第24話 おしえてぱんちゃん先生!『どうぶつとまじゅう』
熱狂の謝肉祭も今は昔……つっても一昨日の話だが。
肉の日々に別れを告げ、今日、俺達はこの集落を出て家に帰るのである。
つーわけで、朝からキャンプ道具の片付けをしているわけなんだ。
……といっても、テントや食器などをストレージに突っ込むだけなので楽ちんなんだけどな。
ここの人達には魔法だなんだと誤魔化しつつ色々見せちゃったし、もういいだろと、荷車もしまってしまう。
いやほんと、これ無くても良かったかもしんねえな……
持って帰っても邪魔だし、集落で使ってもらうってのも……って、そういやこの集落、家畜っていうのがいないよな?
……もしかすると、動物を飼育するという概念が無いのかもな。この世界なら十分考えられるから恐ろしい……。
あれ?
そう言えば……こっちの世界で純粋な動物という物を見たことがない気がする……。
ウサギっぽいのは居るけど角がある魔獣だし、鳥みたいなやつはソニックブームみたいの放ってたから、どう見ても魔獣だし……イノシシやシカはミニバンサイズだし……。
改めて考えてみると、魔獣以外の動物を見た覚えがないぞ……。
……なんか嫌な予感がするな。ここはひとつ、管理神たるパンちゃん先生に聞いてみよう。
あいつどこ行った? 片付けの邪魔だからテントから出したんだけど……ああ、いたいた……うっわ、広場の隅っこでガチ寝してるわ……奥様方がドン引きしてるじゃねえかよ……って、ケツ掻きながら寝てるわ……そらドン引きされるわ……。
……ほんとお前さあ。
あんなの、もう女神様じゃねえわ……つうか、パンちゃんって呼ぶのすら勿体ねえ……もう呼び捨てでいいや……。
なんかムカついたので、尻をつま先で軽く小突いて起こしてやった。
「おい、パンよ。起きろ」
「ふぁー? なあにい?」
「この世界には動物って存在するのか?」
「ふえ……? どうぶつ? どうぶつならビスケットがいいなあ」
こいつ……寝ぼけてやがる! しゃあねえ、特効薬だ!
「ほうら、餌の時間だよお」
「わ、リブッカサンドじゃん! いただきま〜す! ん〜〜おいしっ」
……ちょっと冗談だったのに、肉サンド見せた瞬間覚醒しやがったわ……マジかよこいつ……。
「ふう……ごちそうさまでした。それでね、動物の事だけど……居ないわよ」
「居ない……?」
「うん、この世界ってさ、ほとんどの生命が魔力を持ってるのよ」
「生意気にも魔法って概念が存在しているくらいだしな」
「でね、魔力を持つ生命体には、魔力を蓄える器官として魔石があるわけよ」
「そういや人にもあるとか言ってたな……」
「魔石ってね……超常的な能力を使うために必要なわけ」
「まさか……キンタにスキルが有るのも?」
「そうね。スキルって魔力を消費して使うのよ。だからどうしても人族にも実装する必要があったのよね」
「魔族は魔石の他にも魔臓があるんだろ? 役割被ってねえ?」
「別物よ。例えるならば、魔石はバッテリーで、魔臓は発電機なのよ」
「発電機ときたか」
「そう。人族や魔獣なんかは、大気中のマナを取り込んで魔石に貯める必要があるんだけど、魔族はご飯さえ食べてれば、自前でいくらでも回復できちゃうわけ」
「HV車みてえな生態してんのな……なるほど納得がいったわ」
こういう話をされると、ああファンタジー世界だ、こってこてのハイファンタジーだわって思うけど、実のところはガッバガバのクソゲーみたいな世界だから困るよな……。
つうか、その魔族さんたちともそのうちコンタクトをとらねーとダメだよな。
パンちゃんは適当でいいって言うけど、そういうわけにも行かねえからな。
「そのうち魔族さんたちとも交流しようと思うが、見た目でわからねーんだよね?」
「そ、そうね……魔族は強い魔力を発しているから、それを感じ取れればわかるけど……」
「俺にできなそうなこと言うのやめてもらっていいっすかね? もっとわかりやすい特徴にしてくれてたら楽だったのになあ……」
「で、でもね? 見分けがつかないのは一部だけで、それっぽい子はほぼほぼ魔族だからさ……」
「ほぼほぼ……?」
