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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

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第11話 ニジュウナナサイ

 リットちゃんのお父さん、キンタは狩人だったそうだ。


 ゴツめだが、爽やかなスポーツマンキャラって感じ……陽の気配を感じるから、こいつは敵だね……。


 同年代っぽいのに、既婚で可愛い娘までいるから嫉妬してんだろって? う、うるせーな! そんなことねーよ! 


 食後の茶を飲みながらキンタが語っているのは、狩りにいけなくなった経緯、つまりラウベーラの討伐に向かい、敗走した後の話だ。


「ロップより多少デカいくらいだろうと行ってみれば、待っていたのは俺よりデカい、見たこともない魔獣だったわけよ。あんなのがいる森で狩りなんてできるわけがないだろ? 一人、また一人と弓を捨て、畑の手伝いに行っちまった……」 


 キンタは迷ったが、それでも最後まで粘ったらしい。


 流石に森には行けなかったが、草原に獲物が居ないかと探し回ったそうだ。


「けどよお、なんで昔っからわざわざ森に行ってるかがわかっただけだった」


「俺もそれは気になってたな。草原にも魔獣はいるのに、って思ってたわ」


「それがな、草原の魔獣にはよ、矢が当たらなかったんだよ……」


 草原で主に見かけるのは、大型のネズミのような魔獣と、鳥型の魔獣の二種類。


 そのどちらも動きが非常に早く、鳥にいたっては飛んで逃げるため、どう頑張っても矢を当てることができなかったらしい。


「今では俺も、畑で野菜を狩るようになっちまったわ……ははは」


 畑も悪くはないですよ、肉が食えないのが難点ですがと、冗談めかして言ってるけど、ほんとは狩りをしたくてしょうがねえんだろ? 


 もう一度……弓を握りたい、悔しくてしょうがねえ、そうだよなあ?


 だって、さっきから……拳をギュッと握りしめてるもんよ。


「なあ、キンタ。また弓を持つ気はあるかい?」

「……当たり前じゃねえか。俺は狩人だ。今も肉を狩りたくてウズウズしてるぜ」

「そっか、だったら明日の朝、広場に来なよ。きっといいものが見れっからさ」

「いいものねえ……はは、なんだかわからんが、楽しみにしとくぜ」


 うん? 随分親しげに話してるじゃねえかって? いやさあ、それがな……。


 鍋持って家に入ったらキンタが居たわけじゃん。マジかよって、テンパりながら自己紹介なんかしたわけじゃん。


『俺はユウっていいます。二十七歳、独身っすわ』


 って言ったらさ……。

 

『ニジュウナナサイ? なんですか、それは』

 

 こう返ってきたわけよ。

 

 そん時の俺の顔と言ったらもう、びっくりしてハニワみたいになっちまったよ。


 あまりにもびっくりしたんでさ、『ちょっと失礼』とか言って外に出てさ、パンちゃんにメッセを送ったわけ。


 ポヒュ!


『あの、住人の男性に「二十七歳です」って言ったら変な顔されたんすけど、もしかして』


 ポコン!


『……はい、暦の概念が……まだ、ありません……』


 と、返ってきたわけですよ……ああ、そうか、そうだよなあ……ってなった。


 暦って、わりと複雑な概念だからな。この世界に無いのは当たり前だわ。


 ただ、昨日・今日・明日みたいな概念はあるみたいだから、そこまで困ることはないらしい。


 それはそれとして、キンタが何歳なのかは気になったので、パンさんに聞いたら教えてくれたんだが。


 ポコン!


『こいつあんたとタメよタメ』


 と返事が届きやがった。


 くっそ、やっぱりタメじゃねえかよ! だったら敬語なんてやめだやめ! 同じ頃生まれたっぽいし、もっと砕けていこうぜ!


 そう、提案してみれば凄く嬉しそうな顔をして。


「おー、いいこと言うじゃねえか、そうこなくっちゃ! 敬語とか苦手でしょうがねえんだ」


 と、俺の手をつかみブンブンと握手をする。


 ……つか、あまりにもナチュラルにやり取りしてたから気づかなかったが、敬語の概念はあるんだな……。


 もしかすると、パンちゃんが言ってたアセットに含まれていた概念なのかもしれん。


 ぶっちゃけたせいか、キンタとはすっかり仲良くなっちまって、なんかもう俺達友達だよな、みたいな空気になっちまった。


 これだから陽の者はよお……ぐいぐいと引き込んでくるから困るぜ!


 そのままがっつりと話し込んじまって、気付けば結構遅い時間になっていた。


「おっと、もうすっかり月が昇っちまったな」


「やっべ、ずいぶんと長く居ちまった。わりい、そろそろ広場に戻るわ」


 キンタたちはこのまま泊まって行けと言ってくれたが、俺には相棒のクロベエが待っているからな。


 丁重に断って家を後にした。


 広場まで戻ると、荷車の見張り番をしていたクロベエがトコトコと歩いてきて俺の腹に顔をすり寄せた。


「ユウー おかえりー」


 尻尾をブンブンと振ってとっても嬉しそうだ。


「ただいま、クロベエ。今夜はここにテントを張ってお泊りだぞー」


「おー おもしろいとこで寝るんだな」


 手早く荷車の隣にテントを張り、毛皮に……入る前にモヤモヤを解消しておこう。


「クロベエ、ちょっと見させてもらうよ」


「うん? 別にいいけど……なにを?」


=====


 名前:クロベエ 

 職業:ネコチャン LV:4

 体力:321 魔力:120


 元は普通の猫だったが、この世界に召喚された際に加護を受け魔獣へと進化した。

 本名は『黒田官兵衛』という、とんでもない名前だが、そのせいで動物病院で爆笑されていた。


 素材:クロベエちゃんから素材を取るなんてとんでもない!


 スキル:ねこぱんち ねこきっく 気配察知 言語LV1 


=====


 へー、クロベエもちゃんとそれっぽいテキストがついて……ってテキストが俺の赤裸々なエピソードじゃねえかよ! なんで知ってんだよ!


 ポコン!


『女神は全てお見通し……って、なんでクロベエくんに言語スキル生えてんの……』


「そう、それだよ! リットちゃんとナチュラルに会話してるのに気づいてさ、ずっとモヤモヤしてたんだよ! なんかめっちゃ色々スキルあるじゃんか……」


 つうかスキルがある世界だったのかよ……。


 ポコン!


『一定以上の知能を持つ生命体にはスキルが生えるわよ』


「つまり……俺にもそのチャンスが?」


 ポコン!


『一定以上の知能を持つ生命体にはスキルが生えるわよ』


「コピペしてんじゃねえよ! 俺だって知能くらいあるわい!」


 ポコン!


『ふふっ ま、まあ……どんまい?』


「どんまいってどういうことだよ! おい、パンちゃんさん? おーい! ……くっそ!」


 はあ……明日は交換会だっつうのに、無駄に疲れちまったわ。

 

 いいやもう、今日はこのまま寝ちまえ……スヤァ……。


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