第7話 はじめての拠点
つーわけで、早速ストレージの中身をチェックしていこうか。
まずは……そうだな、色々と使えそうなナイフを出してみよう。
おお、ズッシリしていて結構デケえ! 日本で所持してるとおまわりさんにめっちゃ怒られるやつだわこれ! これなら作業用以外にも、武器としても使えそうだな。
……ということは、何かと遭遇しても、多少はやりあえるってことだ!
「クロベエ、森に行くぞ!」
「え だいじょうぶ? 危ないっていってなかった?」
「大丈夫さ、ほら、こいつがある」
「おー 強そうだね」
さっそくクロベエにまたがり森にやってきた……まあ、武器があっても何かと戦うってのは、まだちょっと怖いっつうか、覚悟完了してねえので、入口でちょろっと活動するだけね。
どれ、さっそく枝払いでもしてみるか……おーこりゃいいな。スパスパ切れて気持ちがいい。めちゃくちゃ切れ味いいな、最高だわ、このナイフ!
っていうか、ちょいちょい鉈で裏山の手入れをしてたけど、ここまでスパスパ切れたことはなかったぞ。
うーん、これはもしかすると【斬撃】とか【剣豪】って感じのスキルが生えてたり、ジョブ欄に【剣聖】が生えたのかもしれんな。
ふふ、どうやら俺の異世界チートストーリーがここに始まってしまったようだな。
……いやまて。アセットがうんたら言ってたから、ワンチャンそういうのが実装されている可能性はありそうだ。
ただ、それが後付の、いわゆるDLCキャラである俺に適用されるだろうか?
MOD当て失敗してアセットぶっ壊したパンちゃんだぞ? できると思うか?
……できねえな……パンちゃんだしな……。
うん、これ普通にナイフの切れ味がやべえだけだわこれ。
ステータスオープンとか叫ばなくてよかったわ……あいつぜってえ見てるし、腹抱えて笑うのが目に見えてるもん……。
◆◇
……ふう。つい夢中になって切りまくってしまった。おかげで結構な量の草やら小枝やらを入手できてしまったが、ストレージのおかげで無駄にせずすんだぜ。
さて、他に良さげな素材は……っと。
キョロキョロしながら少し散策してみると、大木に絡まるツルを見つけた。
これこれ、こういうのが欲しかったんですわ。いいですよね、ツル。そのままでもロープ代わりに使えるし、クラフト面で様々な素材になるし。
何かと便利だから、採れるだけ採っておこう。
大木の周りをうろちょろしながらツルを集めていると、折れて転がっている木を発見した。
直径二十センチくらい、長さ三メートルくらいの真っ直ぐな木だ。
おー、これはいいな。
これから作ろうと思ってたやつ、小枝だけだとちょっと無理があったからな。これがあれば、よりそれらしいのが作れそうだ。
拾った素材をスマホの画面にコツンコツンと当てまくって一通り収納完了。入るかな? って思ったクソデカ木材もにゅるんとスマホに消えていった。
いやあ、楽だわこれ。丸太を武器にできるタイプの人間じゃないからマジ助かるぜ。
◇◆
一通り資材を集めたので、ひとまず泉へと戻ってきた。
あちこちうろちょろしてみたけど、ここ以外に飲料水を確保できそうなところは見つからなかったからね。
この近くにとりあえずの拠点を作ろうと思う。
仮拠点を作るため、まずは深さ一メートル程の穴を掘らなければならないのだが、ここは適任がいるので頼むことにする。
「へい、クロベエ! 穴を掘って!」
「……」
……反応がない……寝てるのか? いや、耳がピクピクしてるな……こいつ聞こえないふりをしてやがる。
「ほら! クロベエ、穴を掘るんだ! クロベー、頼むから掘ってくれ! クーローベーエー! クーロー」
「ああもう うるさいよ!」
必死のお願いが効いたのか、のそりと立ち上がりこちらを見た。
「はぁ……あのさあ おれ 犬じゃないんだけどなあ 猫に たのむことじゃないよ」
渋い顔でそんなことを言っているが、俺は知っている。
お前よー、トイレの時に必要以上に穴を掘ってるよなあ。
散歩に連れてったときもさあ、用を足すわけでもないのに、無駄に穴を掘って顔を突っ込んでフゴフゴしてるじゃーん?
