↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/143

第8話 マモ爺を呼べ!

「あの毛皮の下に肉が……」

 

「いっぱい積まれてるぞ、ありゃ……」

 

「肉……肉う……」


 集落の中央に案内された俺は、多くの人々に取り囲まれていた。


 人気者だねって? ちげぇよ……みんな口々に肉、肉と囁いてんだよ……。


 なんかもう、因習村系ホラーみてえな空気で嫌になっちまうよ。


 ほら、みてみろよ。みんなさあ、目が血走ってるんだぜ? なに? 肉ウイルスか何かに感染してるの? うっわやっべえ、バイオハザード起きてんじゃん! 


 因習村よりやべえじゃん! 祠壊してる場合じゃねえわ!


 まあ、冗談はさておきだ。


 思ったよりだいぶクレイジーな方々だったが、しっかりと野菜との交換はしたいよね。


 わざわざここまで苦労してやってきたんだぜ?


 手ぶらで帰るってのはゴメンだわ。


 しかし、このままだとどう考えてもまともに交渉なんてできねえよな。


 完全に場が混乱しちまってて、どうにもならなくなってるもの……。

 

 こういう時は……やっぱ、だれか代表の人を呼んでもらったほうが早いよな? 


 ただ集まって暮らしてるだけで、自治体みたいな概念はないってパンちゃんは言ってたけど、思ったよりマシそうだし、長老的な代表者くらいはいそうな気がするわ。


「あの、誰かここの代表者の方とかいらっしゃいませんか?」

 

 尋ねると辺りがザワザワする。


 言い方が悪かったんかな……あ、もしかして「代表者」って概念がないのかも知れん。


 やっぱ通じてないくせえな……下方修正しとこ……ええと……なんて言えばいいんだ。


「その……なんだ、ああ、そうだ、一番偉い方って誰ですか?」


「偉い……じゃあマモ爺かな…」


「マモ爺は偉そうだから、そうだな!」


「偉そうな奴ならマモ爺だな!」


「そうだマモ爺を呼べ!」


「肉がマモ爺を呼んでるぞー! 連れてこーい!」

 

 どうやらマモ爺とかいう偉そうな人がいるらしい……偉そうじゃなくて偉い人なんだけど……まあ……偉いの概念があってよかったわ……。


 血走った目で俺を取り囲む住人たちが増えていく。


 おっさんだけではなく、お姉さんたちもいるのだが……目がギラギラしてるから嬉しくも何ともねえ。


 周囲の視線におびえていると、ヨボヨボとした老人が男に手を引かれてやってきた。


 なるほど……仙人みたいに長いひげを生やしてて、確かに偉そうな顔してるな……。


「わしがマモ爺ですが……何かご用ですかな?」


 自分でマモ爺っていっちゃうんだ……。


「ええと、肉がですね、やたらと沢山あるんですが……」


「ほほう! 肉ですか! 肉ね! あーー肉か! うん! いいね! 肉! 肉なー!」


 ヨボヨボなのに肉と聞いたらこれだもんな。


 今にも死にそうな感じだったのに、めっちゃ元気になってんじゃん。


 やっぱパンちゃんって肉の女神なんじゃねえの? 肉の加護めっちゃ受けてるとかそういうアレなんじゃねえの、こいつら。


「はい。肉です」


「あなたが肉でしたか」


「そういう意味じゃねえよ! 肉と野菜を交換して欲しくて来たの!」


「野菜ならたくさんありますので良いでしょう……ところで、なんの肉をどれくらい出していただけるのでしょうか? 我々は肉にはちょいとうるさいですぞ?」


 肉にうるさいと来たか。


 まあ、あれだけ肉肉言ってるくらいだ、さぞ目が肥えてるんでしょうね。


 そういや、狩人がどうのってリットちゃんが言ってたな。


 狩猟と野菜の集落か、そりゃ肉にはうるさそうだ。


 ちょっと不安になってきたが……ヒッグホッグがだめでもラウベーラがある。


 ラウベーラは倒せなかったんだろ? その肉なら、交換品として満足してもらえるはずだ。


「あの荷車に積んでありますので、まずは見ていただければ」


 と、言った瞬間……ババっとすげえ速さで荷車の方を向いた。


 びっくりした、びっくりしたぁ! 因習村のジジイみてえだったあ!


 つーか『荷車』って言葉が通じたな……そうか、荷車は存在してるのか……いや、リットちゃんも「これなあに」って言わなかったし、おっさん達も「なんだこれ!」って言わなかったもんな……。


 だいぶ俺はこの世界をなめすぎていたようだ。


 彼らの文化レベルを少し上方修正しておいてやろう。


「肉だ……」


「マモ爺と肉に向かっているぞ……」


「囲め……囲んで逃がすな……」


 怖っ! ちょっとでも変な動きをしたら飛びかかってきそうなんですけど!


 周囲を刺激しないよう、ゆっくりと荷車に歩み寄り……かけていた毛皮をばっと大げさに外し、山のように積まれたブロック肉たちを見せてやった。


 わっ と大きな歓声が上がった。


「おおお…… これは……? ロップでも狩ってきたと思いきや……ずいぶんと食いでがありそうな肉……いや、大きな獲物を狩ったようですな!」


「すげえでっかい肉だ……」


「あの肉でけえな……ミーンなら畑一枚分必要だよな……」


「ミーンならいいよ……うちはジャモだぞ……畑が全部なくなっちまうよ……」


 心配そうに言うマモ爺に、集落の人たちが同意するようにうつむいている。


 なんかすげえこと言ってるな……肉のレートヤバ過ぎね? シャークトレードしにきたわけじゃねえんすよ? 


 あーもう、また場が混乱してきたぞ。ええい、落ち着け、落ち着けー!


「詳しくは後で話しますが、畑ひとつ分寄越せとかは言わないので安心してください」


「正気ですかな!? わしならこの肉ひとつでなんでもしちゃいますぞ!」


「正気じゃねえのはマモ爺なんよ……野菜以外に欲しいのもあるし、それに、これで終わりじゃないですから」


「終わりじゃない?」


「ええ、これからも仲良くしたいんですよ。だから、野菜でもなんでも、量が少なくたって必ずこの肉をひとつ渡します」


「おお……」


「ザルひとつのジャモでも、その肉貰えんのか?」


「ジャモは知らんけど、あげますよ!」


「うおおおお! さっそく用意しねえと!」


「こうしちゃいられねえ! 俺も行くわ!」


「今日は……このとおり、みんな忙しい。交換は明日でいいですかいの?」


「俺もそう思ってました。それと……相談したいこともありますし」


「ふむ……ならば、続きはわしの家でしましょうか。ここは少し騒がしいですしの」


 そうだな……こんな肉、肉うるせえ広場じゃ打ち合わせなんて無理だわ。


 ……ていうかさ、一番うるせえの、マモ爺だからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。