第27話 クラフターズハイ
「ふう……こんなものか」
なんだか謎のやる気に騙されて夕方までやたらと生活用品をクラフトしちゃったよ……あのお茶、やべー効果とかないよな?
え? チュートリアル終わった開放感じゃないのかって? うーん……よくわかんないっすね。
まあ、そんなことはどうでもええねん。俺が作ったもの、見てけよ見てけよー!
快適な睡眠は心と体を健やかにする! というわけで、最初に紹介するのはベッドです。
安らかな睡眠は身体は勿論、心に安らぎを与えますからね。あるとないとでは翌朝の疲れが段違いだっつーか、いつまでも床にごろ寝はきついっすわ。
つっても俺が求めるベッドを作ろうとすると素材がぜんぜんたらねーんだよな。
まあしゃあねえかと、干し草のベッドを作ったんですけどね……これがまた意外とフカフカでとても気持ちがよかったのよねえ。
チクチクするかなー? ってちょっと思うよね? ところがこれがまた、まあチクチクはしたよ……しゃあねえじゃん、干し草だぞ? しねえわけがねえよなあ!
でもよ、でもよ! それに目をつぶれるくらいの快適さがあったんだよ。
なんだろうなあ、おひさまの匂いと、温かさが良かったのかなあ……不思議とさ、スヤァと安眠できそうなんですよ、これが!
それに! ヒッグホッグの毛皮で作った毛布もふっこふこでなあ。いやあ、今夜がとっても楽しみですね!
さて、次に紹介するのは調理器具だ。
包丁に小さなナイフ、お玉に菜箸、フライパンに鍋! 料理をするのに最低限必要なものを作ったよ。
さらにナイフとフォーク、皿や箸なども忘れずに作り、それらを入れる食器棚まで作っちゃいました。
え? 調理器具の素材はどうしたのかって? そら当然魔鉄鋼だよなあ。なにせ鉱物はそれしかもってないんだもん、しょうがないよね?
……ここにドワーフの鍛冶師が異世界転移してきたら、ものすげえ勢いでブチ切れそうだな。
で、最後の仕上げとばかりにテーブルと椅子を作ってキッチンに並べたらかなり家らしくなっちゃいまして!
もうね、満足感でいっぱいよ。
後は【建造】と【製作】を駆使して上下水道的なのを作れれば最高だよなー。
うーん……文化的な暮らし……いいですよね。
……文化的な……暮らし?
そう、口に出した時、はたと気付いてしまった。
そうだよ……文化的な暮らしには照明が要るんだよ! 昨夜はさ、疲れてたせいかさっさと寝ちゃったけど、いつもそうはいかねえよな。
日が暮れたら寝て、昇ったら起きたらいいだって? あのな、俺はオタクなの。そんな健康的な生活は無理なの。今は体が慣れてねえからできてるけど、絶対そのうち元の生活に戻るってば。
夜でも明るいお部屋がなかったらなんもできねえじゃん! そんなん確実に気が滅入っておかしくなってしまうよお!
ランプってどうやって作ったらええんや? なんだっけ、竹を使ってどうのこうの……って、それをやるには電気が必要やないかい!
電気の概念がねえっつうか、そんなん俺には無理だっつうの!
ええとええと……せや、ランプつったら、やっぱ油よね。なにかしらの油にこよった紙でも刺して火をつけたら……って、油も紙も作れてないやないかい!
やべえ……こんなことしてるうちに夜が来るぞ!
なんかないか、なんかないか……って、ここはファンタジー世界じゃん。
地球のルールから外れたランプとかあるんじゃないか?
もしかしてと【製作】を立ち上げて調べたところ……案の定、魔石ランプという、それっぽいのを見つけてしまった。
こんなんクラフトするしかないやんけ。
というわけで、サクッと作っちゃったわけなんだが。
【製作】の説明ページを読むと、魔石は交換ができ、ウルッグサイズの魔石で二ヶ月は光るとの事だが、光量はどんなもんだろうな……っと、うおお明るいな!?
やっすいLED照明よりずっと明るいじゃん!
予想以上に良かったので、もう一個作ってキッチンとリビングに吊るしてみた。
おお……薄暗かった室内がこんなにも明るく……ていうか色がいいよな。
暖色系っていうの? 昔ながらの白熱灯カラーなんよ。
柔らかで優しい光って、めっちゃ癒されるわ。
「ぷー しゅるるる……ぴすー しゅるるる……」
あー……なんか聞こえますか……聞こえますよねえ……。
これはですねえ、俺が頑張ってる間に、そんなの関係ねえとばかりに、ぐーすかお昼寝しちゃった薄情者が放っている音ですねえ。
お、そこの君、察しが良いねえ! そうなんだよ。これ、クロベエじゃないんです。
とある女神様が発している音なんですねー。
クロベエのおなかを、よだれでべしょべしょにしながら寝る姿は、ばっちり写真と動画で残しておいた。
これも何かの時の切り札にさせていただくぜ!
……しっかし、幸せそうな顔で寝やがって……どれ、もう何枚か……パシャリ……パシャリ……おっと、ゆっくりと目が開いたぞ。
やべーな、バレちまったか?
「……ふぇ? ふぉお……なんて……もっふもふなの……」
……おや? なんだか様子がおかしいぞ。
むくりと起き上がったパンちゃんさんが、妙な事を口走りながらクロベエの腹をまさぐりはじめた。
クロベエは……爆睡してて起きる様子が無い……いや、起きてるな。
地響きのようにグルグルと喉を鳴らす音が聞こえるもの……この浮気者!
そして、その音にパンちゃんが反応した。
「ここがいいのかー! ここかー!」
寝ぼけたパンちゃんがだらしない顔でクロベエの腹をまさぐり続けている。
いや……あいつ起きてるな。よく見たらがっつり目覚めた顔してるわ。
なるほどな、昼寝から目覚めたけれど、特にすることも無いからモフモフの毛に溺れて遊んでいると……。
これまでのパンちゃんなら、これくらい暇になれば、しれっと神界に帰っていたはずだ。
なのに帰らず、こうして暇をつぶしている理由はなんだろうか?
……まあ、わかりきってんだけどな。
さっきからさ、チラチラ、チラチラとこっち見てんですよ。
なんで見てるかって、暗に「ユウさん飯はまだかい」って言ってるんだ。
あれだけ旨いを連呼しながら教えてくれたムックルに山菜たち、それを使ったディナーを無言で催促してんだよ、あいつはよお。
……まったくしょうがねえ女神さまだぜ。
まあ、今日もなんやかんや手伝ってもらったしな。
自慢の料理をお見舞いしてやるから、せいぜい堪能していくがいいさ!




