第20話 女神降臨
というわけで、張り切って呼んでみましょう!
「建造についてききたいんですけどー、いちいちメッセ読むの怠いのでちょっとこっち来て下さーい!」
空に向かって雑に呼びかけると、七色に輝きながらパンちゃんが現れた。
「気軽に降臨できるほど暇じゃないんですけど……」
「クッソ、神々しいと思ったのにサイリウムじゃねえかよ」
「神らしいエフェクトがあったほうがいいかなって……」
アホすぎる。
つっか、ぜってえ暇してただろ。
忙しいんですよー? なんて言っているが、どっからどうみても嬉しそうな顔をしているじゃん。
こいつ、きっとあれだわ。
ネトゲの新規プレイヤーにウッキウキであれこれ教えたり、頼んでないのにキャリーなんかしちゃうタイプのやつだ。
「なんです?」
「なんもないっす。それで、建造ってどんな感じなんです?」
と、言った瞬間、待ってましたとばかりの笑顔。ほらみろ、やっぱり教えたがりタイプじゃんか。
「建造と聞くと、家屋や店舗などの建造物が頭に浮かぶと思います」
「名前からしてそうかなって思いましたけど、ちがうんすか?」
うっわ、ものすっごい嬉しそうな顔しやがった。クリティカルな質問しちゃったかー
「わざわざ【建築】ではなく【建造】にしたのは、大型クラフトにも対応させるためなんです。つまり建物だけではなく、大規模な構造物、それらに使う大きめの素材の加工などにも対応できるんですよ」
ふむ……言われてみれば、船舶も「建造する」って言ったりするもんな。構造物ってことは、ダムとかも該当すると……なるほど、解釈次第である程度なんでも作れちゃいそうな予感がするな。
「なるほどですねえ。家の擁壁とか、そういうのもいけるんですかね?」
「もちろんいけちゃいますし、例えば……家をレンガの壁で囲みたい、そういった作業をする際には、範囲指定をしてからやれば、きれいに積まれた状態で配置されるんです!」
「おおおお……そういう地味にダルい作業までやってくれるのはいいっすね」
マジで助かる。レンガは小さいから【製作】でつくって、チマチマタップして積んでねとか言われたら泣いちゃうもの。
「そこは神が作ったツールですので! あるべき姿に構築するのは当然のことです……あ、これから建てようとしている家もそうですよ?」
「といいますと?」
「クラフトゲームを想像して下さい。壁を作って、窓をはめ、ドアをつけて、屋根を張る……地味に結構な工程がありますが、あなたにできますか?」
うっ……地味にめんどくせえやつだわ。いくらツールの力で簡単になるつっても、背丈よりデカいもん組み立てるの無理……つうか屋根とかどうすんだよって話だ。
「あー……それをリアルでやるって考えるとキツいっつうか嫌っすわ!」
「ですよね。なのでめっちゃイージーにしちゃいました。建てたいものを選んだら、範囲選択をして規模を決めるだけ」
イージー過ぎて助かるが、逆に自由度下がったりしねえのかな? この言い方だと、テンプレから選んで配置するだけっぽいんだが。
「あれ、それじゃあ『全面ガラス張りの家に住みたーい』なんて、匠のドリームハウスに住みたいって夢は叶えられないってことっすかね?」
「え……あんたそんな家に住みたいの?」
「んなわけねえだろ。ただの例えだよ」
「よかった……ごほん。例えが終わってるのでびっくりしましたが、そういうのもできなくはありませんよ」
「まじで」
「はい。収納なんかと同じノリですよ。ボタンをタップする時に、どういう構造がいいかを思い浮かべておくと……待って。貴方にこれやらせると、妙な邪念が入ってうっかりミスでヤベェの建てちゃいそうですねえ……」
「おいくそ、流石にそれは失礼だろ!」
流石に家を建てるって時に、他のどうでもいいことなんて考えないわい!
