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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
6章 新たな土地はおかしな地

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第17話 赤くて憎いアレ

 長い間、ひとりぼっちだったナーちゃんは、自由にダンジョンから出ることができるようになった。


 家族なのだから、当然同じ家で一緒に住むことになるわけだけれども、ここは俺の家からアホほど離れた冬の大地。


 ナーちゃんも、ルーちゃん同様にダンジョンコアなので、ダンジョンの管理という大切なお仕事があるわけですよ。


 その辺、どうなってんのよって話の流れから、ルーちゃんとナーちゃんが接続した話になり、ダンジョン間を転移門(ゲート)で繋いだ、そういう話を途中までしていたわけです。


「なあパンさん。結局のところさ、ナーちゃんは家からここに転移門(ゲート)で通勤して仕事をする感じになるん?」


「ええ、そのために繋げたんですもの! ドラゴンが居るから、毎日通わなくてもいいでしょうけど、メンテは必要だからねー」


「よかったな、ナーちゃん。これで一緒に暮らせるよ」


「ありがとうございます、父上、母上……! レッドドラゴンよ、私はたまに帰るので護りは任せましたよ」


「そ、そんなあ……ナーちゃん様、私だって寂しいんですよ? もっと帰ってきてくださいよ……」


「私と違って、お前には龍のお友だちがたくさんいるではありませんか……」


「あっ……それを言われると……うう、お留守はおまかせください……」


 口を開かなかったらかっこいいドラゴンなのに、喋ると残念だよなこいつ。

 ビビりで寂しがりで……なんだか昔飼ってた犬を思い出すわ……。 


 よーし、これでダンジョンの問題は解決だ。


 家族が増えたことだし、さっさと帰って家の改築を……と、行きたいところなんだが、まだ家に帰るわけには行かないんだよなあ。


 そもそもなんで冬の大地に来たかって、春の大地と交易をさせるためだからな。


 他にも、ここの鍛冶師や酒造りが得意な人、それと、狩りに出てる連中を招待して技術交流もさせるっていう、大切な目標もある。


 できれば、春の大地からも狩人や農家の人を招待して、交換留学という形になったら最高だな。


 ……その辺の話をマルリさんたち、空洞の人たちにしたいところだが……あいつら大丈夫かな? 


 流石にもう起きてるよな?


 ……大丈夫だと信じよう。


「パンさんよ、戻ったら空洞の住人と今後の相談をするからさ、そっちはダンジョン関係の相談をしといてくれよ」


「あんたも慣れてきたわよね……わかったわ、ルーちゃんとナーちゃんは私にまかせて。

 ……あんたもがんばってらっしゃいな」


 パンさんにへいへい、と手を振って上に向かおうとすると……ナーちゃんが俺の手を掴んでそれを止めた。


「うん? どうしたの?」


「父上、上に戻るのであれば私にお任せを。送りますので」


 と、ナーちゃんが言った瞬間、足元から赤い光の柱が立ち上り――気付けばダンジョンの入り口に立っていた。


 あらま……ダンジョンコアってそういうこともできるのね……って、飛ばされたのは俺だけかーい。


 まいったな、一人じゃ寂しいから、クロベエたちも一緒に連れてきたかったんだけど……ま、しょうがないか。


 あいつらいつの間にかどっかにいなくなってたもんな……。


 どうせ、またダンジョンデートとかやってんだろうな。


 俺らの前じゃああだけど、二人きりだと熱々らしいからな……火のダンジョンで熱々とはなかなかにロックだぜ……。


 なんて、しょうもないことを考えながら帰り道を上っていると……道端に生えている植物が目に入った。


 ここらはダンジョンから近く、気温も地熱も高いのに、よくまあ元気いっぱいに生えてるもんだぜ……ってこれ、なんか似たようなのを知ってるぞ。


 茎や葉っぱが真っ赤なのはアレだが、この赤くてぷっくりとした実……うーん、こいつは実に辛そうだ……。


 もしかしなくても……そうなんじゃねえかなと、スマホをかざし鑑定をしてみると『カプル』と表示された。


======

 

