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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
2章 交流するぞ

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第2話 旅の支度

「ねね、そこに畳んであるのってもしかして……」


「ふふふ……気づいてしまったか……」


「ストレージに入れないでわざわざ出してる辺り、触れてほしかったんでしょうね……」


「う、うるせーな! そんなことないわい!」


 クッソ……変に鋭いからムカつくわ。


 ああ、そうだよ。せっかく作ったんだから、なんか言って欲しいなあって出してたんだよ。


 なにをって? キャンプ道具だよ! 男の子がだーいすきな、キャンプ道具を作ったんだ! 


 パンちゃんは「近くの集落」なんて言ってたけど、ぜってー日帰りで行ける距離じゃねえと思うんだ。


 今日まで、結構な距離を探索してきたんだけどさ、人がいた痕跡というものをまったく見つけられてないんだ。


 藪を歩いた跡、伐採した跡、焚き火をした跡……人が通れば、何かしらの痕跡が残るじゃん? それがまーったくないんだ。


 丘の上から目を凝らしても、例の岩場と近所の森以外なーんも見えない。


 で、パンちゃんが「北東に行きなさい」というもんだから、丘の上からそっち方面を眺めたんだけど、何が見えたと思う?


 地平線だよ、地平線。


 となるとだ。集落までは隣町……いや、下手すりゃ隣県に行くくらい離れてるかもしれないだろ?


 確実に途中で夜を明かすことになるわけですよ。

  

「というわけで、今回ご紹介するのはこの商品です! まずはこちら、ヒッグホッグのテントからご紹介しましょう!」


「わ、わあ……結構大きいテントねー」


「大人が四人は寝れる広々とした空間、いいですよねえ」


「ヒッグホッグの皮を使っているから、防水性、通気性共によしと」


「それに頑丈なんです! なんとウルッグの体当たり程度じゃ穴ひとつ開きません!」


「すごーい! でも、お高いんでしょう?」


「勉強させていただきました! 今ならこのウルッグの寝袋がついて……」


「やすいやすぅいって、誰も止めないから終わらないわね……」


 ほんとそれ。


 ノリが良すぎて通販ループから抜け出せなくなるところだったわ。


「でも、マジでいいだろこれ。予想以上にいいのができたわ」


「集落まではクロベエちゃんの足でも一日じゃ無理だからね。作って正解よ」


「……そういう情報はさあ、もっと早く言えよな。予想通り全然近くねえじゃん」


「ち、近場とは言ったけど、近くとはいってなかったもーん」


 まったくもう……まあ、こいつはこんな感じなんだなってわかったから、もうあんまり腹も立たんわ。


「旅の用意はこんなもんでいいとして……」


 気になるのは、留守中の我が家のことだ。


 堀はあるし、柵も付けているけど、それを乗り越えられるような魔獣が荒らしに来たら……そう考えると安心してお出かけなんて出来ねえ。


 防御力だけ考えりゃ、有り余る岩石を使って防壁を作ればいいんだろうけど、見た目が厳ついのはちょっといやだからなあ。


 景観を損なわない方法で防御力を上げる……そうか、堀を広く、深くすりゃいいんだ。


 ヒッグホッグでも飛び越えられないほどに広く、落ちたら登るのが難しいほど深くすりゃいいんだ。


 というわけで【開拓】から【掘削】……からの【締固】でくるっとくるっとぽーんぽーんだ!


「ふう……我ながら立派な堀を作ってしまった」


「あははは! ばかだわ!」


 なんだこいつと、横を見ると、パンちゃんが腹を抱えて馬鹿笑いをしていた。


「そ、そんなに広くしちゃったら、あんたも出入りできないじゃないの! 出かけるとかそういう前に……閉じ込められちゃったじゃないの! あはははははは」


 なるほど、馬鹿だから馬鹿笑いしてんのか……。


 可哀想に……。


「ちょっと、なに可哀想なものを見るような目で見てんのよ!」


「いや……これな、こうすんだよ……」


 ストレージから橋を取り出し堀に渡すと、パンちゃんが鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


「必要なときだけ橋をかけりゃ、最高のセキュリティになるってわけ」


「そ、そうなんだ。へえ、あ、あんたにしてはやるわね!」


 めっちゃ悔しそうでくそうける。


 ……もっとも、空から来られたらどうしようもないが、今んとこ飛行系の魔獣はみかけてないからな。大丈夫だと思っておこう。


 そうそう、それともう一つ作った物があるんだ。


 木と魔鉄鋼で作ったスマホホルダーだ。


 ただのホルダーじゃないぞ。


 長い柄がついた特殊な形状をしたホルダーでさ、なんというか自撮り棒みたいな感じで先端にスマホをつけられるようになっているんだわ。


 何に使うって、戦闘に使うのさ。


 スマホ投げは強いが、スカしたら戻ってくるまで攻撃方法を失うという、最大のデメリットがあるわけじゃん。


 だったら、槍みたいにして突いたらよくね? これならスカしても手元にあるし!


 そんな発想から生み出されたのが、このスマホホルダーなのです。


「なによそれ? まーた変なの作っちゃってさ」


 やっべ、パンちゃんに見つかってしまった。使用目的がバレたらまたうるさそうだな……。


「あーこれね。えっと、調理器具? だよ」


「調理器具……? あ、わかった! バームクーヘン焼くやつでしょ!」


「へ? あ、ああ。そうね。そう、それ!」


 うける。よりによってバームクーヘンかよwww たしかにこんな感じの棒で焼くけどさあwww


「あたし、バームクーヘン大好き! ねえ、今度焼いてよ! 集落にね、小麦的なのあるからさ、お願い!」


「しょうがねえなあ……素材が揃ったらな?」


「やったあ!」


 まったく、オモチャみっけた犬みたいに喜んじゃってさあ。ほんとチョロい女神様だわ。

 

 そんなこんなで忙しく動いていたらあっという間に夕方だ。


 今日もまた当然のように遊びに来ていたパンちゃんがこれまた当然のように夕飯をねだるわけで。


 細々とした手伝いもさせちまったし、まあ、しょうがねえなと初の遠征に向けての宴会をすることにした。


 【製作】で土鍋を作ったので、せっかくだからとリーゼとヒッグホッグの鍋にしてみた。


 ムックルで出汁を取り、塩で味をととのえた肉鍋は思った以上に美味しかった。


 パンちゃんが「特別よ」と取り出したお高い日本酒で乾杯し、旅立ち前夜はゆっくりと更けていったのでありました。


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