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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
6章 新たな土地はおかしな地

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第21話 温泉爆誕

 なんだか……とってもしょうもない時間を過ごしてしまった気がする……。


 ようし、気を取り直して作業に入るとすっか……と思ったけれど、このまま作業に入るとやりにくいから、先にモルモルたちに名付けをしておこう。


「モルモルたちよ、お前らに名前をやるぜ。右から順番にモル山、モル次郎、モルランだ。何をすればいいのかは、わかるな? 基礎は作ってあるから取りかかってくれ!」


「「「了解」」」


 ピシッと揃ったその返事、これはまさしくモル助ブートキャンプの効果だな。


 浄水技術を身につけたモルモルは、今後ずっと需要が増えていくことだろう。


 始まりの村に派遣しているモルモルたちも、モル助教官の教え子たちなので、あちらで分裂したモルモルたちに指導することはできるようになっている。


 おかげで、一度派遣してしまえば、現地でどんどこ分裂し、ある程度の需要を満たすことはできるようになった。


 ただ、それにも限界がある。


 急激に需要が増加すれば教育が追いつかないし、なにより今回のように遠く離れた別の土地への派遣となると、やはり浄化モルモルのストックは必要なわけだ。


 なので、最近のモル助は、うちの掃除は教え子たちとモルゾウに任せ、日々浄化モルモルの教官として活躍している。


 今回呼び寄せた三体のモルモル、モル山、モル次郎、モルランは今家にいる教え子たちの中でもエリートだそうで、昨日までは家の浄化を担当していたそうだ。


 ……なるほど、それでパンさんの惨状を目撃しちまったわけか……。


 そんな精鋭たちが来てくれたのだから、ありがたいよな。


 なにせ、今回作るのは温泉だ。


 基本設計は家やゲストハウスの浴場と変わらないけれど、外から温泉を引く都合上、ちょっと仕様を変えてあるから、ちょっと心配だったのだが、来たのが精鋭たちだと聞いて安心感がぐっと増したわ。


 源泉はくっそ熱いので、冷まさなければならないのだが、そこは時間に解決してもらうことにした。


 仕組みは簡単で、ポンプで汲み上げた後、地下の貯水槽に送り、そこからまた長いパイプを通って施設内に入り、浴槽へと流れる……と。


 こうして、遠回りをさせることによって、熱いけどギリ耐えられるレベルにまで冷ますことができるのである……って、AIのシュロップくんが言ってたから……ここは信じることにする。


 それに、初心者用として近場の冷泉から汲み上げた水と混ぜて四十度程度にまで下げた温めの浴槽も用意するので、最初のうちはそっちに入ってもらえば、じわじわと熱い湯の魅力に取り憑かれていくんじゃねえかなって思う。


 後は……まあいつも通りだな。


 上水用の浄水槽と下水用の浄化槽を整備して、モルモルチェックをしてもらったらおしまいだ。

 

 予め、ある程度作っておいたから作業が進むのが早い早い。


 さあ、これで水回りの整備はおしまいだ。


 最後の仕上げとまいりましょうかね!


 なんて、気合を入れてみたけど、作業自体はあっけねえもんよ。


 タブレットから【建造】に送っておいた図面を選択し、建てる場所を指定して……開始ボタンを押せば……ふむ、今回は五分か……相変わらず基準がわからねえ。


 資材に関しては、ここまでの道中、道を作りながら回収した木材やら石材やら土やらがたっぷりあるからな。


 たぶん、空洞に家を三十軒くらい建ててもまだまだ余裕で資材が余ると思うぜ。


 やらねーけど!


