↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/146

第5話 森での出会い

 木々の間から差し込む木漏れ日……いいですよね、森の中のランチタイム。


 小鳥たちは楽しげに鳴き、深く深呼吸をすると森の香りが……しねえ。


 俺に届くのは、焼けた肉の香りだけだよ、ちくしょうめ!


「おらっ! たんと食え! まだまだあるぞ!」


「わあい! 肉! 肉! がるる!」


「わあい! ゆうありがとー」


 現実は悲しいものだぜ。

 

 ぜんぜん満足しやがらねえ連中のために、追加で肉を出してんの。


 昨夜たくさん焼いといて良かったわ。


 つか、パンちゃんさあ……クロベエより野性味を感じるのはどうなんよ。

 がるるって言ったのパンちゃんなんだぜ……。


「……!」


「どうしたクロベエ?」


 クロベエが食べるのを止め、すくっと、突然立ち上がった。


 遠くをじっと睨みつけ、耳をピクピクとさせている。


「ゆう あっちになにかいる……」


 ふこふこと口元を動かし警戒している。


 これは……よくない反応だな。


 女神ならなにか感じているのではと、パンちゃんを見ると……肉汁まみれの顔で、ニコニコと嬉しそうに微笑みながら大きな塊肉とやりあっていた。


 ……こいつはもうだめだ、ここに置いていこう。


「クロベエ、様子を見に行くぞ」


「うん……!」


 クロベエを先頭に、慎重に歩いていく。音を立てないよう、ゆっくりとゆっくりと歩いていると――


「こっちくるなー! こないでー!」


 ――必死になにかに抗う、幼い声が耳に飛び込んだ。


「クロベエ!!」


「うん! たすけなきゃ!」


 クロベエに飛び乗り、声が聞こえる方に急ぐ。


 藪を飛び越え、枝を払って潜り抜け。


 走って走って……まだまだ声の主までたどり着かない。


 時折ミシミシという何かが倒れる音や、獣の咆哮、そして幼い悲鳴が聞こえてくる。


 頼む間に合え! 間に合ってくれよ!


「きゃっ」


「ガロロロロロァ!!!」


 声が近い! もうすぐだ……って、くそっ! 


 声が聞こえるのは、十五メートル程の急な斜面の下。


 どう見てもここを下りるのは危険だし、普通に考えれば迂回をすべきだろうな。


 けど、そうしている間にも状況は悪い方へと進んでいくだろ?


 そんな暇はねえ……つうか、俺達って、だいぶ普通からかけ離れちまってんのよね!


「クロベエ、いけるよなあ!」


「まかせろー! にゅああおおおおおおお!!!」


 勇ましい声を上げながら軽やかに斜面を駆け下りるクロベエ。


 ヒャッホー! お前マジで最高だぜ!


 一気に下まで駆け下り、その勢いのまま大きな茂みを抜けると、窪地にへたり込んで震えている女の子の姿が見えた。


 女の子を追い詰めて遊んでいたのだろうか、周囲の木々が無駄になぎ倒されている。

 そして、そのすぐ近くにクマのような大きな魔獣が立っていた。


 魔獣は少女に向かって爪を振り上げていた……が、突然現れた俺達を見て、驚き固まっているようだ。


 よっしゃあ、間に合ったあ!


「このままつっこめええええ!」


「にゃおろおおおおん!!」


 クロベエが地を蹴り、魔獣に向かって突き進む。


 魔獣は慌てて迎撃体制に入るが――


「遅いぜ」


 キィン……


 ――魔獣は、誰に何をされたのか、ひとつも理解できないまま頭を貫かれ絶命した。


 ……スマホ槍で。


 ズシンと倒れ、地面に嫌なシミを作り始めたクマはとりあえず置いといて……まずは女の子の様子を見に行こう。


「お嬢ちゃん、大丈夫か」


「ヒィ……」


 ……きゅう……ぱたり。


 え……? この子……俺を見て気絶したんですけど……? 


