第4話 このダンジョンコアかわいい…
「……いつかやるとは思ってたけど……ほんとにやらかしちゃったの!? もしもし? ポリスメン?」
「おいこら、どこに通報してんだよ! いいからこの子を鑑定してみろって!」
「そう言って誤魔化しても罪は消えない――ええ……? 待って、待って待って!? ダンジョンコアってなによ!」
「それを聞きたいから呼んだんだろ……? マジでどこの子なんだよ?」
「どこの子って……ダンジョンの子? って違うか。コアはダンジョンそのものだものね……うーん…ちょっと待ってログを漁ってみる」
俺たちのやり取りを不思議な顔で見つめる女の子。
うん? どした、俺の袖なんて引っ張っちゃって……ああ、スープか。よっぽど気に入ったんだな。ほら、どうぞ、おたべ。
嬉しげにスープを食べるのを見ていると、かわいい子供にしか見えんのだが……ダンジョンコアなんだよなあ。
木匙をギュッと握り、はぷはぷとスープを口に運んでは、目をキラキラとさせている。
やべえ……めちゃくちゃ愛らしい。
あ、ちがうからな? ちっちゃい子が好きとかそういうのはねえから!
あれよ、娘がかわいいなあとか、子猫が可愛いなあとかさ、そういうアレだから。マジでそういう趣味はねえから誤解してはいけないよ。
「わかったわ!」
「ヒッ! ごめんなさい!ゆるしてください!」
「……何に謝ってるのよ? わかったわよ、この子の正体が」
「おお、マジかよ! それで……この子はどこのなに子ちゃんなんだ?」
「まず……この子の親はね、ユウ、あなたよ」
「はあ? 身に覚えが無いっていうか、どうやったらダンジョン孕ませられるんだよ!」
「な、何変なこと考えてるのよ、違うわよ! ほら、あんた岩塩の採掘したでしょ」
「岩塩……ああ、それがどうしたんだよ?」
「あの時さ、はしゃぎすぎて岩山に大穴開けちゃったじゃないの」
あったな……塩の洞窟なんて名前までつけたっけ……なんか既に懐かしいな。
「その洞窟にね、どういうわけか大量のマナが溜まっちゃって、ダンジョンコアが生まれちゃったのよ」
「確かに穴を掘ったのは俺だよ? けど、マナって天然のものなんだろ? 俺がパパとかちょっとちがくね? あ、まさか穴を掘ったって言うのに……」
「ばか! やめなさいよ、違うわよ! スマホよスマホ!」
「俺のスマホがどうしたってんだよ」
「私の加護が強くかけられているから、神気をまとってるわけ」
「つまり?」
「スマホから滲み出た神気がね、ちょっぴり洞窟内に残留しちゃって……たまたま近くに生まれたコアと結びついて……なんというか、奇跡が起きちゃったのよ……」
「急に神話めいてきた……」
「マジでそんな感じなんだよなあ……奇跡の力で受肉を果たしたコアは、自らを構成する神気と、魔力の香りを辿って……この家まで来たってわけねえ……」
「……その理屈だと、俺とパンちゃんの子ってことになるんですけど……」
「ちょ、ちょっと……やめてよ……そんなん……でもあるけど、なんかこう、アレだから!」
「お、おう……そ、そうだな……なんかすまん」
「謝らないでよ……それはそれでこう……ああもう!」
「そ、そうだ……受肉したのはわかったが、なんでこんな姿なのかが謎だな?」
「そうよね……私のデータにも無いからホント不思議……どこかで見たことがあるような気はするんだけどね」
「……奇遇だな、俺もちょっと既視感がある。何かのソシャゲかね?」
「わからないわね……うーん……ここまで出かかってるのに……」
パンちゃんと二人、頭を抱えて居ると、女の子がちょいちょいと袖を引いた。
またスープのおかわりかなと思ったら、どうも違うらしい。
「俺たちが何をしてるのか気になるのかな?」
「そうみたいね……この子……ううん、名前がないのも不便ね。ユウ、あんた名付けしちゃいなさいよ」
「え? 俺がつけちゃっていいの?」
「本来ならば、神である私の役目なんだけど、今回のケースなら、貴方にも命名権があるからね。ち、父親なんだし……せっかくだからつけてあげなさいよ」
「そっか……父親、かあ……」
やめろよ、顔を赤くしながら言うなよ……変に意識しちゃうだろ……。
「生まれは塩のダンジョン、だからシオリなんてのはやめてよね?」
「流石にねえわ……ああ、まてよ。でもさ、逆にありかもしれん」
「えぇ……?」
「ソルトからルトってどうよ?」
「ルト、ルトちゃん……ルーちゃんか。悪くないわね」
「だろ? よし、ルトにしよう。この子の名前はルトだ!」
そう決めた瞬間、女の子が真っ白な光に覆われ、辺りに清々しい空気が広がった。
「システム――リプラシルに名前が認められたみたいね。みてなさい、保留されていた成長が始まるわよ」
そして……
「…る…と?」
「しゃべったああああああ? はやくね? 突然じゃね?」
「保留されてたって言ったでしょ。システムに登録されたから、今日からじわじわと相応の知能レベルまで成長していくはずよ」
おお……ファンタジーなのかSFなのかわからねえ……わからねえが……!
「ルーちゃん! 俺はユウ、お前のお父さんだぞ!」
急激に湧き上がる父性。もうルーちゃんが愛おしくてたまらなくなっちまって、抱き上げ……ようと、したところで、パンちゃんに奪われた!
「ごめんねー、気持ち悪かったねー。私はリパンニェル! ルーちゃんのお母さんよ!」
「りゅ…? ぱん・・ ぱん! ぱん!」
やっぱりパンって言われてやんの! 言いにくいよな、ニェルって。
ぐぬぬと悔しそうなパンちゃんだが、何か譲れないものがあるのか頑張っている。
「お母さん、が難しくて言えないのね? ママよーマーマ!」
「まーま? まーま!」
「そう! まーまよー! えらいわねー、ルーちゃーん!」
顔中ドロドロに溶かしてルーちゃんに頬ずりしておる……なんだよ、母性あふれる顔しやがって……すっかりメロメロじゃねえかよ。
「おれはクロベエだよー ルーちゃんのお兄ちゃんだよー」
さり気に兄貴アピールをするクロベエ。
……おまえ俺を親だと思ってたんだな……くっ、嬉しいこと言いやがって!
あれ? なんかルーちゃん服着てね? あれか、システムに認められたからか!
「すげえな、名付けすりゃ服まで用意されるんだな」
「あはは、ばかね、そんなわけないでしょ? さっきウシマツ屋に行って買ってきたのよ」
ウシマツ屋って、日本の子供服屋じゃねえかよ。
気軽に行き来してんじゃねえよ……。
……そういやビールとか取り寄せてたな。
上手くおだてりゃ……他にも色々調達してきてくれそうだな?
よっし、今度雑に煽てて、ハンバーガーとか買ってきてもらおっと。
「なによ、なんか悪いこと考えてるでしょ?」
「え? いや、ルーちゃんにワンピース似合ってるなあって」
「ふうん、まあいいわ。あらールーちゃんリボンも似合いましゅねー」
ふう……ルーちゃんのお陰で企みがバレずに済んだぜ……しっかし、マジで可愛いなルーちゃん。
うーん……白いワンピースを着た姿を見ると……余計に既視感がムクムクだわ。
マジで何のキャラに似てるんだろうな?