【カプル】可食 生食可能


 真っ赤に染まったこの実を

 舐めるやつはもう居ない……。


 毒じゃないけど、そのまま食べるのはおすすめしない。

 乾燥させ、粉末状にして辛味調味料として使うとよいだろう。


======



 名前といい、説明文といい、相変わらずふざけてるよな……。


 舐めるやつはもう居ないって、かつては居たんですかって話だわ。


 これぜってえ、某名曲のパロをやりたかっただけだろ……ほんとあいつはよお……。


 でもまあ、ゆるしてやろう。


 なんたって、出会いたくてしかたがなかったものと出会えたんだからな!


 胡椒を魔獣の森でみっけてもらってから、ずーっとトウガラシ的な植物を探してきたんだが、全然見つからなくてなー。


 最悪、どこかのラノベみたいに、魔獣の角を加工して作るのかもしれんって思い始めてたところだったんだ。


 それが、普通にそれっぽく生えてるとは……マジで助かるわ。


 リプラシル産のトウガラシかあ。こいつは捗るぞう!


 唐辛子的なのは色々と発展させられるからな。


 俺が大好きなペッパーソースは勿論のこと、乾燥させて一味唐辛子にしてもいいし、他のスパイスをなんとかすりゃあ、カレーだって作れるだろう。


 リプラシルの連中が使う調味料は、だいたい塩くらいのもんで、使っててもハーブ的な葉っぱくらいのものだ。


 始まりの村の連中も、空洞の連中も胡椒なんて使ってなかったし、味噌や醤油に大喜びだったからな。


 これを広めれば、この空洞独自の料理文化が生まれるかもしれん。


 結構人が通ってそうなのに、ここまで放置されてるってことは、たぶん食い物って認識されてねえんだろうなー。


 ……あのふざけた鑑定文、案外まとはずれじゃねえのかもしれん。


 昔誰かが食ってひどい目にあったとか、すっげえありそうだ……。


 せっせとカプルを集めていると、空洞に住む女性がやってきた。


 ハンマーみたいの持ってるあたりからして、採掘の帰りかな。


「あら、ユウさんじゃないか。なにを……ちょっと、そんなもんとってどうするのさ?」


「そんなもんって言うことは……もしかして、これ食ったことあったりする?」


「ああ、あるとも! 昔さ、近所のバーダのやつがさ、甘いからかじってみろって言ったのさ。それを信じてかじったら、口が痛いのなんの……半日くらい食べ物の味がしなかったよ」


「ああ、かじっちまったのか……そいつぁご愁傷様だ」


「まあ、その御礼にバーダにもたっぷりごちそうしてやったけどね! しばらくの間、上から下から凄く大変そうだったよ。あっはっは」


 逆襲したんだな……口に沢山押し込んだんだな……カプサイシンはおしりにダメージ与えるからな……。


「じゃあ、これを料理に入れたりはしてなさそうだな」


「使うもんかい! ただ触るだけでも危ないんだよ? 触った後に目なんか擦ってごらんよ! バーダみたいに涙が止まらなくなるよ!」


 バーダ……顔にも塗りたくられたんだ……。


 やはり、予想通り食べ物として認識されてないようだな。


 まずはカプルを美味しく調理して、気に入ってもらうところからだな。


 受け入れてもらえたら、希望者にカプル農家をやってもらって、ここの特産品になったらいいな。


 やっぱ環境ががっつり違う土地はおもしれえな。


 他にも春の大地では見つからなかった素材が色々と見つかりそうだわ。


 もっとあちこち……できれば、遠くて狩りには使えないという森エリアまで足を伸ばしてみたい所だが、それはここも改革して村にした後、ゆっくりとだなー。


 そのためにも、まずはマルリさんとこにいって打ち合わせをするとしようか。


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