第21話 優等生タイプ(笑)
さて、どんな家を建てようか?
整地した地面に腰を下ろし、一人静かに考える。
……一人静かに……か。
クロベエがいるから、一人ぼっちってわけじゃねえし、寂しいなって気持ちにはならねーけどさ、やっぱこう……異世界物といったらさあ、可愛いヒロインがほしくなるよね。
パンちゃん呼んだせいなのか、どうも人恋しくなっちまった。
そうだな……せめて、住む家だけは温かみに溢れたものにしよう。
住んでいてぽかぽかとする……木造家屋がいい。
そしたら、それに合わせて柵やら堀やらも必要だよな。
森以外で魔物らしい魔物とエンカウントした記憶がないから、いらないのかも知れないけど、あったほうが安心だし、なにより景観的にしっくりこねえからな。
なんだろうな、この感覚。
柵かなんかで仕切らないとさ、家の敷地に入ったぞって気分にならねーじゃん。
見える範囲全部俺のもの! ってのは、ロマン溢れてそれはそれでいいけどさあ、なんかこう……帰ってきたぞ感がほしいわけよ。
家に、柵と堀……まずはこんなもんかな? 足らんものは後から追々と増やせばええやろ。
じゃ、さっそく家を建てようかってことで、ちゃっちゃか設計図という名の絵をかいてしまいましょうねえ。
十二畳ワンルームのかわいいおうちには、シンプルな窓が……こことここ、二箇所にありましてえ……ここが玄関で……のぞき窓がついたドアをつけてと……屋根はどうすっかな? 雪降るかもしんねえし、とりあえず適当に三角屋根をつけておこう。
「よし! 描けたぞぉ!」
アプリを立ち上げ【建造】を開いて『設計図取り込み』をタップする。
立ち上がったカメラに家の絵を読み込ませてっと……。
「これでいいんかな?」
「そうそう、後は『配置』をタップね」
そう言えば生体取扱説明書としてパンちゃんを呼び出してたんだった。
「で、場所を指定する画面になったでしょ? そしたら――」
作業を始めた瞬間、解説マンに変貌しよったわ。やっぱこいつ、教えるの大好きガールで間違いないな。
「で、場所に間違いないか確認したら『建造開始』を押してね」
「はいはい…あれ? 素材が足りませんて出たぞ」
「うぷぷー! ざぁんねんでしたあ! 必要な素材はあらかじめストレージに入れておかないとだめなんですぅ! 無から作り出せると思った? ざんねーん! あ、私ならできるけどね? 女神様ですし!」
「うっぜーーーーー! 知ってるなら初めから言えよなー!」
「失敗しないと覚えないでしょ?」
ぐぬぬ……確かにその通りだけど、最初に言ってくれればそれで済むだろ……つか、お前ぜってーそのセリフを言いたかっただけだろ。
「木材がたらねーのはわかる。けどさ、木材つっても種類があるだろ? そういうのも何とかしてくれるの?」
「んなわけないじゃないの。焼杉の壁にしたいなら、杉を手に入れないとだめよ」
「渋いの知ってるなあ……ん? 今『杉』って言ったけど、この世界にもあるん?」
「そのものは無いけど、似たようなのはあるわよ。防虫効果に優れているし、家の素材として適してるわね」
良いこと聞いた。建材はそれで決まりだな。
となると、杉的な木を調達したいところだが、それがどんな見た目をしてるのかわからねえんだよな。
森の木々を片っ端から撮って、図鑑に登録してけばそのうちわかるんだろうけど、植物って見た目ほぼ同じなのに、よく見たら別種とかあるからなあ。
俺のことだから(あれ、これ登録したっけ……)ってなるわ。それも何度も何度もなるわ。
……めんどくせえ。
あ、そうだ。こういう時に便利なやつがちょうど来てるんじゃん。
「パンちゃんってさ、この世界の管理神じゃん?」
「うん? そうだけど……なによ?」
「いやさ、この世界のことを一番よく知ってるんだなって思ったら、素直にすげーって思ってさ」
「ま、まあね? そりゃそうよ。なんたってこの世界は私が作ったんだから!」
当然じゃないのと、すげえドヤ顔だ。
いいぞ、獲物が餌に食いついた!
