第13話 がんばったね
無駄にデカい池を作ったせいか、妙にテンションが爆上がりしちまって、クラフターズハイになっていたようだ。
気付けば、山のような生活用品が作られていて、キッチンにはダストシュートまで備え付けられていた。
ううむ……クラフターズハイやべえな……調理器具や食器類が充実し、バス・トイレも快適空間に生まれ変わったし、寝室だって布団を除けばとっても素敵な場所に仕上がって、これはこれでとても満足なのだが、代償として魔石をエグい量消費しちまった。
……ヒッグホッグくん……また、近いうちに会いに行くよ。
おや、遠くから可愛らしい声が近づいてくるぞ。
どうやらルーちゃんたちのおかえりのようだ。
玄関の扉を開けて外に顔を出してみれば、ルーちゃんとパンちゃん、そしてモルモルが二匹立っていた。
モルモルが減ってるってことは、ダンジョンを気に入って棲み着いてくれたんだろうな。
「おかえり、ルーちゃん。ダンジョンはどうだった?」
「んとね、しっちたい、つくったの。モルモルもね、よろこんでたよ。ねー?」
ルーちゃんの呼びかけに、ぴょんぴょこ跳ねて答えるモルモルたち。
これはきっと喜びを表している……んだろうな。
「はー……ねえねえ、ユウ聞いてよー。ルーちゃんったら凄くってねーあのね、これがそれでさ、まじでまじで――」
興奮気味のパンちゃんがわわわーと、言葉の洪水を浴びせてきた。
つうか、こいついつの間にか俺を呼び捨てするようになったんだよな……。
俺もパンとか呼んだほうが良いんだろうか? なんか偉そうで嫌だな……それに、変に意識されてもアレだし、俺はこのままでいよう。
「でさあ、聞いてる? あれがこれでそれであれでさあ……」
「ああ、聞いてるよ。それでどうなったんだ?」
「驚いたことにさ、あれれがこれれで、そーなのよねえ」
めっちゃ早口で喋るもんだから、圧倒されてしまうが……内容を聞けば聞くほどパンちゃんがこうなっちまったのが理解できてしまうから困る。
やべーなルーちゃん。
チート主人公は俺でも、俺のスマホでもなくルーちゃんだったやつじゃん……!
ダンジョンコアだし、あんなスキルもってるからさ、そりゃダンジョンを弄れるんだろうなあとは思ってたよ。
でもさ、できる範囲はせいぜい水族館や動物園みたいな省スペースの環境再現程度だと思ってたんだよ……。
パンちゃんもそう思ってたっていうか、この世界のダンジョンって元々そういう仕様だったみたいだしな。
でもルーちゃんがカスタムした塩のダンジョンときたらどうだ。
ラノベで見るような『中なのに外!』みたいなアレなんだぜ? やばくね? やべーよな!
さっすがうちの子ですわ!
「ルーちゃん、めっちゃがんばったんだなー!」
「うん! がんばった! モルモルがね、よろこぶようにね、がんばったんだー!」
はー、かわい。
お手々ぱたぱたして喜ぶルーちゃん、めっちゃかわいーわ。
「ようし、今度は俺の『がんばった』を見せる番だな! どうだい、ルーちゃん。ここがお風呂で、こっちがトイレだ。どちらも蛇口を触れば水が出るし、パネルを触ればお湯も沸くんだぞー」
「キットのカタログからそのまま設置しただけじゃないの」
「ぐっ……それはそうなんだが……ほら、排水周りを見てくれよ! 汚水をそこらに流さないように、浄化槽を経由して庭に作った池に流れるようにしたんだぜ」
「……浄化槽はわかるけど、池なんていらないでしょう? 泉があるんだし、浄化してもらったらそこに流したらいいじゃないの」
パンちゃん……ほんと残念なやつ……! ここまで来ると、ムカつくってより、悲しくなっちゃうわ……。
しょうがねえ、一から十まで説明してやるよ。
「なあ、助手くんよ。この家から排出される汚水ってどんなものがあるかね?」
「誰が助手くんよ……汚水でしょ? お風呂に……キッチン、ああ、洗面台もあったわね。そんくらいじゃないの?」
ほらね……一番肝心なことを忘れてるじゃねえかよ。
「助手くんよ……そこの小部屋がなんなのか知っているかね」
ビシッとトイレを指さす。
「バカにしないでくれる? トイレでしょう? まったく……変な小芝居始めないでよね」
「ふむ……質問を変えようか。我が家の飲み水はどこから採っているか知っているかね」
「泉でしょ? あそこはさ、清浄度を維持するように設定してあるから、そのまま飲めるのよね」
「なんだねそれは……初耳なのだが?」
「聞かれてなかったし……で、でもさ。汚水をそのまま入れたら、浄化に丸一日かかっちゃうから、浄化槽は作って正解よ? よ、よくやったわね」
本当かぁ? 浄化槽いらなかったんじゃねえのかあ? 表情からして、浄化の仕様はマジっぽいな……。
まあ……仮に、完全に浄化する泉だからといって、俺が言いたいことは変わらないわけだが。
「君は、浄化した汚水を泉に流せば良い、そう言ったね?」
「まだやるの? ……言ったわよ。浄化済みなんだし、泉だって浄化するんだから別に構わないでしょ」
めんどくさそうな顔をするパンちゃんの前に、コップを取り出して置き、ヤカンを二つ取り出してそれぞれに少しずつ水を入れて見せる。
「まず左のヤカンだが、これには泉の水が入っているとしよう」
コップに半分ほど注いで見せる。
「はあ……よく冷えていて美味しそうですね?」
「そして、このヤカンだが、こちらはあの個室から出た汚水を飲用可能なレベルまで浄化した水が入っている」
汚水役の水をコップに少しだけ注ぎ入れる。
「君は、こういった水も問題ないと言ったが……どうだね、飲めるかね」
「あっ……なるほど……言いたいことがわかったわ……あの、その……飲めません……」
「そうだろう? 品質だけじゃない……気持ち的な部分も大切なのだよ……」
「先生……私が間違ってました……」
「ああ、いいんだよ、助手くん……そうやってゆっくり学んでいけば良いんだ……」
「先生……!」
「あ、そうだ。お土産に頼んでた鉱石は?」
「……あっ……先生……私、がんばりますから!」
「うるさいよ!」
というわけで、ちょっとぐだぐだし始めたので、さっさと切り替えてモルモルたちに仕事を頼んでいきましょう。