「作品によっては人族サイドに収まるような子は……まあ、人族側に居ちゃったりするパターンもあるけど……ほら、あんたが好きそうな下半身がヘビの子とかは確定魔族よ」
「あーラミア的な……たしかに好きだわ……そうか、いるのか……ラミア……」
「そのうち出会うこともあるかもしれないわね……って、なにだらしない顔してんのよ……」
「べ、別にラミアねえねえの妄想とかしてねえし」
「ふーんだ! どうせ、あんたのちゃちな魔石じゃバカにされて相手にされないわよ!」
「なんだと〜……って、今なんて言った?」
「バカって言ったのよ!」
「おいこら、俺に魔石があるってどういうことだよ!」
「聞こえてるじゃないの……ほら、不老不死とはいえ、ある程度最適化しないと快適には暮らせないでしょ? だからこう……ちょちょっとこちら仕様にしちゃった★」
「わりとデカ目のフラグを……もののついでにみたいに消化された……うう……あたい、改造されちった……まあ、魔力が使えるなら、それはそれで便利そうだからいいけどな」
「切り替え早ない?」
……多少問題発言もあったが、パンなりにきちんと説明してくれて助かったわ。
つうかさ、動物を作らなかったらどういう問題が起きるかわかってねえよなこいつ。
どーれ、自分で気付けるよう、思考誘導してやりますか……。
「キンタたちってさ、ラウベーラが怖くて森に入れなくなってただろ?」
「そうね。あんたのおかげでそれも解決したし、狩りの革命も起きそうで何よりだわ! まさかこんなに早く成果を上げてくれるなんてねー。えらいえらいー」
くっそ、頭撫でんじゃねえよ……いじめにくくなるだろうがよ……。
「まあ、それについては良かったよな。俺も頑張った甲斐があるってもんだ。でもさ、不思議に思ったんだ」
「なによ?」
「ラウベーラが怖いのはわかるよ? でもよ、いる場所を避けようと思えば避けれるんじゃね? 居ないとこに行ったら良いじゃん」
「うーん……簡単に言うけどさ、日本でもクマとばったりとか良くあるじゃないの。察知スキルとかあるなら別だけど、普通は無理でしょうよ」
「そうだね、人の力だけだと無理だよね」
「なにを言いたいのよ……」
「俺さあ、クロベエくんの嗅覚には随分と助けられてきたわけ。地球でもさ、古来から狩りのバディとして狩猟犬を使ってたりするじゃん? 動物の力ってのは馬鹿にできねえわけよ」
「うん……うん? つまりあれよね? キンタたちにもクロベエみたいのがいれば、狩りができてたんじゃね? って話よね?」
「うん、そうだね。あと、集落見てて思ったけど、酪農の概念も無いんだろ?」
「無い……わね……」
「それってさ、ミルクをだす牛さんが、角からビーム出すやべえやつだったり、2tダンプみたいな大きさだったり……なんかもうとにかく飼えないレベルで危険だからじゃねえの?」
「う……で、でも一部……おとなしめの魔獣もいるわよ? 羊さんみたいのとか……そういうのと一緒に暮らしてる人族も……居たような、居ないような?」
そろそろ俺がなにを言いたいのかわかってきたかな……?
「この世界がバグにやられてたのはわかるよ。けどさ……もしも普通の動物もいれば、狩りはもっと楽だったろうし、まぐれで家畜を育てるやつが生まれたかもしれない……そうなれば、自力でバグから抜け出せた住人が結構居たかもしれないねえ」
「あっ あっ あっ……」
ようやく気づいたか……。
「家畜化って、普通の人間がやってやれないことは無いんだよな?」
「ええ、さっきも言ったけど、中には穏やかな魔獣もいるわ。何も全部の魔獣が物騒な攻撃してくるわけじゃ無いのよ? 魔力が少なくて弱い魔獣だっているもの」
そういうの居るなら集落の近くに配置しろよ……それだけで今よりずっとマシな世界になってたかもしれないだろ……。
多分何も考えずに適当に配置したんだろうなー。
……そういえば、さんざん切り倒しまくってる木、あれも鑑定するともれなく「魔樹」の名前が付いてるんだよな……。
……あいつ『ほとんどの生命体に魔石がある』とか、ふざけたこといってたな……。
まさか、そこらの草や苔にも魔石があって、魔物だっていうんじゃあるまいな。
流石に……でもな……パンちゃんだしな……。
……なんだか頭が痛くなってきたわ。




