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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

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第23話 動き出す集落

 もう一張のコンポジットボウ……それを渡すのは狩人じゃない。


 誰に渡すのかって? そりゃ、決まってんだろ? 生産職だよ。


「こいつはもう一張あるんだ。ザック、こっちに来てくれ」


 ザックはニート呼ばわりされてる若者の一人なんだが、手先が器用で、妙なものを色々と作ってるらしいんだよな。


 そんな奴なら、コンポジットボウの仕組みを理解して、量産の力になってくれるんじゃねえかなって思うんだ。


「え……これを俺にすか? な、なんでですか? 俺は弓なんて使ったことねえんですけど……」


 そうは言いつつも、視線はがっつりコンポジットボウをとらえたままだ。


「それさ、バラバラにしていいぞ」


「は……? なに言ってるんすか?」


「ああ、別に壊せって言ってるわけじゃねえよ。構造……その弓がどんな風に作られているかを調べてよ、お前らだけで作れるようにしてほしいんだが……頼めるかい?」


「お、俺でよければ! がんばります!」


「ザック、こいつをこうすりゃ字や絵がかける。こいつを使ってよ、そのコンポジットボウをバラして気づいたことをこうやって……こいつに書くんだ……って、お前、字は書けるか?」


「字は……シゲミチに教えてもらったから……つか、この道具すげえっすね……よくわかんねえ仕組みで線が引けるし、この白くてペラペラのも……どうやったらこんなに薄くできるのか……」


「おっと、そいつを調べるのはまた後だ」


「あ……すんません」


「で、お前にはこのデカい紙もやる」


「カミ……この薄いの、カミっていうんすか」


「ああ、そうだ。それでこっちの紙にな、弓の作り方を書いて欲しいんだ。弓の絵を描いたり、説明を書いたり……そういうのを設計図、っていうんだけどさ、鍛冶師なんかが見れば作れるようにしてほしい。いつか、誰かがそれを見て作れるようにな」


 雑に製図の真似事をしつつ説明をすると、目をキラキラとさせて嬉しそうな顔をする。


「別の誰かも作れるように……わかりました、がんばるっす!」


「後は……えっと、そこの鍛冶師さん……名前はええと……」


「ダンだ、ダンでいいし、もっと雑に喋ってくれや」


「おう! それでよ、ダン。ザックだけじゃ行き詰まると思うんだ。だからあいつだけじゃなくて、ダンにも弓を作るのを手伝ってほしいんだよ」


「……弓か……作れなくはねえけどよお……俺にできるのか?」


「この弓には鉄も使われてんだよ。鉄といえば鍛冶師の領分だ。だから、あんたにも頼みたいんだ」


「そうかあ……俺ぁよお、今日までずーっと代々、おんなじ物を作り続けてきたからよ、知らねえのを作るのは初めてなんだよ……」


「逆に考えてみろよ。ザックと二人であの弓を作れたらよ、知らねえものを作るのが初めてじゃなくなるだろ?」


「初めてじゃなくなる……」


「ああ、そしたらよ、別の何かも作れるようになる、そうは思わねえか?」


「俺たちが……知らねえなにかを作るか……はは、そんなこと考えたことすらなかったが、面白そうだな! いいぜ、やってやるよ!」


「おう、その意気だ! ついでにこの特別な矢も渡しておくから、鉄で同じように作ってみてくれよ」


「こいつぁ……なるほど、あの弓ならこんなにごっつい鏃がついた矢も飛ばせるってわけかぁ……」


 これで、量産化の種は蒔いた。


 だが、蒔いた種には水と肥料をやらねえと育たねえよなあ。


「なあキンタ」


「なんだ?」


「彼らは狩人の……いや、ここのみんなのために新しい弓の作り方を考えてくれることになったわけだ」


「そうだな、どうなるかわからんが期待しているぞ」


「でさ、それって立派な仕事だろ? 彼らには狩りでとった肉をたっぷりと分けてあげて欲しいんだ」


「そりゃ勿論だ! ザック! ダン! いっぱい狩ってくるからよ、期待しててくれ!」


 ニヤリと笑って親指立てるダン……ザックは……弓に夢中で耳に入ってねえなこりゃ。 


 さて……締めに入るとすっか。


「俺が渡した二張の弓……それはきっと、大きな肉をもたらすことになるだろう!」


「「「「うおおおおおおお!!!」」」」


 ずーっともぐもぐしてたのに、語りかけるとこれだもん。ノリが良くて最高だわ。


「それがいつになるかはわからんが、そう遠い話じゃねえだろうと……俺は思うぜ! よっし、話は終わりだ! 肉を食って食って食いまくれ!」


「「「うおおおおおおおおう!!!」」」

 

