第12話 肉の巣より這い寄りし者
……ザワザワとした声で目が覚めた。
なんだなんだ……うるせえな……ああ、くそ、なんだってんだよ。
まさかラジオ体操でもやろうってんじゃねえだろうな……んな概念ねえか……
「ヒッ」
テントから顔を出して周りを見てみたら……集落の人たちがずらりとテントを取り囲んでいた……。
「お! 肉の人だ!」
「肉の人が起きたぞ!」
「謎の皮から肉の人が這い出してきた!」
「肉の巣だあ! 肉の巣から肉の人が出てきたぞお!」
なんだよ肉の巣って嫌過ぎるわ……てか、まだ五時じゃねえか! 早起きすぎねえ?
くっそ、住人がどんどん集まってきてるぞ。
マジで因習村ホラーじゃねえかよ。
やべえな、このままじゃ何もできねえ。とりあえず一度散らせるか。
「みなさんおはようございます! ”ユウ”です!」
「「「おはようございます!」」」
気合いが入った挨拶が返ってくる。
朝礼かな?
「えー、今日は肉の交換ということで、集まってくださったんだと思いますが……準備まで少しかかりますので、もうしばらくお待ちください」
「「「はい!」」」
やべえなこのテンション……ちょっと怖いんだけど……っていうか囲んだまま動かねえのやめて。
「そこにいられると何もできねえつってんの! とりあえずどっか行っててくれ!」
しっしと追い払うと、渋々と散っていった……いや、遠巻きに俺を監視してやがる……くそ、早く肉を配らねえと何が起こるかわからねえぞこれ。
……ここで飯食うのやだな。テントの中でこっそり食おう。
「クロベエ、メシは中で食おうぜ」
「あいつらに とられるから?」
「……だいたいあってる」
テントを貫通する視線にチクチクされながら朝食をとった。
時刻はまだ六時前……俺の予定だと、九時くらいからゆっくりやるつもりだったのだが……しょうがねえ、前倒しして始めるか。
あ、しまったな。なにか肉を置く台っつうか、長テーブルでも作っときゃよかったわ……今から作るか? 材料はいっぱいあるし……いや、まてよ。板で良くね? 板だったら、荷車に積んであったんだなあ、ってギリギリ思ってくれそうだし。
テントの中でクラフトすれば……まあバレないだろうな。
あいつら肉で脳をやられてるから、テントの中に板があったのねえくらいにしか思わんだろ。
【製作】を立ち上げ、板を指定する……うわ、すげえいっぱい種類があるな……うーん、少し広めのやつがいいかな……これを……三十枚もあればいいか……確定と。
ボタンを押すと、スマホがピカピカ光って板を吐き出していく。
うっわ、思ったよりデカくて重たいな! サイズ少し間違えたわ。
このままじゃテントが板で埋まっちまう。さっさと運び出さねえと。
テントと外を往復し、せっせと広場に並べていく。
ああ、いいねえ。青空市場って感じじゃん。
「あの肉の巣……どんだけ板が入ってんだ?」
「あれじゃ寝れねんじゃね?」
「いや、板の上に寝てたんじゃないか?」
「いやあの量だぞ? 板だけでいっぱいじゃねえかよ」
などなど聞こえてくるが知らないふりをする。何だよお前ら意外と賢いじゃねえか。
もっと肉のことだけ考えとけよ。
腰が悲鳴を上げそうになる頃、ようやく板を並べ終わった。
さて……いよいよ本番だ。
荷車から……肉を出すぞ。
その前に、いつの間にかストレージに死蔵されていた、お皿っぽいデカい葉っぱを板に並べていく。
「肉の人が変な葉っぱ並べてる……」
「おーい、肉の人ー、それ、肉じゃなくて葉っぱだぞー」
「葉っぱと肉まちがえてんのうける」
「うるせえなあ! この上に肉並べんだよ! 黙ってみてろい!」
お前らじゃねえんだから、間違えねえよ!
おら! 待望の肉じゃ! まだ手をつけんじゃねえぞ!
荷車から肉を取り出すと、わあっと歓声が上がった。
クソ、ちょっと気持ちよかったぞ!
肉をせっせと葉っぱに並べていくのだが……コソッとストレージから追加しながらなので、めちゃくちゃ時間がかかる……っていうか、かなりのスペースを作っちまったが、全部はけるんかなこれ……。
「おいおいおい……肉のでかさもすげえが、あの荷車も凄えな」
「だよな、どう積んだらこんだけ肉が出てくるんだよ……」
「まあ細けえことはいいじゃねえか! 今は肉だ!」
「そうだな! 肉! 肉!」
……そうだよ、お前らは肉のことだけ考えてりゃ良いんだよ。
腰が三度目の悲鳴を上げた後……ようやく肉を並べ終えた。
微妙に強化されてる体だからいいけど、これ日本でやってたら三日は動けなくなってたかもしれん……。
ずらりと並ぶ肉たち、それを取り囲む住人たち……ああ、めっちゃザワザワしてる……わかった、わーかーったよ。
開始するから! 先に説明をさせろ! こら! そこの線から前にでんじゃねえ! ようし……良い子だ、下がってろ!
くっそ、なかなかに大変だ。
こんなことなら、リットちゃんやキンタに手伝って貰えば良かったわ……。




