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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

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第20話 謝肉祭

 集落に戻るとだいぶ日が傾いていた。


「今日はもう遅せーし、解体したら解散な」


「おいおい……そりゃねえよユウ。俺達がどんだけ肉を楽しみにしてると思ってんだ」


「もうどこの家もメシの支度はじめちゃってるじゃねえか。明日だ、明日の昼、ここに集まって食おうぜ」


「言われてみりゃそうだ、さっすがユウさん!」


「明日が楽しみだな!」


「だなあ!」


 盛り上がる狩人たち……おや、キンタがなにか言いたそうな顔をしているな。


「どうしたキンタ? 何か問題でもあったか?」


「いやな、もうすぐ夜になるだろ? 今からやっちまうと、終わる頃には暗くなるじゃねえか。だから解体も明日やりゃいいんじゃねえのって」


「なんだそんなことか。解体なんてすぐに終わるから見ててくれよ」


 ストレージからシカの魔獣を取り出すと、狩人たちがずらっと取り囲んでキラキラした目を向けている。


「ユウさんの解体参考にさせてもらいます!」


「デカい魔獣の解体なんて初めてです!」


「どうやって解体するんだろうなあ……」


 わりいお前たち……俺の解体方法はな~んも参考にできねえと思うぞ……。

 お前たち用のテキストはそのうち用意してやっから、今日のところは許してくれ。


 スマホを持ち、シカの魔獣をカメラに……おっとそうだ。先に図鑑を見ておかねえと。


=====


 魔獣:リブッカ 


 体長3m~6mとされるが、10mを超す大型の個体もいるらしい。

 あれよあれ、森のヌシ的なアレね。浅層のヌシなんだわ、きっと。


 コホン。


 リブッカは脂肪層に魔力を溜め込み、防御力を上げるという、身体強化のようなことをしている。

 もしも狩ろうと考えているならば、魔鉄鋼で鍛え上げた槍か、強弓が必要となるだろう。


 素材:毛皮 魔石 肉 角 蹄

=====


 うーむ……今回は比較的まともな解説が出てきたな……。


 なるほど、こいつはリブッカっていうのか。狩るのに強弓が必要とは、例のアレがまさにうってつけじゃねえかよ。


 キンタたちにとって、良いベンチマーク役になってくれそうだ。


 ……っと、すっげえ見られてる。わかったわかった解体しますよっと……。


 ピカーーーっとリブッカが光り輝き、ゴキキ……メキョキョと音が鳴る。


「おお……音がしてるな……」


「これが……解体……?」


 まあそうなるよな。だから参考にならねえつったろうが。


「俺は解体も魔法でやっちまうからな……どうだ? 参考にならねえだろ」


「これってやっぱり、練習してもできねえやつか?」


「ああ、俺にしかできねえやつだ」


「そうかなって思ったけどよお……そっかあ……」


 やっぱそうかと、しょんぼりするキンタ。


 他の狩人たちも残念そうな顔をしているが、しゃあないねん……このスマホがなきゃできねえ幻の魔法だから、俺以外だれにもできねーのよ……。


「まあ、そうしょげるな。今日のところはお前らの獲物もやってやるからよ」


「うおおお、ありがとうユウ! 血抜きだけはしといたけどよ、実はめんどくせえなっておもってたんだ」


「俺もっす! ありがとうございます、ユウさん!」


 途端に元気を取り戻す狩人たち。まったく現金で憎めねえ連中だぜ。


 ポコン!


『肉だけに?』


 うるさいですね……。


 キンタたちが狩ってきた獲物をささっと解体すると、キンタがとてもいいことを言った。


「なあユウ。お前が狩った肉だけどよ……」


「ああ、リブッカがどうした」


「リブッカっつうのか。いやな、俺達だけで食うのもアレだろ? だからよ、みんな集めてよ、謝肉祭を開いたらどうかなって」


「そうだそうだ! 明日は肉の人の謝肉祭にしよう!」


「肉の人の祭にしよう!」


「肉祭りきたー」


「「「肉の人! 肉の人! 肉の人ーっ!」」」


 なんだよ謝肉祭って! 祭りの概念はあんのかよ! まったくおめでてえ世界だなあ!


「肉の人って呼ぶなつってんだろうが……みんなを集めるのには賛成だが、リブッカだけじゃ飽きねえか?」


「初めて食う肉だからわからんが、たぶん平気じゃねえか? それによ、俺達が狩ったのも出すからよお、それも合わせてぱあっとやろうぜ!」


 なるほどそういうことなら……。


 キンタたちから肉を預かると『じゃあ、謝肉祭で』とかいってさっさと帰ろうとしやがった。


 おい待てよ、忘れもんだぞ!


「なんだよ? 肉は預けたんだからもう良いだろ?」


「羽や毛皮があんだろうがよ……ちゃんと分けて持ってけよ。矢を作ったり、毛皮もなんかにつかうんじゃねえのか?」


「ああそうかそうか! 肉の事しか頭になかったぜ! わはは!」


 キンタだけではなく、狩人たち全員が忘れてたわと笑っている。


 ほんとこいつらはよ……。


 ◆◇


 ざわざわ……ざわ……


 にく……にくにく……にく……


「うわあああああ!!!!」


 妙な気配に飛び起きて、テントから顔を出すと多くの人たちに取り囲まれていた。


「あ! 肉の人だ!」


「「「おはようございます!!!」」」


「おはようございます……」


 また今日もかよ……つうかなんだよ……まだ七時前じゃねえかよ……昼からやろうぜって言ったじゃねえか……ああ、はいはいはいはい、今出ますから! だから肉コールすんのやめろ!