「普通の家を建てるぞー!ってスマホに念じ始めたとします。そのとき、ふと学校が変形するロボットの事を思い出さないという保証がありますか?」
「随分と懐かしいネタを持ってきたなおい! ていうか、そういうのもいけるの!?」
「だめですよ? いけるかどうかじゃなくて、だめですからね!」
「いや、住みたいわけじゃないんだよ。村の守り神として言い伝えられるとか……魔王軍から村を守護るは、異世界巨神ジャイアントカイザー! うっわ、めちゃ熱くね!?」
「あ、こいつだめだ! 絶対やらかすわ。はい! 決まり! 仕様変更しまーす! アップデートしまーす!」
「ええー! ボクのロボットはー?」
「かわいく言ってもだめなもんはだめよ……はいアプデ完了!」
つい楽しくなっちゃってからかってたら、なんか仕様が変わってしまった件。
「えっと、なにがどうかわったんです?」
「はい、これ」
唐突にスケブと筆記用具を手渡されてしまったんですが。
「ん? スケブ描いて欲しいの?」
「えっと、名探偵ミルキュアのライバルちゃんを……って違うわよ!」
「スケブに反応したな? 貴様まさか……」
「ううううるっさいわね! 直感的に使えるように読み取り機能をつけたのよ! 感謝しなさいよね!」
こいつ絶対おたくだわwww
同類の匂いしかしねえ……っていうか、いい加減面倒になってきたし、被ってる猫を剥ぎ取ってやろう。
「つかさあ、そのノリが素だよね? 互いにダルいしさ、もう気取って喋るのやめね?」
「うう……せっかく女神らしくしようって思ってたのに」
最初からちょいちょい素が見えてたからな……無理な話だったんだよ。
「はあ……それでね、この機能についてなんだけどさ、君さ、特技なんてねえぞーなんて言ってるけどさあ……そこそこの絵師だったりするじゃない?」
は? え? ちょ……!
「おいくそ、なぜそれを知っている! あ、さっきのスケブでボケたせいか?」
「ううん。神の力で貴方のお絵かきブログを特定したの」
「悪魔かよ……」
「いいえ、女神です。けど、ブログやってるのは知らなかったわ。記念にブクマしてフレンド申請しといたから、よろしくね」
「うおおおおおお! うおおおお! あっ……ほんとだ……初期アイコンから申請来てる……他者とのやりとりはできないはずなのに……妙だな……ブロック」
「おい! ……とにかくそんくらい描けるなら大丈夫よ。作りたい物の絵を描いて、スマホのカメラで読み込ませたら良いわ」
「女の子を描くのは好きだけど、建物はそこまで上手く描けねえぞ?」
「ある程度は補完してくれるから、ざっくりで大丈夫よ……あとブロック解除しておいてね」
ほーん。そういう事なら助かるな。AIにラフを補完してもらう感覚で使えばいいのかな。
手書き派なんで、使ったことはねえが、アレはアレでちょっと便利そうだなーって思ったんだよな。
「家の絵ってさ、家具なんかも描いたりすんじゃん? それはどうなんの? 解除しません」
「今はまだ家だけになっちゃうわね。家具や日用品なんかが【製作】の領分だからなんだけど、明日アンロックされたらまとめて一緒に作られるようになるわよ……ねえ、お願い解除して……フレンド限定のやつがあるとか知らなかったし……お願い……」
「ふーむ。かなり凝ったものを作れそうだが、住民に見せるようなものは、俺でも作れるくらいにレベルを落としたほうが良さそうだな。真似できないの見せてもしょうがねえだろうし」
「そうね。でも、しばらくは君の生活改善を優先していいからね」
「いいの?」
「うん。お願いしておいて言うのもなんだけどさ、仕事だからーって考えないで、趣味の延長としてのんびりやってくれたらいいの」
「ありがたい話だね。そういうことなら適当にやらせてもらうよ」
「うん、そのくらいの気持ちでいいわ。そ、それで……ブロックは……」
……なんか可哀想なので解除してあげた。