 つよつよ冒険者のおじさんみたいにやったつもりだったけど……だめだった? ヒィって言われちゃったよ、ヒィって……。


「うぅ……クロベエ……ちょっとこの子みててくれ……俺は解体してくる……」


「うん、まかせて」


 ショックを受けたので、クロベエに少女をまかせてクマの解体をすることにした。


 まあ、アプリでやるから秒で終わってしまうけどな……。


 ……あ、そうだ、解体する前に図鑑に入れないとな……パシャリ。


=====


 魔獣:ラウベーラ 可食 体長:3m~8m


 マナを帯びた体毛は矢が通らない……そう、まさに狩人泣かせの魔獣だ。

 恐れを知らない傲慢な巨体からは、巨木をも貫く強烈なパンチが繰り出されるぞ。


 万が一……こいつと出逢ってしまったら……その時は神に祈るといい。


 助かるためじゃない、無事天国に行けるようにだ!


 肉はやや臭みがあるが、筆者はマトンみたいで美味いと思っています!

 

 ああ、そうそう熊の胆ってあるじゃん? 

 こいつも似たようなノリで胆がお薬になりますよ。


 素材:毛皮 魔石 肉 胆 


=====


 なんだこの説明文……まあ、相手はパンちゃんだからな……深く考えたら負けや。


 図鑑に登録したので、さっくりと解体してしまう。


 入手できた素材は、肉と毛皮、大きめの魔石に……なんだこのレバーみたいのグロっ……ああ、熊の胆か……。


 熊の胆か……どうすっかな……うーん、干して使うんだっけ? なんかの素材になるかもだし、とりあえずストレージの肥やしにしとこう。


 ……さて。


 女の子はまだ目覚める様子がないと。


「とりあえず、水場まで戻るか……」


 女の子をお姫様抱っこして泉に連れ帰り、毛皮の寝袋を取り出して上に横たわらせた。


 幸いなことに怪我をしている様子はなく、すぅすぅと穏やかな寝息をたてている。


 ウェーブがかかった栗色の髪を後ろでまとめた、可愛らしい少女は体格的に七歳前後に見える。


 服装はチュニックっていうのかな、ザ・村の子って感じの服を着ていて、ぱっと見た感じだと、とても健康そうだ。


 食うに困ってる様子もないし、安定した生活はできてるんだろうな。


 ギリギリ中世、むしろ縄文時代レベルに毛が生えた程度の集落だというから、どんなものかと思っていたけれど、この子を見る限りでは、そこまで酷いものではないかもしれん。


「……もしもし? ポリスマン? はい、そうです、不審者です! ええ、子供に! ええ、いまから!? はい!」


 ……真面目に考察してるっていうのに……この女神ときたらなにやってんだよ。

 

 っつうか、それじゃまるで俺がガチでヤベえ奴みてえじゃねえか!


「こら! 誤解を招くようなこと言うんじゃねえ!」


「いま警察が来ますからね! 逃げても無駄なんだから!」


「……よーしわかった。次からはクロベエと俺の肉だけ焼くわ……」


「ジョーク! ファンタジージョークですやん!」


 肉抜きを宣言した途端、涙目ですがってくる。


 ほんとパンちゃんはさあ……マジで脳が肉にやられてんじゃねえの?


「肉だけは……肉だけはお許しを……」


「ええい! うるさい! 口を開けば肉、肉、肉と、お前はお肉星のお肉姫か!」


「な、なによお肉姫って! あはははは!」


「肉の星とか嫌すぎるよな」


「流石のあたしでもそれは嫌だわ」


「「あははははは」」


 女神と二人ゲラゲラ笑っていると、それがうるさかったのか女の子が目を覚ました。


「うん……?」


「目が覚めたようだね、痛むところはないかい?」


 今度こそ、旅するイケメン冒険者みたいにできたぞ。

 何事もなかったかのようにしれっとやるのがコツね。


「ヒッ…」


 小さく悲鳴を上げ、後ずさりをする女の子。


 あれ……また怯えられてる? え、俺ってそんな厳つい顔してたっけ?


「大丈夫だよ、あの怖い魔獣は俺(・)が(・)倒したからな」


「ま、まだいるもん……ほら、そこに……いるもん! まじゅうが……いまにもわたしを食べようとしているよ……」


 俺の後ろを指さしてそんな事をおっしゃる女の子。


 後ろ……?


 あっ……。


 そこには、とても悲しそうな顔をしたクロベエがしょんぼりと立っていた……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。