第17話 生まれ変わる狩人たち
狩人たちのところに戻ると、クロベエを取り囲んで狩りのコツを聞いていた。
「ぴょーんと飛んでね がぶっとやるんだ」
「なるほど……」
なるほどじゃねえよ。お前それできんのかよ。
そんなことより……。
「なあキンタ、ちょっとこれを使ってみてくれないか?」
「ん? おお! ずいぶんと綺麗な矢だな!」
「これは羽根が三本ついているんだ」
「三本? よくわからんが……どれどれ……」
丁度良いところにロップが現れた。やれ! キンタ! 君に決めた!
「おりゃあ! 肉ゥ!」
気合十分にキンタが射った矢は、シュッときれいな風切り音を立て、真っ直ぐにロップの首筋に吸い込まれていった。
ふわりと倒れるロップ。
「え? ええ!?」
びっくりするキンタ。
「うおお? おおおお?」
周りもびっくり……いや、なんか戸惑ってんな。
「ユウ! これはどういうことだ!? なんつうか……矢が俺の言う事を聞いたぞ?」
言うことを聞いたか、なるほどおもしれえことを言うな。
「ここの羽根さ、矢羽根っていうんだけど、こいつを三枚にするとさ、まっすぐ飛びやすくなるんだよ」
「へえ! 矢についてる羽根ってそういう意味があったのか」
「いや、知らないでつけてたのかよ!」
「昔から矢には羽つけろって言われてたんだよ。でも、なんでかまでは誰も知らなかったと思うぜ」
狩人たちがそうだそうだと言ってる……まじかあ。
なに? かっこいいからだと思ってた? まあ……俺も子供の頃はそう思ってたけどさあ。
どうせさ、矢に羽つけろってのは、パンちゃんが雑に狩りの概念を伝えたとか、そういうのが原因だろうな。だからだーれも意味を知らないまま適当にやってたんだろうな……。
ポコン!
『ち、違うし!』
なんか俺も悲しくなるから、わかりやすく答え合わせすんのやめようや……。
「俺はもうちょっと矢を作っておくから、向こうで練習がてら狩りをしててくれ」
一人一本ずつ三枚羽根の矢をわけてやると、狩人たちは嬉しそうに走って行った。
こらこら、そんなにはしゃいだら獲物が逃げるだろ……。
取りあえず、サンプルとして一人五本ずつ作って渡せば良いかな。
あとはそれを元に自作してもらったらいいしな。
「というわけで、クロベエ頼むぜ」
「おー まかせろ」
クロベエに追加のクッカを狩ってきて貰い、多めに六十本くらいの矢を作った。
矢羽根用に狩ってもらったクッカは全部で五羽。
おかげで鶏肉と魔石も手に入ったぜ。
魔石はありがたいし、なにより鶏肉だよ、鶏肉。ヒッグホッグはうめえけど、毎日じゃ飽きるからな。そろそろ他の肉も食いたくなってたから嬉しいぜ。
ふぁあ……しかしねみいな……ここんとこ、早起きしっぱなしだったからなあ……ちょっとお昼寝でも……するかあ……ちょっとクロベエこっちきて……そそ、そのまま……スヤァ……。
……
…
む……うるせえな……ああ、あいつら帰ってきたのか……。
だいたい一時間は寝れたかな? クロベエ枕のお陰でぐっすり眠れたわ。
「ユウ、この矢すげえな! 最高記録だぜ!」
嬉しそうなキンタの声にどれどれと見てみれば、おおー、一人三羽はとってるじゃないか!
「やるじゃん!」
「最初はちょっとずれてたんすけどね、何度か試すうちに結構当たるようになったんすよ!」
若い狩人が興奮気味に獲物を見せてくれた。
「でも……何人か矢を無くしちまって……」
「俺も……無くしちゃった……」
しょんぼりする狩人たち。まあ、そう落ち込むんじゃねえ。
「これはさ、羽が増えただけで普通の矢と一緒なんだぞ」
「一緒?」
「ああ、一緒だ。それにほら、一人五本ずつ作っといたからさ、受け取ってくれ」
狩人たちに五本ずつ配ると、わあっと声を上げて喜んでいる。
そういうのはむさ苦しいおっさんたちじゃなくてですね、かわいいエルフのお嬢さんたちにやって欲しかったですね。
「で、今言ったように、作り方は今までの矢とほとんど一緒だからよ、これからはこれを参考にして作ったらいいさ」
「おお……だができるかな、俺たちに」
「今まで矢を作れてたんならできるさ。材料だって、クッカの羽根を使えばいいんだから、肉のついでに作れるだろ」
ぶきっちょさんは、大工さんなり、鍛冶屋さんなりに頼んだらええ。
「なあ……これだけやれるようになったんだ、今なら森の東に居るあいつらも……」
「おお! そうだな! ユウさんが狩った肉ほどじゃ無いがあれもデカい!」
何やらデカい肉、デカい肉と盛り上がりだしたので詳しく聞いてみると。
「俺たちが森の奥に行かないという話はしたよな」
そう言えばそんなことを言ってたな。
「それはこの辺りに居るクッカやロップでも十分だから……いや、嘘は良くないな。
少し奥に行くとさ、でかい魔獣が出るからなんだよ……」
まあ、そんなこったろうと思ったよ。
「昔からさ、狩人たちに伝わってんだよ『森の奥には大型の魔獣が居る。あんなの無理だから、だまってロップとクッカ狩ってようぜ』って……」
「そうそう。爺さんも、親父も、俺だって、まあ……ロップでいいかって行こうとは思わなかったんだよな」
「でも、この矢があれば!」
「ああ、狩れるんじゃねえかって!」
おっと、これは……パラメータが修復された影響だろうか、代々、誰も行こうと考えなかった森の奥へいって、大物を狙おうとしてるぞ。
「新たな矢を手に入れ、狩りの腕が上がった俺たちなら奥の大型もいけるんじゃねえか? なあ、ユウ。どう思うよ」
どう思うっつわれてもな……ぶっちゃけ素人なんだからわかんねえんだよな……。
くっ……すっげえ期待に満ちた顔をしてる……わかんねえとは言えねえ空気だ。
とりあえず……必殺『まずは現地を見てみましょう』だ!
「ふむ……まだ日は高い。よし、キンタ。とりあえずその獲物とやらを見せてくれ」
「おお……さすがはユウだ! ようし、お前らいくぞー!」
「「「おーー!」」」
ふう……とりあえず問題を先送りにできたぜ……。
でもまあ……ラウベーラほどやべえ魔獣じゃなさそうだし、なんとかなんじゃねえかな……なるよね?