 肉といえば……パンちゃんの事すっかり忘れてたな。


 あいつどこいった……ああいたわ。顔をべったべたにして肉にむしゃぶりついてるわ……。


 さすがの奥様方もあの状態のパンちゃんには絡めねえか……つええな、パンちゃん。


「昨日狩った肉はかなりの量だから、無くなることはねえと思うけど……俺の手持ち肉も出すから遠慮せずにどんどん食らうが良いぞ!」


「うおおおおおおお!」


「手持ち肉って言葉がすげえわ!」


「さすが肉の人や!」

 

 そして……リブッカ肉がまさかの終焉を迎え、ストレージからヒッグホッグ肉を追加することとなり……謝肉祭は夜遅くまで盛り上がったのでありました。



  ◇


 肉の狂乱が終わり、すっかり静かになった広場で夜空を友にぼんやりと今後のことを考える。


 えっ? パンちゃんはどうしたかって?


『急に消えたら変に思われるでしょ?』


 なんて、変に気を回してさ、俺のテントで丸くなって寝てんのよ。


 ほんとばか、パンちゃんったらほんとばかだわ。


 テントってこれしかねえわけ。つまり、俺も眠くなったら同じとこで寝なきゃねえわけじゃん?


 べ、べつにどどどどど童貞じゃねえし? パンちゃんと一緒のてててテントで寝るくらいどうってことはねえよ?


 ただよ、明日うるせえだろうなって。


 確実によ……奥様方の餌食になるんだろうなって……ほんとパンちゃん、後先考えてねえよなあ……。


 ぶっちゃけさ、パンちゃんって黙ってりゃ美人、つーか結構好みの顔をしてるわけよ。


 だからさ……テントの中で二人きりっつうのは……まあ、その……ちょっとだけ邪な感情が湧いちゃいそうじゃん?


 それがさ……パンちゃん相手にって思うとこう……自分で自分を許せなくなりそうなんだよ……。


 だからこう、自制のためにさ、こうして外にいるわけじゃんか。なにせ、パンちゃんがさっさとテントに入っちまったからね? こうするしかねえわけじゃんか。


 ……っと、なんか冷えてきたな……上着をストレージから出して……って、うわマジかよ……ここに無いってことは、テントの中じゃねえか……。


 いや、マジだって。


 ちょーっと中に入りたかったとかじゃねえし! マジだから。言い訳乙? んなわけw


「失礼しますぜ……っと、スゥスゥと呑気な寝息立てやがっ……うっわ……」


 見てくれよ、あの腹を。


 ……肉の食いすぎで膨れた腹が、ぺろりと全開……くっそ、掻くんじゃねえ、腹を掻くんじゃねえよ……! 笑っちまうだろ!


 ふう……耐えた……! なんとか無事にテントから戻ってこれたぞ。


 あっぶねえ、女神がヘソ天で寝てる時点でアレなのに、バリボリ腹を掻くんじゃねえよ。うちのオカン思い出して笑いそうになったじゃねえか。


 はー、しっかし、なんだかんだで一週間くらい家を空けてしまったなあ。


 集落の連中とすっかり仲良くなっちまったから、名残惜しいが、家の様子も気になるしそろそろ帰らねえとな。


 帰ったら……そうだな、まずは畑を作って…後はこう、もっと快適に暮らせるように水回りをなんとか頑張ってみようかな。


 あったかい風呂だって入りたいし、やることはいっぱいだ。


 そして、また食いきれないほどに肉が溜まったら……またここの様子を見に来よう。


 その頃にはきっと、キンタ達はコンポジットボウに慣れてるだろうし、集落産のだってもしかしたら完成しているかもしれない。


 そしたら次は実践だな……キンタ達、自力でリブッカを狩れたら喜ぶだろうなあ……。


 プスー 


 うっわ……あの女神……屁ぇこきやがった……。


 ……夜空でチルりながら、エモい感じで未来予想に耽っていたのに……。


 こいつほんと……ほんと……そういうとこやぞ!!!!


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