第3話 この子どこの子
あ、そうだ! こういうときはモフモフだ! モフモフは全てを解決するんだ!
困ったときはクロベエくんに限る。これまで何度も助けてもらった頼れる相棒だ、きっとこの状況を打開してくれるはず!
「クロベエ、ちょっと頼みがあるんだが」
「なーにー?」
「ほら、あの子さ、寒そうじゃね? 下に行って温めてやりなよ」
「ほんとだ かわいそうだね ちょっといってくるよ」
「おう、任せたぞ!」
堀の底まで一気に飛び降りたクロベエが、とことこ歩いて女の子に向かっていく。
もこもこと毛を揺らしながら向かってくるクロベエをみて、女の子が僅かに後退したが、素早くクロベエが巻き付いてモフモフの毛で包み込んでしまった。
それが気持ちが良かったのか、クロベエに身を任せ……いや、背中の毛に埋もれて、ぎゅっとしがみついているようだ。
よくやったぞクロベエ! これでひとまずの危機は去った!
しかし、ずいぶんとがっつりしがみついているな……?
……なら、今のうちに連れてきてもらったほうが良いかもしれんな。
「クロベエ、その子を落とさないように戻ってこれるかい?」
「んー…… うん だいじょうぶだと思う」
言っといてなんだが、魔獣が簡単に昇ってこれないほど深く掘った堀なんだよな……クロベエくんだいじょぶそ? 足場になりそうな丸太でも持ってくるかい?
うっわ、クロベエすっげ。
ぴょんと壁に向かって跳ねたと思ったら、そのまま、ぴょんぴょんと、何度か壁に足をついて軽々と戻ってきた。
垂直の壁だぞ? すげえなクロベエくん。
……クロベエレベルの魔獣が来たら、堀なんて役に立たねえことが判明したな。
って、今は家の心配よりも俺の心配をしねえと。
これ以上は本当にまずいので、女の子に俺の上着をかけ、急いで家に連れ帰った。
うん? その行動が日本なら既にアウトだって?
……言うなよ、俺もちょっとそう思ったんだから……。
女の子は、きょろきょろと、珍しそうに室内を眺めている。
見た目はリットちゃんよりだいぶ幼そうに見える。四歳から五歳くらいだろうか。
顔色は悪くはないし、痩せてもいない。つまり、遠い距離を彷徨って辿り着いたというわけではなさそうだ。
ここらに集落はないはずなのに、マジでどっから現れたんだよ。
うーん、だったら噂の魔族さんかな? なんか森に住んでるとかちらっといってたよな。
それなら魔獣の森から来たのかもしれんな……。
とりあえず……そうだな、こういうときはメシだ。
「美味しいものを出してあげるから、そこに座って待っててくれ」
「……?」
小首をかしげたまま動かない。マジで言葉が通じてねえのかな……。
「これは椅子っていうんだ。ほら、こうして座ると楽ちんだよ。やってみな」
大げさに椅子に座ってみせると、ゆっくりと真似をしてくれた。
よし……言葉が通じているかは怪しいが、ジェスチャーは理解してくれるようだ。
テーブルに両腕を乗せてぐでーっとくつろいでいるな……よし、次はスープだ。
ストレージからホカホカのスープを出し、皿によそって木匙と一緒に女の子の前に置く。
ちらりと視線を送ったが、首を傾げた後、俺の顔を見た。
「スープだよ。それを使って……こうやって食べるんだ」
「……?」
おそるおそるスープを眺めていた幼女はこちらをみて首を傾げるばかり。
興味深そうに匂いを嗅いでいるんだけどスープに手を付けようとしない。
お腹空いてないのかな?
……いや、もしかすると……。
俺の分の皿を出し、スープをよそって一口飲んで見せる。
「うーん、おいしい。ほら、こうやって食べるんだぞ」
すると、ぎゅっと木匙を握り、スープをすくって口に運んだ。
やはりか……やってみせないとできない、そんな感じっぽいな……。
女の子はスープをひとくち食べた後、びっくりした顔で俺とスープを交互に見た。
「ああ、大丈夫だから全部食べな」
俺がスープを食べると、女の子もひと口食べて。
次からは俺がやって見せなくても食べ続け、最後の一滴までしっかりと平らげていた。
「俺はユウで、こっちはクロベエ。君はなんて名前なんだい?」
「……?」
スープで口の周りをべちょべちょにした女の子に聞いてみたけれど、やっぱり答えは返ってこない。
まいったな、名前がわかんないんじゃ呼びようがねえぞ……。
かといって、勝手に名前つけるのも違うしな……ああ、そうだ、いい方法があるじゃん。
「ごめんな、ちょっと鑑定させてもらうよ」
……って、冷静に考えると、この画はやべえ。
俺の上着を羽織っただけの幼い女の子に、スマホを向けて撮影をするアラサーの男……通報待ったなしだわこれ。
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名前:
職業:ダンジョンコア
LV:1
体力:5000
魔力:5000
スキル:人化 ダンジョン管理
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って、名前が空白ですやーーーん!! 呼べないままですやーん!
って突っ込みどころはそこじゃねえ! ダンジョンコアってなんすか!
おい!女神! ちょっと来い!!!




