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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

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第19話 これが俺の原点だ!

 地響きを立てながらこちらへ向かってくるシカ。まるで重機が猛スピードで迫ってきているかのようだ。


 スマホ槍の出番……いや、出している暇はない……が、大丈夫。


 ふ……ヒッグホッグ……ラウベーラ、俺がどれだけの強敵を屠ってきたと思ってんだ。 


 これまでの戦いを頭に浮かべながら、スマホをギュッと右手で握り、左手をそっと添えて前に突き出した。


 これが……俺の原点……


 ズンッ


 ……スマホリフレクトパンチだ!


 キィン……


 謎の金属音が鳴り響き、シカの魔獣がズルリと地面に倒れ伏す。


「ふう……助かった。なんとかなったな……ってあれ?」


 キンタが俺を指差し固まっている……いや、キンタだけではない、狩人全員が口をパクパクとさせて目を見開いている。


「おーい」


「あ……な……なな……ど……どどど……」


 あー……これ、やっちまったやつか? これ、完全に俺を見てビビってるやつじゃん……。


 まあしゃあねえわな。自分たちの矢が通用しねえような相手をさ、ワンパンで伸しちまったんだもん。化物にしか見えねえわな。


「な……なあ……」


 怯えて声が出なくなってら……さっきまでの和やかな空気が懐かしいぜ……せっかく、友達になれたのにな……早まっちまったわ……。


「なあ! ユウ! 今のどうやったんだ! 教えてくれ! 頼む!」


 ……って、あれえ?


「俺にもお願いします!」


「お、おお俺にも教えてください!」


 他の狩人たちも俺を取り囲み、興奮気味に教えろ教えろとせがんでいる……待って、ドン引きされてなかったのは嬉しいけど、待ってってば。


「今のアレは……その……俺にしか出来ないんだ……悪いが無理だ」


「やってみねえとわからねえだろ! 頼むユウ! 教えてくれ!」


 やらなくてもわかるの! あんなの俺もできないの! できるのはスマホさんだけなの!

 

 そう言えたらどんなに楽なことか……こんな魔法みたいなこと、ただのおっさんにできるはずねえだろ……これだ!


「しょうがねえから教えてやるが、俺は魔法が使えるんだ」


「マホ……?」


「魔法だよ、魔法。魔力を便利な力に変える技だ……例えばこうやって、物をしまうことができる」


 シカの魔獣に手を向け、思わせぶりに「エイ」といって収納してみせた。


「は?????」


「魔獣が消えたぞ……」


「消えたんじゃないよ、しまったんだよ。ほら」


 今度は取り出してみせる。


「な、なな……なにをやったんだ?」


「だから魔法だつってんだろ! 俺は魔力を使ってこういうことができるの!」


「魔力って魔石から出てるやつか……?」


「そういえば……婆ちゃんの婆ちゃんの婆ちゃんが、指に明かりを灯せたらしい……」


「じゃ、じゃあ練習すれば俺たちにも……?」


 マジかよ魔法使い居たのかよ!


 ポポコン!


『……マジだわ。突然変異で生まれたみたい』

『けど、周りからスゲエと言われたくらいで、とくに広まらないまま終わったみたいね……』


 バグってやつぁほんとによお……。


 じゃあ、やってやれないことはないのか……でも、めんどくせえから今のところは誤魔化しておこう……。


「お前らは……狩人だから、きっと無理だろうな」


「なんでだよ! 弓持ってちゃダメなのかよ!」


「知らねえよ。ただ、魔法使いには生まれ持った適正が必要だ。キンタにそれがあるとは思えねえ」


「くっ……!」


 だって馬鹿そうなんだもん。リットちゃんなら使えそうだけど、キンタじゃなあ。


「適正かあ……ユウって、やっぱすげえんだな!」


「ユウさんはんぱねえぜ!」


「マホウもすげえが、あのパンチも凄かったぞ……どんな鍛え方してんだろうな……」


 クッ……やめてくれ……なんかこう……罪悪感っつうか、騙してチヤホヤされてるみたいで……すっげえアレだから……!


「ところでさ……ユウ、お前のその腕、平気なのか?」


「うん? 俺の腕がどうしたよ?」


 キンタに言われて見てみると、ヤベェ色になってバッツンバツンに腫れ上がっていた。


 うわ……折れてるやつだこれ……。


 痛みってやつはさ、気づくと強くなるっていうよね。


 うん……急にめっちゃ痛くなってきた……!


 おい、パンちゃんどういうことだよ!


 ポコン!


『私の加護があるのはスマホだけだし当たり前よね』


 この間は平気だったじゃん!


『スマホの加護が及ぶのは、直接スマホに触れている箇所だけよ。そっと添えた左手はノーガードだから……ちょっとシカに掠っただけでそうなっちゃうわけ』


 ちくしょう……そういう罠があったのかよお……言ってくれよな、マジでさあ……。


『あんたにもあたしの加護がかかってるからそれで済んだのよ? 無かったら今頃ミン……そ、想像したら怖くなっちゃったじゃないの!』


 知らねえよバカぁ!


 うおおお……スゲー痛くなってきた……顔が涙と鼻水でぐちょぐちょだぁ……けど、ドヤり倒しちゃったから、今さら弱気なとこは見せらんねえ……。


「く、くしゅりぬっておけばなおりゅ!」


 畜生、痛くて呂律がまわらねえ。


「ほんとか……? かなり辛そうだけどよ……なあ、それ折れてるんじゃないか?」


「おれてないでしゅよ? へーきへーき!」


「平気そうには見えねえが……まあ、ユウがそういうなら……」


 く……なんかあったよな……ファンタジー的な回復薬……どっかでみたぞ……あ、これだ!


 震える手で回復ポーションを選択し、錬成……もとい、製作する。泉の水とウルッグの角やラウベーラの肝等を使うようだ。


 狩ってて良かったラウベーラ……つか、ウルッグの角ここでも使うんじゃねえかよ……マジでパンちゃんさあ。


 風邪薬ですらあの効果なんだ……これならきっと……ええとこれ……あ、飲むやつ? ……うっわ、クッソ苦ェ!

 

 クソマズポーションが喉を滑り落ちた瞬間、左手がほのかに輝き……スゥっと、巻戻るかのように腫れが引き、元の色に戻っていった。

 

「うおお……痛くねえ、痛くねえぞお!」


 やっべえなこれ……マジもんのポーションじゃん……暇な時に量産しとこっと……。


「ユウさん……その腕……」


「そ、そんな事はどうでもいいじゃん! すぐ治るって言っただろ? ほら、まずは帰ろうぜ? たくさん肉も取れたし、肉を食いながら反省会だ!」


「「「うおおおおおおおお!!!! 肉だ肉だ肉だああ!」」」


 ふう……なんとかなったぜ……。


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