あとは、確実に捕らえるだけだ!
「流石は俺たちの女神様! サスメガ! サスメガ!」
「ふふーん! 我女神ぞ!」
「さぞかし頼りになるんだろうなあ……でもなー悪いしなー」
「なによなによ、言ってみ言ってみ?」
「あのですねー、杉的な木がどこにあるかー、案内してほしいなーって」
ちらっ ちらっ
いけるか? いけるか? うーん、腕組みしてむずかしい顔してるな。
「うーん。あんまりねー、管理世界に干渉し過ぎるのは良くないんだよねー」
あー……やっぱそういう神界ルール的なのがあんのか……。
俺を通してがっつり干渉してるような気がせんでもないが、それは大丈夫なんか?
「まあ……ちゃんと報告書を出せば、怒られないんだけどねえ」
「そうなんですかあ?」
「私が王様になって国を興すとか、先頭に立って産業革命起こしたりとかはだめだけどね」
おっとお? 風向きが変わってきたぞお! なんだよ、思ったよりだいぶユルユルじゃねえかよ。
「ただ……昔はダメだったらしいからさ、ユリカゴに下りるのを見て嫌な顔をする神も少なくはないの」
「パンちゃんって優等生タイプっすもんね。そういうのめっちゃ気になるんでしょ」
「そうなのよ……上司はいいよって言うけど、恩師は昔気質の神だから、きっといい顔しないだろうしさあ……こうして下りてるのもバレたら怒られそうで……」
しきたりを大切にしすぎて、逆に行動を妨げる存在って、どこにでもいるんだなあ……。
それで上手く回ってたんだから、今も行けるやろって言うけどさあ、時代は進んでるんだよなあ。
神界もそんな感じなのか……ちょっと知りたくなかったかもしれん。
うーん、しかし冗談で言ったけど、パンちゃんってマジで優等生タイプっぽいよな。
ポンコツではあるけど、なんかこう、内申点が高いタイプっていうの?
基本的に、そういう奴って頭ガチガチでやりにくかったりするんだが、それはそれでやりようがあるんよね。
「他の神様はどうなんです? やっぱしきたり守ってる感じなんです?」
「……ブーちゃん……同僚がね『うちのユリカゴ、楽しすぎて週二で通っちゃうけど、リーちゃんとこはどうなのー★』って、うっざいメッセ送ってよこすのよ」
「それってめっちゃ下りてません? しかも割と私用で」
「なのよねー……ていうか、みんな発展させたユリカゴに下りて遊び歩いてるわね……いいなあって何度思ったことか……」
必殺「みんなやってるじゃんw」追い詰められてる真面目タイプは、これをされるとグラっといくんだ。
じゃあ、仕上げといきますか。
「遊びじゃなく、こうして俺と一緒にユリカゴを修復する作業……それって、遊んでる女神達と同列にみられるんでしょうか」
「え? うーん……流石に……怒られはしないでしょうね……そう言えば、ララ先生が『リパンニェルさんはもう少し柔軟に行動してもいいのよ』って言ってたわね……もしかして、私が思っていたよりも、今の神界は自由なのかも……」
「なんだ、恩師の方のお許しも下りてるようなもんだったんじゃないっすか!」
「そうかな……そうよね! ようし、一緒に探しましょう! いえ、私が手伝う以上、もう見つかったようなもんだわ!」
「いえええええええい!」
よっしゃあ! AIより楽に言いくるめられたぜ!
いやあ……しかし、アホなパンちゃんを騙すつもりでしかけたが、思いがけず色々知れてしまったな……。
こいつ、かなり不器用に生きてきたんじゃねえかなあ……。




