあ、ちょっと我らと交替してみぬか……と、うるさく言ってくるのだという。


「そういうわけなので あるじに われらが たべる ちいさき まじゅうたちを ダンジョンにつれていってほしいのだ」


「われらも てつだうので どうか たのむ」


 つまり、小魚やエビを捕まえて放流して欲しいっつうことか……。


 なるほど、そいつぁ重要案件だ。


 なにせ、モルモルたちには食の保証をして契約してもらったわけだからな。


 速やかに解決する必要があるだろう。


 なぜ、このようなことが起きてしまったのか、ダンジョン生成のルールに詳しいパンちゃん先生にお話をうかがったところ――


「ぶっちゃけてしまうけれど、ダンジョンに関しては……その、まだちょっとしか触ってないから、まだわからないところが多いんだけどさ……」


 と、大変頼りになる前置きをした上で説明をしてくれた。


「うちのダンジョンってさ、モブ……魔獣の生成ができないのは知ってるわよね?」


「ああ、外から迷い込んだ魔獣を住まわせる仕様だとかなんとかいってたやつ?」


「そう、それよ……」


「ああ……なるほどな。ダンジョン(ルーちゃん)がエビや小魚を生成できないから、塩のダンジョンには動物性タンパク質さんが一匹も居ないという状況になったと……」


「盲点だったわ……モルモルたちには申し訳ないことしたわね」


 ルーちゃんが生成できる生体オブジェクトは、魔石を備えないもの、つまり魔樹や魔草を除いた普通の植物だけ……地味にめんどうな枷だよなあ、これ。 


 ……うん?


「なあ……もしかしてさ、これって……魔石の有無で生成できるかどうか判定してんじゃねえの?」


「えっ? どういうことよ」


「もしもさ、魔石を持たない普通の生物が実装されてたら、ダンジョンのオブジェクトとして生成して好きに配置できたってことにならねえ?」


 ジト目でパンちゃん先生を見つめながら、言ってやると、なかなか興味深いことを教えてくれた。


「あっ……そういえば……ブーちゃんとこのダンジョンってね、牧場階層とかあってね、牛なんかがポップするから、そこで酪農してたりするのよね……え、え、ちょっと待って……!」


 パンちゃんがスマホを出してなにか始めたぞ……二つ折りのスマホかよ……金持ちめ!


 ポヒュ!


 ポコン!


「えっ……まじで?」


 ポヒュ!


 ポコン!


「そういう……ことかぁ……」


 ポヒュ!


 ポコン!


「なるほど……今、独自に調査して判明したことがあるわ」


「どうせブーちゃんとやらにメッセしたんやろ」


「くっ……なんでバレてるのよ……」


 バレねえわけねえだろ!


「あのね、うちのダンジョンってさ、ブーちゃんとこと同じアセット使ってるんだけど……さ、なんでうちじゃできないことができてるのか、気になって聞いてみたわけよ」


「ダンジョンもアセットあんのかよ……それで?」


「ユウが言った通りだった……『牛さんはオブジェクトに登録できるから、パレットに配置しておけば自動で減った分だけポップするようになるわよ。あ、もちろん魔獣じゃない牛さんじゃないとだめよ★』って返信がきた……」


「俺が言ったとおりじゃねえかよ……」


「……うう……」


 ポヒュ!


 ポコン!


「……くっ! 『うち動物いないんだけど』って送ったら、ちょっと間が空いた後『どんまい★』って来たわ……」


 マジでどんまいすぎる。


 というわけで、ここに来てまた魔獣しか居ないユリカゴのデメリットを叩きつけられたパンちゃん先生でありました。


 ……回想ここまで!



 んなわけで、ふわふわの実ついでに、ダンジョンに放す小型水生魔獣を探しに来たというわけだ。


 まずはふわふわの実を探してやろうと、目を皿のようにして見てるんだけど、やっぱりどう見てもそれらしいものは見当たらない。


 これまでのパターンからして、全然見た目が違うんだろうと想定したうえで、こまめに図鑑登録をしてんのに、全然見つからねえんだ。


 自力で見つけたかったが、ここは女神様の知恵を借りるとしよう……。


「ねえねえ女神様、そのふわふわの実とやらはどこにあるのでしょう?」


「ん……? あ! 女神様っていった? うふ、やあね目の前に生えてるじゃないの」


「お、おう。目の前?」


 こいつ心配になる程扱いやすいよな……ええと……目の前ね……って、普通の草しか生えてねーんだけど?


「あの……俺の目にはそれらしいものが見えないのですが……」


「マジでいってる? ああ、なるほどね。あんた陸を探してるから見つからないのよ」


「は?」


 そう言われて、思わず水たまりに目を向けると、そこにはデカめの水草が茂っているのが見えた……けど、あれどう見ても違うやろ。


 ……そう思ったのだが。


「しょうがないわねえ……ひとつ取ってあげるから、みてなさい」


 パンちゃんは、水たまりに腕を突っ込んでじゃぶじゃぶと引っ掻き回すと、ザブリと何か大きな物を引き抜いた。


「ほら、これがふわふわの実よ。まあ……こんなんだから、気付けなくてもしょうがないかもねー」


 パンちゃんが得意げな顔で差し出したのは、スイカくらいの大きさで、ぼこぼことした緑色の実をつけた水草だった。


 あー、これあれだわ。クソでけえアナカリスだわ……アナカリスにできが悪いスイカがくっついてる感じだわこれ。


「えぇ……これのどこがフワフワなんだよ……」


 マジで言ってるのかお前と、疑いの眼差しを向けると……。


「まあ、百聞は一見にしかずってやつよ……ほれっ」


 パンちゃんが実をちぎって投げつけてきた!


「わっ!? なにすんだよ!」


 両手を出し、ずっしりと来る感覚に備えて受け止めると……。


 ふわっ


 あっ……なぁにいこれえ……いつまでも触っていられるぞお……。


「ね? ふわふわでしょう?」


「やっべえなこれ……スクイーズみてえでクセになるな……」


「気持ちいいのはわかるけど……本題はそこじゃないで……っしょ!」


「ああーー! なにすんだよ!」


 ふわふわを楽しんでいたのに、パンちゃんが手刀で真っ二つにしやがった。


 こいつ……こんなスキルを持ってんのかよ……。


 ……実は女神ってのは嘘で、世紀末覇王だったりしねえか?


「何バカなこと考えてんのよ……ほら、中を見てみなさい?」


「中ぁ? ……おおお!」


 真っ二つになった実の内側にあったのは、ふわっふわの綿のような真っ白い素材だった。


「ふふん」


 まったく、得意げな顔しやがってよ……。


「おかげで助かったわ。さんきゅうな、パンちゃん」


「い、いいのよ。ほら、どうせまたポップするんだから、多めにとっておきなさい。この手の素材はあればあるだけ使うんだからさ」


 確かにそうだ。


 タオルに着替えに、お布団にシーツ! マジであればあるだけ使えるやつだわ。


 ヒャッハー! フワフワは消毒だー!


 このあといっぱい乱獲した。


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