第14話 ウィーンウィーン自動で肉を配るマンダヨー
つーわけで!
「では交換を始めます……が! 文字を書ける人はいますか?」
ずっこける住人たち。
そういうノリどっから覚えてきたんだよ……あれか? パンちゃんか? アセットにそういうノリをするモーションとか入ってたりしたんか?
ポコン!
『流石に違うわよ! ここの人らがおもろいのは私のせいじゃないからね!』
ほんとかな……つうか、カジュアルに心よむんじゃありません!
ざわめく会場……「おい、文字だって」「文字かよマジかよ」とか「お前わかるか?」 なんて聞こえてくんだけど……。
まさか…… 言語は普通にあるし、敬語なんてもんもあるから大丈夫だとばかり思ってたけど……文字自体存在しないってパターンか?
うわ……流石に文字からだと……めんどくせえ……そうなったら、どうしよう? 俺に合わせて日本語を教えることになるけど……と、思っていたら手が上がった!
「……俺が書けます!」
手を上げたのは、遠巻きに見ていた若者のグループの一人だった。
うおお…… 文字があった! よかったあ……つうか、さっそく学者系の若者が役に立ったじゃねえかよ。
フラグ回収クソ早過ぎない?
「おお……よくぞ手を上げてくれた……君、名前は?」
「俺はシゲミチ……です」
しげっ……近所の爺さんと同じ名前じゃねえかよ……キンタもそうだったけど、日本のそこらに居そうな名前なのはなんなんだよ。
あ、やべえ……通貨すら無い、文字が必要なさげな環境でどうやって文字を覚えたの? っていう、つっこんじゃダメそうな疑問が頭に浮かんでしまった。
うん……なんかこのネタに触れると面倒な思いをする予感がする。
いつか、パンちゃんがぽろっと言うまで、気にしないでおこう……。
「よし、シゲミチくん。君には誰が何と交換したかを書いて欲しいんだ。話と交換する人は、仕事内容か、特徴でも書いといてくれたらいいや」
ポケットから手帳とペンを出して渡すと、さらさらと試し書きをしてびっくりしていた。
まあそうだろうな。だってこれ、上着に入ってた地球産の私物だもん。普通にオーバーテクノロジーやろ。
「これはなんですか? こんな道具は初めてみましたよ! 普段、俺は板に炭で……」
「あーだめだめ! その話は終わり! そんなん始めたら、いつまで経っても肉を配れなくなるぞ!」
「あああ……くっ……そうです……ね!」
ギリギリのところで肉が勝ったようだ……やはり、この集落を掌握するには肉だな!
というわけで、準備が整ったので、交換会を始めることとする!
「んじゃ、まずは野菜と交換する人からはじめまーす! ここに来て俺に野菜を渡してね。そしたら、向こう行って葉っぱごと肉をもらってってくれ」
……と、言い終わった瞬間、ズラッときれいに並ぶ住人たち。
やればできんじゃねえかよ……っていうか、やれって言わなくてもやれてんじゃん。なんだよ、これまでのカオスはよ……。
……
…
「おー、知らねえ野菜だがうまそうだ。こんなにいっぱいありがとね。ほい、じゃあ、向こうに行って肉取ってねえ……はい、次のかたー」
俺の名は肉を配るマン。
淡々と肉を渡すのが俺の仕事だ……というわけで、野菜と交換に肉を配っているわけですけれども……既に結構な量の野菜が積み上げられていて、なかなかやべえ感じになっています。
ザル一杯分の野菜で肉三キロと交換ねーくらいに思ってたのに、みんなそろってクソでけえ木箱担いでくるんだよ。
家で食べる分は残せよって言ったらさ、家には箱でいくつもあるし、畑でどんどん採れるからって言うんだよ……。
農家は全体で七世帯くらいだったようだが、世帯じゃなくて一人が一箱もってくるんだもん、マジで仕入れに来たみたいに野菜が積み上げられてるわ。
……後でしれっと収納しておかないとな。ここの連中なら、入れるとこ見せなかったらバレんと思うし……。
しかし、これほんとやべえ量だ。
俺とクロベエ……ついでにパンちゃんを加えても、いつ食い終わるかわからんぞ……。
「みんなすげー持ってくるけどさ、こんなに貰って大丈夫なん?」
いくらなんでも、持ってきすぎだからさ、シゲミチくんに聞いてみたらびっくりよ。
「問題ないです。野菜だけはどんどん採れますからね……肉がダメでも飢えずに済んだのは畑のおかげですね」
「なるほどなあ……それにしても、マジでやべえ量だわ……」
本気で野菜はアホほど採れるらしい。
収穫期という概念がないっつうか、植えてしばらくすれば育ち切るから、今日はここ、明日は隣と、毎日どこかの畑で収穫作業をしているそうな……。
うーん、俺にはちょっと何言ってるかわかんないっすね……。
パンちゃんの雑パワーで、マジで牧場ゲーみたいになってるのかもしれん。
「ただ、肉はもうほんとダメで」
「ダメ? ラウベーラやっつけたんだし、狩りも再開されんだろ」
「ああ、違うんですよ。ダメなのはもうずっとなんです」
ため息交じりにシゲミチくんが語ったのは、もうずっと続いている肉の供給不足の話だった。
そもそもの話、ここの住人たちというのは、昔から狩りがあまり上手くないのだという……。
それも、ターゲットにしているのが小型の魔獣なので、肉はマジで貴重品なんだと。
それで……あんなに肉に飢えてるのか?
「昔から……俺たちは肉に対する憧れが強いんです……まあ、だからといって何かをしようとは思いませんでしたから、このザマなんですけどね」
「ふうん……」
おっと……この発言、ちょっと聞き逃がせないぞ。
ポヒュ!
『なあ、このシゲミチくん、バグ直ってるよね?』
ポコン!
『既にここの人たちは大半が改善しつつあるわね。ありがとう、ユウ』
ポヒュ!
『やっぱそうか。へへ、いいってことよ……ところで、肉に対する憧れって怖いんだけど、マジでなんもしてないよね?』
ポコン!
『だからしてない……あっ』
ポヒュ!
『おいこら「あっ」ってなんだよ』
ポコン!
『ち、ちがうの。私じゃないの、そう、コップがね、落ちたの』
ポヒュ!
『誤魔化し方下手くそかよ』
「その音が鳴る板はなんですか?」
「あ、やべ……な、なんでもねえよ」
ちっ、パンちゃんを問い詰めようと頑張ってたら、シゲミチくんにスマホを見られてしまった。
……追求はまた今度にしてやるよ。




