閑話 クロベエ狩りに行く
※10話~14話のクロベエサイド、彼が鶏さんを狩ったときのお話です。
◆◇SIDE:クロベエ◇◆
パンの力で身体が大きくなって、ユウと話ができるようになった。
あっちの家に居た頃のおれと比べたら、いろんなことができるようになって、とっても楽しい。
でもね、おれが一番好きなのは、やっぱりユウと遊ぶことなんだ。
だから、あっちのくらしも良かったよ。
ユウとおさんぽして、かけっこして、はっぱをたべて。
ユウにひっぱられて、おうちにかえって、ごはんをたべてねる。
おれはそんな毎日が大好きだったんだ。
でもね、こっちに来たのには後悔はしていないぞ。
ユウがいるし、ヒモをつけなくても好きなだけお散歩できるし。
それに、新しい家族が出来たからね。
おれの妹分、ルーちゃん。
あいつ、とてもかわいいんだよ。
ルーちゃんは、パンにママと言ってるから、たぶんユウがパンに産ませた子供なんだと思う。
そんなパンも、今では大切な家族だよね。
いつも二人でじゃれ合ってるなって思ったら、いつのまにか群れに入ってたし、気づいたらルーちゃんを産んでたし。
パンはおれにもやさしくしてくれるし、へんなやつだけど、ユウにないしょでおやつをくれたりするから、とってもいいやつだ。
だからさ、ユウががんばってパンにたくさん子を産ませたらいいなっておもう。
きっとすごい弟分や妹分がふえるとおもうんだよねー。
◇◆
パンとルーちゃんがでかけて、久しぶりにユウと二人になった。
散歩に誘おうかなっておもったんだけど、ユウは家を作るのに忙しいみたいだ。
ユウが暇になるまで寝てようかなって思ったけど、ユウがうるさくて眠れない……。
しょうがない……また一人でお出かけしてこよう。
◇
この森も、いまではすっかり慣れたなあ。
最初は歩くのも怖かったけど、おれもつよくなったからね。ウルッグも、ヒッグホッグも、今ではおれをみるとコソコソと逃げていくんだ。
めんどうだから、だいたいはそのまま逃がすけど、たまにおいかけて狩ることもあるよ。
肉はおやつ代わりに食べて、魔石はユウへのおみやげにしてる。
何回かそうやってウルッグを狩ってたらさ、だんだんと頭がスッキリしてきて、前よりユウが言ってることがわかるようになってきたし、狩りも上手になってきてさ。
最近になってかな? ヒッグホッグも狩れるようになったんだよ。
それまでは、ちょっとだけビクビクしながらお散歩してたけど、今はあっちから逃げてくれるから気楽なもんだよ。
だからだろうな、ここにおれだけで来るの……やめられないのよ。
よし、今日はあっちに行ってみよう。
おれはかしこいので、迷子にならないようにあちこちに匂いをつけていくんだ。
こうしておけばさ、自分の匂いをたどるだけで家に帰れるからね。
ユウがいってた、けはいさっち? みたいなもんだよ。
たぶん。
いつもとは反対に曲がって、まだいったことがない方にいく。
ユウは最近狩りをする暇もないからね。
こうしておれがかわりに探検して、なにか見つけたらユウにおしえてあげるんだ。
……クンクン。
なんだかいい匂いがする……。
美味しそうな匂いがするほうに行くと、すごい広いところに出た。
こうえんみたいなところに、ロップみたいなのがいっぱいいて、ぴょんぴょこぴょんぴょこしてる。
うーん、前に狩ったロップとちがうなー、これをとって帰ったらユウよろこぶかなー?
ゆっくりとやぶから抜けたら、ロップたちがこっちを見た。
気づかれちゃったな、どうしよう? うーん、このままとびつこうかな?
「グァエー!!!」
うん? なんか変な声が聞こえたぞ。
よく見たら、大きなクッカがいて、そのまわりに何匹かロップが倒れてるぞ。
ロップは……まだ生きてるな。
この鶏をみて気絶しちゃったみたいだな。
うーん、どうしようかな。ロップはあまり大きくないし、弱いのと遊んでも面白くないからなあ。
うん、あのでっかいクッカをやっつけよう。なんか普通のクッカじゃないし、あれならユウのおみやげにぴったりだよね。
「クェアー!」
なまいきなクッカだな。おれをみて怒ってるぞ。
こういう鳥はさ、一気にジャンプして首をねらえばいっぱつなんだよ。
おれの母ちゃんが、山に行って、でかい鳥をとった時はそうしたんだってじまんしてたし!
