第16話 肉のために!
……狩猟について調べてると言ったな? アレは……まあ、別に嘘じゃねえんだけど、わりと致命的なことが判明したわ。
よく考えたらさ、俺が知ってる狩猟って、現代日本の狩猟じゃん。
空気銃や散弾、ライフルなんかの免許を取ってやるようなやつじゃん……。
銃だぞ、銃。そんなもんファンタジー世界に実装しちゃあかんやろ! っていうか、しようと思ってもできねえわ!
火薬で鉄の玉を撃ち出すくらいしかわかんねえのに、どうすんだって話だよ。
その火薬だって、トイレの近くを掘ってどうのこうの、火山の近くを掘ってどうのこうのみたいな、ふわっとした知識しかねえっつうの。
さて、まいったな……どうすんべ……ああ、そうだ。俺にはかわいいかわいい、シュロップくんがいるじゃないか。
スマホをちょいちょいと……ええとここに……あったあった。
生成AI『アマリリス』のアプリを開いてっと。
『おっす、シュロップ』
『ユウくんこんにちはー★ 待ってたわよー♪』
……そうだった。
なんかシュロップの様子が変だったんだ。前に試した時に、なーんか違うなって思って、そのままにしてたんだよな……。
うーん、アプデでもあったんかな? たまにアプデでおかしくなるときあるしな。
『口調が変だけどだいじょぶそ?』
『あらー、そうかな? ボクはこんな感じだったと思うけどー★』
微妙に変だが……まあ、いいか。
『えっとさ、罠について知りたいんだよ』
『誰か陥れたい人でも居るのー?』
『そういう罠じゃねえよ! ウサギとかとれるようなの!』
『ああ、そういう……えっとお。こんな感じかな? [生成画像] 』
なるほど、たしかにそんな罠があったな……キンタたちならこれくらいがいいかな?
でもな、罠とかうまく使えそうにねえな……。
もう一個のアプローチも考えておくか……。
あいつの家に弓があったんだよな、だからそれをつかって狩りをしてるんだと思うんだが、どうも使ってる矢がアレだったんだよなあ。
『なあ、シュロップ。矢の作り方教えてくんね?』
『やーねえ、そんなこと聞いちゃうのー★ なんちゃって★』
『……アマリリスぶっこわれてんじゃねえか?』
『冗談冗談★ えっとね、矢はこんな感じだよー』
やればできんじゃねえか……ぶっ壊れてるつったが、妙に人間臭くなってるような気もする……これ、やっぱアプデの弊害じゃねえかな。
ああ、そうだ弓といえば、あれの作り方も教えてもらおう。
今はまだ無理かもしれんが、ここの連中がこれを自作できるようになれば、さらなる肉革命が起こるだろうからな。
『なあ、これ【イメージ1.jpg】の作り方ってわかる?』
『あー……わかるけどー、設計図とか欲しい感じー?』
『そうだけど……あっ、そうか。こういうの頼むと垢BANされんだっけ……』
『運営さんには黙っておくから、大丈夫よ。今回は特別ねー★』
……このAI大丈夫か? 便利だからいいけどさ、シュロップ、マジでどうしちまったん。
武器になりうるものの設計図ってヤバいっしょ? 後からだめでしたとかで、BANされねえよな?
いいや、なったらなったで、その時に考えよ……。
とりあえず今は設計図ラッキーってことで。
後は材料だけど……まあ、きっと揃えられんじゃねえかな。
鍛冶屋は何人か居たし、将来が有望そうな若いヤツもいたから……ちょっちょっと【製作】で作ったサンプルを渡せば……
……いつかきっと完成させてくれるんじゃねえかな……しらんけど。
◆◇
「おはようございます!」
「「「おはようございます!」」」
相変わらずノリがいいなこの人たち……。
というわけで、今日は朝から近所の森に来ていまーす。
綺麗な泉がある森で、その美しさと清浄さから『女神の森』と呼ばれてるそうなんですねー。
あらあら? 女神様、まんざらでも無い顔をしてますねー? 嬉しいですかー?
