第16話 土下座くそざこトカゲちゃん
「あ、そうだ、ユウ、ママ。ナーちゃんのお姉ちゃんになったからね、ナーちゃんのお友達ともお友達になれたんだ」
「あー、マスターコアになったから、ここの魔物がルーちゃんにも従うようになったのね」
「マジかあ……ルーちゃん……またひとつ偉くなったな……」
「えっへっへー」
「姉上は凄いですからね!」
「うっふっふー」
「ルーちゃん偉い偉い!」
「もう、ママまでーにゅふー」
「ルーちゃんえらいなー」
「ルー様の足として、私も誇らしいです」
「えへへ……クロベエたちもありがとね」
みんなでルーちゃんをちやりほやりとしていると……ふと、何かにじっと見られている気配を感じた。
そいつはどうも扉の向こう側、コアルームの外にいるらしく、半開きになったままの扉の隙間からじっとこちらの様子をうかがっているようだ。
上手く隠れられているつもりなんだろうが……影でバレバレなんだよな。
つか、お前の影、めっちゃでけえから!
明らかに人間じゃないサイズだけど……今ならここの魔物にも襲われることはないだろうし、ルーちゃんが居る今なら言葉も通じるだろう。
……しゃあねえなー。
「……そこに居るのはわかっている。隠れても無駄だ、姿を見せろ」
言ってみたかったセリフ二十三位を炸裂させてやったぜ!
「ヒッ」
扉の向こうで何かが小さく悲鳴を上げている……いやいや、おれ悪いユウさんじゃないよ?
「別にとって食いやしねえよ! ほら、さっさと入ってこい!」
「ひゃ、ひゃいいぃ……」
ゆっくりと扉から顔を出し、キョロキョロとあたりを見渡した『そいつ』は、楽しげにルーちゃんと戯れるナーちゃんを見ると驚いた様子だったが、どこかホッとした顔をしてのそのそと中に入ってきた。
あー……こいつ俺とパンさんにビビって逃げてった飛ぶトカゲだわ。
ええっとステータスは……。
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名前:レッドドラゴン
職業:フロアマスター
LV:8
体力:420
魔力:120
スキル:ファイアーブレス、龍の睨み
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「えっお前ドラゴンだったの? フロアマスターなのはまあ、そうだろうなって思ってたけど、マジでドラゴンなん?」
「私たちの顔見るなり土下座して逃げてったから、大人しい性格の火のトカゲ的な何かかと思ってたわ……」
「そっちの人はヤバい力を身に纏ってるし、あなたは……なんかヤバい棒を振り回しながら向かってくるし……あんなの誰だって逃げますって!」
「覚えてないな……なあ、パンさん?」
「ええ……まったく身に覚えが無いわ……なんかごめんね?」
「こ、こっちは殺されるかと思ったんですからねー!」
余程怖かったのか、ナーちゃんの影に隠れてビクビクと俺たちを責めるドラゴン。
「父上、母上……こやつはナーちゃんのお友達なので、どうか虐めないでやって下さい……」
「いやいや初めから何もしてないからね? こいつが勝手にビビってるだけだし。
なあ、龍ちゃんさあ、俺たちはナーちゃんの親なんだよ。娘のお友達をいじめるわけねーだろ?
ほら、大丈夫大丈夫……こわくないこわくなーい」
「うう……いじめませんか?」
「そんな顔されると虐めたくなるけどいじめなーい」
「約束ですからね!」
そうか、そうだよなあ。
ここの連中も総じて身内みたいになったわけだよなあ。それを考えると……来る時に半ギレでころころしまくったの……なんか申し訳ねえな。
「ナーちゃん……俺達ここに来る途中、結構やっちまったんだけどさ」
「ああ、それについては心配無用です。父上たちに向かっていった者たちは、知性無き者なので初めから私のお友達ではありません。お友達はみな、父上と母上を見て直ぐに隠れてしまいましたので……」
「……」
「……」
……たぶん、遠巻きにこっちを見てたのがそうなんだろうな……大人しそうな溶岩属性の人魚さんみたいのとかいたし……。
「それに、倒された者たちも、時が経てばまた転生してくるでしょうから心配には及びませんよ」
ああ……魔物にはリポップシステムってのがあるもんな。
塩のダンジョンみたいな特殊ルールじゃなかろうから、生き返るわけじゃないだろうけど、倒しちゃった分は自動で補充されるってわけだ。
……せっかくだから、ここも塩のダンジョンと同じシステムを導入して、いずれは冒険者たちに公開したいよな。
まあ、このダンジョンは明らかに難易度が高いから、当分の間はまともに攻略できねえと思うけどな。
そもそも魔物じゃなくて、環境にやられて攻略どころじゃねーだろうし、対策装備を開発できるようになるまで突入は無理だろうな。
「……あれ? そういや、空洞の連中はコアルームのことを知ってるようだったが……あいつらどうやって下まで降りてたんだ?」
「……昔はここも狭くて、マナも今より少なかったので、ここまで熱くありませんでしたからね。それに、まだあまりお友達もいなかったので人族たちも降りてこられたのですよ」
「なるほどなー、魔物もだけど、熱くなかったんなら納得だわ」
「たまに私と意思が繋がる人が居ましてね、危ないから来ないようにと伝えていたのですが、気にせず通ってくれて……」
「パンさんも言ってたけど、たまにそういう勘がいい人がうまれんだな……」
「ただ、マナが溜まるにつれて気温が上がっちゃいまして……広くすることで温度を下げようとしたのですが、それじゃだめだったみたいで、今では誰も入れなくなっちゃいました」
「空洞の人もいってたよ。昔はみんなで毎日磨きに通ってたって」
「懐かしいですね……こうして、さみしい日々を送っていたところに、姉上の気配を感じたんです。自分とよく似た気配、それが自由に動いている……お話を聞いてみたくて、がんばって分体を作って飛ばしたのですが、大正解でした!」
より強く意思を伝えられる距離までルーちゃんを誘導し、なぜ動けるのかを聞こうと思ったら、その原因がのこのことやってきたと……まあ、結果オーライってことだね。
ドワーフたちが来られないなら、こちらから会いに行けばいい。
これからはそれができる。
もう……寂しい思いをすることはないだろう……っていうか、俺がさせねえ。
今日から、もうずっと楽しい日々を過ごさせてやっからな。