 ああ、でも粘土だけは殆どなくなっちまったな。


 何に使ったかって、屋根だよ屋根、そう瓦だよ。


 温泉宿と言えば、やっぱ日本家屋よねってことで、無駄にこだわって設計しちまった結果、無限にあるんじゃねって思うレベルでストレージに入っていた粘土がほぼほぼ無くなっちまったんだ。


 いやあ、瓦って地味に粘土を消費するよなあ。


 しかしまいったな、粘土って地味に集めるのめんどうなんだよな……。


 いやさ、粘土ってさ、なぜか湿地でものすげー採れるんだけどさ、塩のダンジョンに行かなかった残留組のタルット共が、キウンバ……あいつらがキウリと呼ぶアレと交換で掘ってきてくれるんだわ。


 ぶっちゃけ、そこまで粘土はいらねーんだけど、たまに監視に行くとすっげえ群がってきて、キウリくれくれうるせえからな……。


 なんでそうなったかって、俺が悪いんだけどさ。


 なんでも、ダンジョン組から俺が作ってるキウリの評判を聞いたとかでな……なんか、もの凄い褒めてくるから、俺も気分よくなっちゃってさ、ばらまいちゃったわけよ。


 そしたら、味をしめちまって、俺の姿を見るたびにねだるようになったってわけ。


 まあ、粘土以外にもフワフワの実やら、ヌマエビやらを取ってきてくれるからさ、俺もしゃあねえなって配るんだけど……粘土はあんま消費しねえから、どんどん溜まってたんだよなあ。


 しかし、それも今回の建造で一気に消化してしまった。


 同じくらい集めるとなると、また嫌になるほどタルットと絡まなきゃねえのか……。


 もういっそのこと、袋詰めにした粘土を入れたら、キウリが一本出てくる自販機でも置こうかな……。


 いやダメだな。


 そんなことしたら、あいつら地形が変わるレベルで粘土を掘りそうだ。


 あいつらあほだから、粘土を入れたら無限にキウリが出る魔法の箱とか勘違いして、無限に粘土をねじ込みそうだ……っと、もう五分経ったか!


 どうでもいい事を考えているうちに建物が完成しちまった……。


 うーむ……自分で図面を引いたから知ってたけど、マジで絵に描いたような温泉旅館だわ。


 ぼんやりと明るく光る、大空洞の中にあるってのがアレだが……とってもいいお値段がしそうな立派なお宿だわ。


 ようし……外観は合格だ。


 問題は中身だな。


 今回はちゃーんと、内装を描き込んだからいい感じになってるはずだ。


 大きな玄関をくぐると、下駄箱がずらりと並んでいる。


 ここで靴を脱いで、下駄箱に入れ、板型の鍵を引き抜いてロックする。


 そう……これは古の銭湯なんかにあった、昭和レトロな下駄箱だ。


 その鍵を持って少し進むと受付がある。


 そこで鍵を見せ、入場料を支払ってもらう……んだが、それは色々済ませてからだな。


 色々と見えるが、そこは一度置いておいて、さらに奥へ、奥へと進むと……赤い暖簾と青い暖簾……そう、女湯と男湯を示すアレである。


 この先は勿論温泉なのだが、二十人が同時に使える洗い場と、四種類の温泉……露天風呂と、冷ました源泉を使った熱めの浴槽と、冷泉から引いた水が混じった温めの浴槽、そして……うちの泉の水の成分が、僅かに含まれた祝福の湯がある。


 最後のは少しヤベーかもって思ったけど、微量ならまあセーフかなって。


 濃縮還元したものをちょっとずつ使うわけだから、補充もたまにでいいし。


 薬草湯とかやるより楽でいいなって……まあ、ヤバそうだったらそのうち空洞産のキノコ湯とか、コケ湯とかに変えるけどさ。


 というわけで、温泉はこんなもんだな。


 後は他の設備なんだが……ここまでスーパー銭湯らしいのだから、おわかりだろうが、中にはくつろげるロビーの他、食事ができるスペースもあり、好きなだけ滞在して体を休ませることができるようになっている。


