第23話 家を建てる
って、今日は大工さんが本命やないかーい!
というわけで、昼食も終わったのでさっそく家を建てていきたいと思います。
改めてアプリを立ち上げ【建造】から家を建てる。ほーん、素材が足りてると選択画面が出るんか……というか、この素材がこれに使えるとは……。
メイン資材である木材は、杉的なサリサリルを選んでと……最後に確定ボタンを押すわけか。
魔石の減りは……二十パーセント? ウルッグ一体分じゃん、思ったより減らなくて助かったぜ。
『クラフト開始!』
ああ、そうか。このクソアプリ、クラフト時間っつうのがあるんだった。家だからなあ、やっぱ十二時間とかかかる感じなんかな? ギリギリ夜に間に合えばいいのだが――って。
『残り時間00:05:00』
「五分かよ!」
謎の光に包まれてゴトゴト鳴ったと思ったら、あっという間に家が建っちまった。
「また半日とかかかるかと思ったわ」
「ちっこい家だしね。そんなかからないわよ」
微妙に納得がいかねーが、結果には満足だから文句はない。
というわけで、さっそくできたての我が家に入ってみましょう。
ドアを開けて中に入ると……おお、これは思った以上にいいな!
「わあ! 木の香り漂う温かみあるおうちですねー」
「なにお宅訪問ごっこしてんのよ……あら、ほんとにいい香りじゃないのー」
悪くなかった、いや、むしろすげえいい。
狭いながらも素敵な我が家! 竪穴式住居もいい家だったが、ちゃんとした家にはやっぱかなわんよ。
いやあ……頑張ったなあ。
俺、家を建てちゃったよ……
じわりじわりと謎の達成感がこみ上げる。
そうだ、今夜はお祝いをしないとな。
食材があんましねえから、ささやかなものになるけど、この家ではじめての調理をしてさ、はじめての食事をするんだ。
……って、調理?
「あ……そういえばキッチンがねえわ、この家」
まいったな、トイレはもろもろの問題があるからさ、まだ大自然式でいいやってわざと作らなかったけど、キッチンは普通に忘れてたわ。
煮炊きは前の家でやるか? いやあ、それは何か悔しいよなあ。
せっかく、立派な家ができたんだから、全部ここで完結させたい。
となると、建て直しか……まさか完成して十分経たずに解体するとは思わなかったぜ。
「……壊すボタンとかあったっけ……ああ、あったあった」
涙をこらえながら【撤去】ボタンを押そうとした瞬間、パンちゃんがシュバっとすっ飛んできて俺からスマホを奪い去った。
「ちょっと!? あんたなにやってるのよ?」
「それは俺のセリフだよ! なんでスマホ奪ってんだよ」
「ここにでっかく『増築』ってボタンが見えてるじゃないの! なにいきなり壊そうとしてんのよ……」
「あ……撤去しなくていいんだ」
「ほんと、ばかねーあんたは。ばぁかばぁか♥ ざぁこざぁこ♥」
「くっそ、腹たつわー! つーかガキって年じゃないんだから、ざぁこはやめなさい!」
「う、うるさいわね!」
正直……ちょっとだけ……ぐっと来たわ。
でもまあ、そうだよなあ。あるよなあ、増築。ここまで便利なアプリなのに、そういう機能がないのも変なもんなあ。ちくしょう!
キッチンとなると、やっぱちょっと特殊な素材が要るだろうな。
……煽られる隙を作るのも癪だし、今度は先に調べておこう。
ええと……キッチンつうより、煮炊きする場所の素材……かまどでいいんかな?