ようし、いくぞー!
クッカに向かって走っていくと、びっくりした顔でこっちをみてる。
ようし、覚悟しろー!
ジャンプして首をがぶり! ……あれれ、外れちゃった……痛い! 痛いってば!
ああ、ちくしょう。尻をけられちゃったよ……。
「もう怒った! ぜったいにやっつけてやるからな!」
「クワロルルルル……」
クッカに向かって何度も何度も飛びかかる。
でも、おれの攻撃はまったく当たらないし、そのたびに尻をけられてイライラする!
「クカカカカカカ……」
……笑ってるのかな……すっごいイライラするなあ! もーーー!
「すっごくあったまきた! ゆるさないからな!」
飛びつくのはもうやめだ! 近づいてひっかいてやる!
首を狙う……と、見せかけて!
「……グェアー!」
ザックリと腹を引っ掻いてやったぞ!
クッカのヤツ、おれがまた顔に飛んでくると思ったんだろーな。ざまーみろ!
でも、あいつ、やっぱり素早いなあ。
あんまりざっくり引っ掻けなかったよ。
でも……悪くないかんじだね。
なんどかやってれば、そのうちやっつけられそう!
「いくぞお!」
「クェアアア!」
クッカのクチバシを避けながら、何度も何度も引っ掻いていく。
くそー! ほんとこいつ……素早いな! 全然当たらない……あれれ?
当たってないのに、クッカの羽が飛び散ってる……それに、すごく痛そうな顔をしてるぞ。
おかしいな、おかしいなって思いながらクッカとやりあってたら、わかったよ。
おれの手からさ、見えないなにかが飛んでってるみたいなんだ。
これを首に当てたら……やっつけられそうだね!
シュバッ シュバッ!
うーん、うまくいかないな。
こういうとき、ユウならどうするんだろう。
うーん……
『慣れねえことはするもんじゃねえな。結局いつも通りが正解じゃねえかよ』
……そうだ。ユウがまえにそんなことを言ってた気がする。
なれないことはしない、いつもどおりが正解。
やっぱり、首をガブリが一番良さそう……けど、あいつは素早くて当たらない。
でも、あいつはバカっぽいからな……また騙してやればいいかも。
だったら……こうすれば!
クッカに向かって走りながら、見えないなにかを飛ばして……ここでジャンプだ!
上を向いたクッカの腹に、見えないなにかがザシュザシュと当たった!
「クエエエアア!」
クッカが下を見て後ろに下がった。狙い通りだよ!
「ばかめ、そこはおれが落ちるところだよ」
隙だらけのクッカを踏み潰し、そのままガブリと首に噛みついてやった。
「グギャァ……」
よおし、やっつけたぞお! こいつ、クッカのくせにほんと大きいなあ、ユウよろこぶかなー?
口にくわえて帰ろうとしたら、ロップたちが沢山出てきた。
でっかいのとったから、こいつらはもういいや……ほら、どっかいけよー。
「キュー キューキュキュー」
「んー? 何か言ってるのかー?」
「キュッキュッキュー」
おれの周りをピョンピョンしながら何か言ってる気がするなー。喋れる魔獣が居るってパンがいってたから、そういうやつかな?
「うーん、魔獣の言葉はユウとかルーちゃんじゃないとわかんないんだよなー」
おれは猫と人の言葉しかわからないからな……。
「今日はこれとったから、おまえたちはかんべんしてやるぞー。ほら、どっかいけー」
逃げないなー……変なロップだなあ。
うーん、そろそろルーちゃんたちも帰ってきたかな? おれも帰らないとな。
「じゃあね、次はユウ達と一緒に来るからな。もしかしたら、お前らはご飯にならないですむかもねー」
「キュッキュー? キュー!」
変なロップの話と、変なクッカの肉。このおみやげで、ユウがよろこんでくれるといいなあ。