「……おうこらキンタ、随分早く来やがって、どういうこったよ」


「いやほら、準備っつうのがあるだろ? 今からやりゃあ、ちょうどいいだろ」


「くっ……そうだな」

 

 考えてみりゃ会場の設営もあるし、肉だって焼かねえといけねえしな……そうか……俺が悪かったのか……。


 配布の時と同じく板と葉っぱを出し、そこに解体した肉を並べていく。


 こうしておくと、調理係がこっから持っていって焼いてくれるらしい。


 まずは主役となるリブッカ肉を積み上げてっと……ううむ、なかなか圧迫感があるぜ。


 あとは、その周りにキンタたちの成果を並べてっと……うーん……なかなかに肉肉しい画になったな……謝肉祭にふさわしいぜ。


「じゃあ、調理は任せますので、用意が出来たらここでみんな揃って食いましょう!」


「それはいいんだけど、できた料理はどこに並べればいいんだい…?」


 うっ……言われてみればそうだ。祭りだから、みんなここで食うんだもんな。

 地べたでってのはあれだから……しょうがねえ、行ってくるか!


「並べる場所は今から作るんで、気にしないで調理を始めちまってください!」


「ほ、ほんとうにだいじょうぶなんだよねえ?」


「まかせてくださいよ! んじゃ!」


 と、駆け出そうとしたところで、ヒマそうなキンタの顔が見えた。


「おーいキンタ」


「どうした、肉になんかあったか!?」


「なんもねえよ! 俺はちょっくら木を取ってくっからよ、暇なら穴を掘っておいてくんねえ? これくらい幅の穴を三つ、体が半分埋まるくらいの深さで頼むわ」


 腕を広げ直径五十センチくらいを示すと、キンタが眉間にシワを寄せる。


「いいけどよお……何に使うんだ、そんな穴……ま、まさか俺を埋めて肉を食わせねえように……」


「しねえから! つうか入らねえだろうがよ! じゃ、頼んだぜー!」


 アホなキンタを置き去りに、クロベエを呼んで森まで急ぐ。


 徒歩だとそこそこ時間がかかったが、クロベエの足ならあっという間だな!

 

「おっと、クロベエこの辺りでいいぞ」


「中までいかなくていいの?」


「ああ、木を何本か切るだけだからな。ここらで十分だよ」


 ええと……手頃な枝はっと、こいつでいいか。 


 バットくらいの枝を拾い、木を叩いて強度を確かめる。


 ……いけそうだな。


 スマホを先端に括り付け、木に向かって軽くスイングする。


 ズン


 ズズズズズン……


 おっとあぶねえ!


 やっぱこのやり方だと俺に倒れてくるか……まあいざとなったらスマホでガードできるし平気やな!


 ポコポコ、ポコポコとメッセが届いてる音がするが、無視をしてどんどん木を切り倒していく。


 いやあ、新武器【スマホアックス】もなかなかいいじゃないの。


 ついつい楽しくなっちまって、森の入口にちょっとした広場ができちまったぜ……あ、そうだ。狩人たちのキャンプ地にすりゃいいじゃん。


 どうせあいつら、今後はもっと奥に行くようになるんだし、森の近くにベースがあったら便利やろ。


 そうだ、そういうことにしよう!

 

「うーし、こんだけありゃあ足りねえってこたねえだろ。じゃ、いくかクロベ……ってなんだ!?」


 クロベエに跨り、さあ行くぞと思った瞬間、襟のあたりをぐいっと後ろに引っ張られた。


 くっそ、新手の魔獣か? 浅層だからって油断しちまった……って……。


「もーー!!! なんでメッセみないの! 無視しないでよーー!」


 涙目でぷんすこブチギレたパンちゃんが立っていた。


 えぇ……?


「いや……どうせ『スマホで木を切るな』って書いてたんだろ? だから別に後でいいかなって」


「たしかにそれも送ったけど、別件の用事だってあったんだから!」


「ああ、そりゃ悪かった……って肉食べたいってスタンプ連打してるだけじゃねえかよ」


「リブッカよ! リブッカ! あんな美味しいお肉、あたしだって食べたいでしょう! 食べたい! 食べたい! 食べたい~~~!!」


 地面に横たわりじたばたじたばたするパンちゃん。


 おもちゃ売り場の子供かよ!


「まあ……世話になってっから、食わしてやりてえけどよ、連れてったら誰だってなるだろ? だから後で――」


「だめ!!!! 私も謝肉祭に出るからね! お肉のお祭りなんて最高じゃないの!」


「や、だからさ……」


「いくからね!」


「くっ……わーかったよ! 連れてったらいいんだろ!」


 まいったな……これ、どうすりゃいいんだよ……。


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