 そして……これはさらに将来を見据えてのことだが、二階へと上がるとそこから先は宿泊エリアだ。


 外観を日本旅館にしたからね。しっかりと泊まれるようにしましたとも。


 そのうち、春の大地から人が来るようになるだろうから、泊まれる場所も必要だろうなと。


 ……俺もたまにきてくつろぎたいなあって思ったのもあるけどな。


 


 さて、完成しちゃったけどどうすっかな……。

 

 うーん……やっぱ、入るっきゃねえよな。


 そうだよ、せっかく温泉ができたんだ、入らなきゃ失礼ってもんだわ。


 となれば……しゃあねえ、あいつも呼んでやろう。


 あいつもなんだかんだ、色々とやってくれているし、固有種の調査も、余り文句を言わずに行ってくれたからな……。


 そろそろ二時間経つし、おしおきはこのくらいにしておいてやろう。


 って、あいつがどこに居るのかわかんねえな……探しに行かなきゃねえのか……めんどくせえな……。


 まてよ。


 この間パンさんが言ってたけど、ルーちゃんのデバイスにある召喚リストには、俺やパンさんの名前もしっかりと入ってるらしいんだよな……。


『なんかね、いつの間にか入ってたのよ……凄いけどヤバいわよねえ』


 なんて、他人事のようにいってたっけ。


 ちょうどいいし、試しに喚んでもらおう。


「ルーちゃん、ママをここに召喚できるんだよね? やってくれるかな」


「ママ? うん、わかった。ちょっと待っててね、すぐに喚ぶから……みつけた。ママ、おいでおいでー」


 ルーちゃんがかわいらしく呪文を唱えると、派手目の光柱が立ち上り……中からパンさんが現れた。


 ……コップ片手に満面の笑顔で。


「だからあたしいってやったのよー! お前はメロンですかって……ってあれ? あれれ? ユウ? ルーちゃん? あれ?」


 なるほど……急に喚ばれるとこんな感じになるのか……風呂やトイレ行ってたら悲惨なことになりそうだ……次からは念話かなんかで先触れだすよう言っておかないとな……。


 まあ、今回に限っては、先触れ無くて大正解だったわけですけどね!


「なんで調査に行った人が酒飲んでるんすかね……」


「え? あ? ああああ、こ、これは違うの、ヒゲたちがね、駆けつけ三杯だって……」


「そこは一杯だろうがよ……はあ、まあいいや。温泉が出来たから早速試してみようぜ」


「違うのよ、ほんと違うの。ヒゲとミミがね、こう……」


「わかったから、まだそんな酔ってねえみたいだし、許してやるよ。つか、周りちゃんと見てみろって」


「周り……? ふおおお! 温泉旅館が出来てるううう! うっわ、すっごいわね、めっちゃ温泉旅館じゃん! やるじゃない!」


「まあな! 今回は結構気合入れて設計したから当然よ! あ、ちなみに土足禁止だからな。向こうに下駄箱あっから、靴置いてきな」


 はーい、と言って駆けていったパンさんの楽しそうな声が聞こえてくる。


「うっわ、なによこれ! マジでスパ銭まんまじゃん! うー……向こうにゲーセンとかあったら完璧なのに……そこまで贅沢は言えないか……」


 それは俺も思ってんだよな……そうだよな、やっぱゲームコーナーほしいよな……。


 でも、今のリプラシルにはまだ流石に置けねえよ。


 もうちょっと発展したらやってもいいかもだが……まあ、いつかの話だな!


「おまたせー! いやあ、ガチスパ銭で笑っちゃった! この様子なら、お風呂も期待できそうね!」


「あったりめえよ。ほら、ルーちゃんとナーちゃん連れて行ってきな……今日は寝るんじゃねえぞ?」


「わ、わかってるわよ……」


 右手にルーちゃん、左手にナーちゃんの手を引いて中に入っていくパンさん。


 その顔はとってもウッキウキで、やたらと眩しい笑顔を浮かべていて……。


 たく……そんな顔されると頑張った甲斐があるなって思っちまうじゃねえかよ。


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