それってさあ……穴掘りが大好きってことじゃん!
ほれほれ、頼むよクロベエとしつこく言うと、フスーと、大きめの溜息を鼻から吐いて『しかたないなあ』としっぶい顔で穴を掘り始めてくれた。
最初は、ぼやきながら掘っていたクロベエだったが、だんだんとその速度が上がっていく。
楽しいんだろうな、尻尾をブンブンと振りながら、ざすざす、ぞりぞりと穴を掘り進んでいく。
泉からそこそこ離したおかげか、心配していた水も出ない。うん、なかなかいい感じじゃないか……っと、そろそろいいな。
「うーし、クロベエもういいぞ! おい、もういいってば! こら、掘り過ぎだって! うわ! 顔に土が! ぺっぺ! うおお! もうやめてくれええええ!」
……
…
「……べ べつに穴掘りすきじゃないからなー!」
「そうかよ……まあ、ご苦労さんだ」
予定より、だいぶデカい穴になっちまった……。
二人用テントくらいの予定が、思いがけずファミリーサイズになっちまったわ。
まあ、これくらい広けりゃ、中で火を焚いても火事の心配が減っていいかもしれんな。
穴の広さはこれでいいことにして、次の作業に移ろう。
穴の底を太い枝でドシンドシンと突いて固めていく……広くなっちまったから、余計にしんどいが……これは雑にやっちまうとあとで困るから頑張るしかねえ。
……ふう。こんくらい固まればいいかな?
次は小石をざらざらと入れて……どすん、どすん……やべ、マジでしんどい……テンション下がってきた……。
「なあ、クロベエ……ちょっと手伝ってくんね?」
「ねてる」
「起きてんじゃん!」
くっそ、余計に疲れた……はぁはぁ……こんだけ締め固めりゃいいだろ。
次は……森で拾った真っ直ぐな木を穴の真ん中に立てて……ぜえぜえ……。
「ちょ、クロベエ、ここ押さえててくんね?」
「しょうがないなあ……」
「うん、ありがと……」
根元を大きめの石で固定してぇ……ふうふう……少し土をかけて締め固めて……またその上に土をかけて突いて……締め固めて……。
ハァハァ…… ハァハァ……。
「うおおお! ちゃんと立ったぞお!」
見てください、この地面からまっすぐ伸びる謎の木材を!
へへ、これはね『柱』っていうんだぜ!
……って、いくらこの世界でも、流石にそんくらいの概念はあるよな?
親父がやってた作業を思い出しながらやってみたけど、なんとか頑丈そうな柱が立てられたわ。
体力は相当持ってかれちまったが大満足のでき栄えだ。
……すっかり終わった感が漂っているが、これで終わりじゃないんだよなあ。
これじゃただ、穴の中に柱を立てただけで、拠点とは言えねえ。
まだ、柱に一本ずつ枝を立てかけて、ツルで縛って固定していく作業が待っている……まあ、そこまで力使わねーから楽だけどさ。
ぐるりと柱を囲むように枝を配置して、ちまちまギュッギュとツルで柱にくくり付けていく。
なんか傘みたいになってきたが……まあ、たぶんこれでいけるやろ。
……よし、多少雑だが、これで骨組みが完成だ。
あとはそれに重ねるように、泉に生えていたアシのような植物をはめ込んで隙間を埋めていく……だけ……なんだが、これ地味に疲れるな……ふうふう……。
「……ユウ たのしい?」
「楽しくはねえけど、悪くもねえかな」
「ふーん おれちょっと 水のみにいくね……」
「手伝わねえのかよ!」
ハァハァ…… ヒィヒィ……
……
…
ジャジャジャーン! ユウは【竪穴式住居っぽい何か】をクラフトした! なんつってな。
見た目はすげえ悪いが、それなりに雨風をしのげそうな小屋ができたぞ!
どっかの国の半裸サバイバル配信者さんサンキュー! まさか、あの動画が役に立つ日が来るとは思わなかったぜ!
めっちゃ疲れたけど、俺もやればできんじゃん!