ネットの智恵を借り、かまどについてざっくりと調べていく。当初は和風のを考えていたけれど、建物の雰囲気は洋風だ。なのに和風のかまどはちょっと違うと思ったので、レンガでできたおしゃれなのを採用した。
レンガの素材は……泥でいいのか。
たぶんあったよなと泉に向かうと、アシのような植物が群生している辺りにいい感じの泥があった。
【掘削】を使って回収していく……アシが一緒に回収されているようだが、これはこれで使い道がありそうだから良しだ。
せっせと泥を回収していると、パンちゃんが腕組みをして様子を見ているのに気づいた。
あいつめ、また俺の穴を見つけてからかおうって顔してやがる。
だが、今回はそうはいかないよ。
ちゃーんと調べて行動している上に、あんたのお望み通りアプリを使ってやってるんだぞ?
もうお前がからかう余地なんて残ってねえのさ!
「ふーん……」
「なんだよ」
「べっつに!」
面白くねーなって顔しててくさはえる。
……まったく、そこまでつまんなそうな顔しなくてもいいだろうに……しゃあねえなあ。
「なあ、パンちゃん先生よー、レンガって、この泥で作れるかなあ」
「そ、そうね、作れると思うわよ! あ、でも泥が黒いから、赤いレンガにはならないからね」
「そっかー、黒くなっちゃうのかー。知らなかったよ、サンキュー」
ふふ、みろよアイツの顔を。途端に嬉しそうな顔しやがって。
あれも一種のワーホリみてえなもんなんかね? まあ、知らんけど、適度に構ってやるか……。
っと、あんまやりすぎるとアシが失せちまいそうだ。これくらいにしておこう。
家に戻り、スケブを開いて前に描いた家の絵を見る。
キッチンは……泉に近いほうがいいだろうな。ここか?
元の絵に足す形でもう一部屋、六畳くらいの部屋を描き加える。
キッチンは土間にして火災に強くしよう……んで、ここにレンガのかまどと煙突をつけて……と。
うん、いんじゃね? うっし、クラフト開始じゃい!
『残り時間00:00:20』
「だからはえーって!」
あっという間に元の部屋にもう一部屋くっつくようにキッチンが追加された。
「へえ、キッチンにドアをつけなかったんだ」
「ああ、こうすりゃかまどの熱がこっちに来るだろ?」
「そうね?」
「わかってないって顔してんな。ほら、冬が来たら暖房にもなるだろうが」
「あ、あー……そ、そっかー冬かぁ」
なんだこいつ……反応が少し怪しいな? もしかして季節に厄ネタでもあんのか?
……いいや。なんか怖いから聞かんとこ。
「それよりみてくれよ。鍋を二つ乗せられるんだぜ、これ」
「あら、いいわね! これでお料理が捗るわね!」
だろうだろう。スープを作りながらフライパンで炒め物までできちゃうんだぜ。我ながらいいキッチンになったと思う!
というわけで、さっそくキッチンを使い、夕食を作る……まあ、結局今夜も串焼肉だけどな!
肉を焼いていると、その香りに誘われたのか、フラフラとクロベエが帰ってきて、朝にはなかった家を見て目をまんまるにした。
「ほんとに いえを つくっちゃったんだね」
「すげーだろ」
「うん ユウすげー!」
というわけで、メンバーが揃ったのでお祝いのパーティをしようじゃないか!
うーん……自分で建てた家の中で食うメシはやっぱいいもんだね。
いつもの肉なのに、倍以上にうめえわ。
……
…
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、夜が訪れた。
家らしい家になったせいか、寝床が無いのがすげえ惨めに感じるが……まあ、明日なんとかしよう。
「しゃあねえ、今日のところは毛皮でもしいて寝よう」
「ユウ ねるとき おれにくっついていいよ」
「ありがとな、クロベエ。俺を潰さないように頼むぜ」
「ユウ 私は そろそろかえるわね」
「あれ、パンちゃんまだいたんだ……」
「急に塩対応すんのやめてよね! ふんだ、もうこないわよ! ばーか!」
ぷりぷりと怒りながらシュッと消え去ったが、明日また肉でも焼いたら、しれっと下りてくるにちがいない。
静かになった家で、クロベエにもたれて横になる。
疲れていたのか、そのまま一気に眠りの海に飲み込まれてしまった。




