第19話 これが俺の原点だ!
地響きを立てながらこちらへ向かってくるシカ。まるで重機が猛スピードで迫ってきているかのようだ。
スマホ槍の出番……いや、出している暇はない……が、大丈夫。
ふ……ヒッグホッグ……ラウベーラ、俺がどれだけの強敵を屠ってきたと思ってんだ。
これまでの戦いを頭に浮かべながら、スマホをギュッと右手で握り、左手をそっと添えて前に突き出した。
これが……俺の原点……
ズンッ
……スマホリフレクトパンチだ!
キィン……
謎の金属音が鳴り響き、シカの魔獣がズルリと地面に倒れ伏す。
「ふう……助かった。なんとかなったな……ってあれ?」
キンタが俺を指差し固まっている……いや、キンタだけではない、狩人全員が口をパクパクとさせて目を見開いている。
「おーい」
「あ……な……なな……ど……どどど……」
あー……これ、やっちまったやつか? これ、完全に俺を見てビビってるやつじゃん……。
まあしゃあねえわな。自分たちの矢が通用しねえような相手をさ、ワンパンで伸しちまったんだもん。化物にしか見えねえわな。
「な……なあ……」
怯えて声が出なくなってら……さっきまでの和やかな空気が懐かしいぜ……せっかく、友達になれたのにな……早まっちまったわ……。
「なあ! ユウ! 今のどうやったんだ! 教えてくれ! 頼む!」
……って、あれえ?
「俺にもお願いします!」
「お、おお俺にも教えてください!」
他の狩人たちも俺を取り囲み、興奮気味に教えろ教えろとせがんでいる……待って、ドン引きされてなかったのは嬉しいけど、待ってってば。
「今のアレは……その……俺にしか出来ないんだ……悪いが無理だ」
「やってみねえとわからねえだろ! 頼むユウ! 教えてくれ!」
やらなくてもわかるの! あんなの俺もできないの! できるのはスマホさんだけなの!
そう言えたらどんなに楽なことか……こんな魔法みたいなこと、ただのおっさんにできるはずねえだろ……これだ!
「しょうがねえから教えてやるが、俺は魔法が使えるんだ」
「マホ……?」
「魔法だよ、魔法。魔力を便利な力に変える技だ……例えばこうやって、物をしまうことができる」
シカの魔獣に手を向け、思わせぶりに「エイ」といって収納してみせた。
「は?????」
「魔獣が消えたぞ……」
「消えたんじゃないよ、しまったんだよ。ほら」
今度は取り出してみせる。
「な、なな……なにをやったんだ?」
「だから魔法だつってんだろ! 俺は魔力を使ってこういうことができるの!」
「魔力って魔石から出てるやつか……?」
「そういえば……婆ちゃんの婆ちゃんの婆ちゃんが、指に明かりを灯せたらしい……」
「じゃ、じゃあ練習すれば俺たちにも……?」
マジかよ魔法使い居たのかよ!
ポポコン!
『……マジだわ。突然変異で生まれたみたい』
『けど、周りからスゲエと言われたくらいで、とくに広まらないまま終わったみたいね……』
バグってやつぁほんとによお……。
じゃあ、やってやれないことはないのか……でも、めんどくせえから今のところは誤魔化しておこう……。
「お前らは……狩人だから、きっと無理だろうな」
「なんでだよ! 弓持ってちゃダメなのかよ!」
「知らねえよ。ただ、魔法使いには生まれ持った適正が必要だ。キンタにそれがあるとは思えねえ」
「くっ……!」
だって馬鹿そうなんだもん。リットちゃんなら使えそうだけど、キンタじゃなあ。
「適正かあ……ユウって、やっぱすげえんだな!」
「ユウさんはんぱねえぜ!」
「マホウもすげえが、あのパンチも凄かったぞ……どんな鍛え方してんだろうな……」
クッ……やめてくれ……なんかこう……罪悪感っつうか、騙してチヤホヤされてるみたいで……すっげえアレだから……!
「ところでさ……ユウ、お前のその腕、平気なのか?」
「うん? 俺の腕がどうしたよ?」
キンタに言われて見てみると、ヤベェ色になってバッツンバツンに腫れ上がっていた。
うわ……折れてるやつだこれ……。
痛みってやつはさ、気づくと強くなるっていうよね。
うん……急にめっちゃ痛くなってきた……!
おい、パンちゃんどういうことだよ!
ポコン!
『私の加護があるのはスマホだけだし当たり前よね』
この間は平気だったじゃん!
『スマホの加護が及ぶのは、直接スマホに触れている箇所だけよ。そっと添えた左手はノーガードだから……ちょっとシカに掠っただけでそうなっちゃうわけ』
ちくしょう……そういう罠があったのかよお……言ってくれよな、マジでさあ……。
『あんたにもあたしの加護がかかってるからそれで済んだのよ? 無かったら今頃ミン……そ、想像したら怖くなっちゃったじゃないの!』
知らねえよバカぁ!
うおおお……スゲー痛くなってきた……顔が涙と鼻水でぐちょぐちょだぁ……けど、ドヤり倒しちゃったから、今さら弱気なとこは見せらんねえ……。
「く、くしゅりぬっておけばなおりゅ!」
畜生、痛くて呂律がまわらねえ。
「ほんとか……? かなり辛そうだけどよ……なあ、それ折れてるんじゃないか?」
「おれてないでしゅよ? へーきへーき!」
「平気そうには見えねえが……まあ、ユウがそういうなら……」
く……なんかあったよな……ファンタジー的な回復薬……どっかでみたぞ……あ、これだ!
震える手で回復ポーションを選択し、錬成……もとい、製作する。泉の水とウルッグの角やラウベーラの肝等を使うようだ。
狩ってて良かったラウベーラ……つか、ウルッグの角ここでも使うんじゃねえかよ……マジでパンちゃんさあ。
風邪薬ですらあの効果なんだ……これならきっと……ええとこれ……あ、飲むやつ? ……うっわ、クッソ苦ェ!
クソマズポーションが喉を滑り落ちた瞬間、左手がほのかに輝き……スゥっと、巻戻るかのように腫れが引き、元の色に戻っていった。
「うおお……痛くねえ、痛くねえぞお!」
やっべえなこれ……マジもんのポーションじゃん……暇な時に量産しとこっと……。
「ユウさん……その腕……」
「そ、そんな事はどうでもいいじゃん! すぐ治るって言っただろ? ほら、まずは帰ろうぜ? たくさん肉も取れたし、肉を食いながら反省会だ!」
「「「うおおおおおおおお!!!! 肉だ肉だ肉だああ!」」」
ふう……なんとかなったぜ……。