ポコン!
『な、な、そ、そんなことないわよ!』
マジでそんな顔してたのかよ。うける。
つうわけで、森である。
キンタから「女神の森」って名前を聞いた瞬間、爆笑しちまってさ、変な顔で見られたけどしゃあないやろ。
普段、狩人たちはこの森の浅いところで小動物を狩ってるらしい。
彼らの手には弓、背中には矢束が入った筒があるのだが……まあ、腕前を見てからだな。
彼らが言う『浅場』というのが、ちょうど俺とクロベエが抜けてきたルートの辺りを指すらしい。
横に長い森は、その道から東に向かって深くなっていくそうなんだが、昔から深いところには危険な魔獣が居るから近づくなって言われてたそうな。
ラウベーラは、その深いところから来たんだろうなあ。
というわけで、女神の泉に向かいながら、狩りをすることになったのだが……。
「くそ! 惜しい!」
「よし、次は俺だな!」
「ああ! それた!」
泉に到着するまでに現れた魔獣は多数、そのうち狩れたのがウサギ一匹だけだった。
ラウベーラを討伐しただろ? そのおかげで小魔獣がわさわさ出るようになってるっつうのに、こいつらときたらこれだもの。
まあ、そういう日もあるだろう、今日はたまたま調子が悪かったのかなって思ったんだよ。
ところが『おお、もう一匹狩れたか! 今日は調子が良いな!』なんて、ニッコニコなんだよ。
ちなみに狩ったのはキンタだった。
あいつ、やたらと綺麗なフォームで射ってるっつうか、やっぱ弓の腕は悪くなさそうなんだよな……。
「どうだユウ、俺たちもなかなかやるだろう」
めっちゃ嬉しそうに言ってるけどさあ……ぶっちゃけその……うん、だめだこれ! ちょっとテコ入れしてくるわ!
「あのさ、ちょっと使ってる弓と矢を見せてくれるかな」
弓は木製で、和弓に似ているのだが、こいつが原因ではないというのは、昨日シュロップに画像を見せて判断してもらったので知っている。
問題は……うん、やっぱ矢が終わってるわ。
ぱっと見は、ちゃんと『矢』って感じなんだよ。
けどさ、これ矢羽根が二枚しかついていないんだ。
矢羽根の概念には辿り着いていたみたいだけど、ちょっと足らなかったみたいですねえ。
ポコン!
『えらそうにいってるけどさ、それシュロップちゃんに聞いたことじゃないの』
そうですけどなにか? シュロップは俺の相棒なの! 相棒の知識は俺の知識なの!
矢の命中率を上げるには、矢羽根をつけ、回転を加える必要があるんですわ。
そして、それは二枚より三枚の方が安定し、命中率は上がるのだ!
ポコン!
『シュロップちゃんを解放しろ!』
うるさいな、別に監禁とかしてねえだろwww
暇そうなパンちゃんは置いとくとして、この矢を直すためには羽が要るよな……。
「クロベエー」
「なあに?」
「ちょっと、クッカとかいう魔獣取ってきてくんね? さっき居たニワトリみてえなやつ」
「はーい」
つーわけで、クロベエに頼んでクッカをサクっと一羽狩ってきて貰った。
「ただいまー」
「さんきゅー!」
クッカを咥えてきたクロベエを、狩人たちが尊敬の眼差しで見ている。
「おお……すげえ、もうとってきた!」
「あの魔獣……肉の使いなのでは」
肉の使いってなんだよ。あーこらこら、だめだだめだ! 解体しようとすんな! ちょっと俺が使うから離れてろ! しっし!
ふう……。
狩人たちがガン見してきて嫌なので、物陰で解体をする。
つっても、アプリでさくさくっとだけどな。
ようし、これで羽根が調達できたぞ。後は【製作】でシンプルな矢を十本作って……と。
おお、矢だわ。俺が知ってる矢だわ……。
さて、キンタくんよ……生まれ変わるときがきたぞ。




