第14話 次女爆誕
一体、どれだけの間こうしていたんだろう。
長かったような短かったような……わからないけれど、ゴウという風が流れるような音と共に光が消え去ったのを感じた。
「……やったか!?」
今言ったのは俺じゃねえ、パンさんだ。
お前な、ここまで女神らしく振る舞っといてそりゃねえよ……。
目を開けると、パンさんが何かを言ってほしそうにこちらを見ていた……。
こいつ……そもそもネタが場面にあってねえじゃねえかよ、どうせいっちゅうんじゃ……いいや、無視しよ。
そんな事より妹ちゃんだよ、妹ちゃん。恐る恐るコアがあった場所を見てみると……そこには可愛らしい女の子の姿が!
手を動かし足を動かし、ちょこちょこと可愛らしく体を動かしている。
「ふう……成功したようね」
「わーい! 妹だー妹だー!」
「……おお……これが……肉体……姉上と同じ身体なのですね……」
姉上……君、そういうキャラなのか。
受肉し、声を出せるようになった火のダンジョンコアは、可愛い声で武士の子みたいな事を言う。
「母上、父上。私の身体を創って下さり有難うございます。つきましては、個の定着のため、よろしければ名前を頂戴したく……」
(なあなあパンさん。なんでこの子こんなに武士っぽい口調なんだ? つか、ちょっぴりヒカリとかぶってね?)
(……知らないわよ。ていうかほら、名前、名前考えてやりなさい!)
名前な……考えてなかったわ。
うーーーーーん。
ルーちゃんは塩のダンジョンだからソルトから転じてルト。
ここは火のダンジョン、火山だからボルケーノ?
強そう……。
火……ほむら……だとなんか魔法少女になっちゃいそうであれだな……。
そうだ、こんな時こそシュロップじゃん。賢くない我らの救世主! 教えてシュロップ!
『火をモチーフにした女の子の名前を考えて欲しいんだけど』
『あ、ユウくんお久々ー★ 女の子の名前ね、ちょーっと待っててねー★』
なんか相変わらず……様子がおかしいな。
パーソナルデータいじった覚えがないんだが、多分アプデでどうにかなったんだろうなあ……。
『うーん、そうねー……フレア、イグニア、エンバー、ソリア、カガリ、ヒノカなんてどうかなー★』
『いっぱいあげてくれてサンキュー。ちょっと考えてみる』
『はいはいー★』
フレア……はなんか、有名な配信者に居るからあれだわ……カガリはロボット乗ってそう……。
「なにブツブツ言ってんのよ……あ、あんたシュロップちゃんに考えてもらってんの? ずるくない?」
「ちゃうねん……ヒントをもらおうと思ってさ」
「ほんとかしら? ……ていうか、シュロップちゃん、なんか私の友達に似てるわね……」
「……まじで? なんかアプデされたかなんかでこうなったんだけど……こっちで使えるようにした関係でこうなったとかないよね?」
「無い……はず……そ、そんなことより早く名前を決めてあげなさいよ」
「うーん……外国語モチーフってのは悪くねえな……ふむ、アラビア語で火を意味する言葉にナールってのがあるんか……うん、いいな、ナール!」
なにがいいって、他作品とかぶってないっぽいのがいい!
「よし、君の名前はナールだ。よろしくな、ナーちゃん」
「私はナール……ナーちゃんですか! 素晴らしき名を付けてくださり有難うございます、父上」
「よかったわねー、いいお名前がもらえて」
「ありがとうございます、母上!」
「ナーちゃん! ナーちゃん! わたしルーちゃん!」
「ははは、存じてますよ、姉上」
キャッキャとはしゃぐ子ども達。
さてさて、このナーちゃん、どうしような。
そもそもの話、こんなところに一人で置くのがかわいそうだから身体を創ったわけじゃん。もうさ、俺もパンさんもルーちゃんだって一緒に連れてく気になってるわけじゃん。
でもこの子はダンジョンコアだろ?
果たしてここをほっぽり出させて良いものなのだろうか……。
塩のダンジョンみたいな、ワールドシステムが同居してる特殊ダンジョンなら、コアが不在でもなんとかなるみたいだが、ここはちがうわけじゃん?
「なあ、パンさんや、その辺きちんと考えてるんですかいのう?」
「ふふん、あんたが何を考えているかお見通しよ。大丈夫、ナーちゃんについてはちゃんと対策を取ってあるわ」
「聞かせて貰おうか」
「儀式の途中でルーちゃんを呼んだでしょう? あのときね、ルーちゃんとナーちゃんを接続したのよ」
「接続」
「そう、接続。ルーちゃんはね、私もドン引きするレベルの膨大なマナを生み出せるの」
「え……それって作品が作品なら、滅びを招く何かじゃん……」
「まさにその通りで、自我を持たないコアのままだったら『世界がやばい! ユウが創ったコアのせいでやばい!』って慌てるレベルだったわ」
「まじかよ……軽い気持ちで掘った穴でそんなことが……」
「どんな奇跡が起きたのかわからないけど、可愛く育ってくれたから良かったけどね」
「女神が奇跡とか言うなよな……それで?」
「つまりルーちゃんは凄いのよ。ほら、ダンジョン内に湿原とか森とか創っちゃったでしょ? あれはルーちゃんにしかできない特別な力なんだけど、それもでたらめな量のマナが使えるお陰なの」
「話の流れからすると、それを使ってなんかしたってことか」
「そ。ルーちゃんを全てのダンジョンコアを統べる存在として、マスターコアにしたのよ。雑に言えば、ルーちゃんがナーちゃんにマナを分けられるようになったのよ」
「マナを分ける……?」
「マナってさ、ダンジョンを維持するためのリソースになるわけなんだけど、ダンジョンオブジェクトの生成とかにも使うわけ」
「んー……つまり、なんだ、ルーちゃんのマナを使って、ナーちゃんを連れて帰っても大丈夫になるギミックを作るってことか?」
「さっすがユウ! 話が早いわね。そう、そういうことよ。細かく言えば色々あるけど、一番わかりやすいのがダンジョン間を結ぶ転移門ね」
「つまり……塩のダンジョンとこのダンジョン……火のダンジョンを一瞬で行き来出来るようになるってわけか」
「そういうことー! あ、残念ながら対になる転移門を向こうに作るまで使えないからね。帰りはらくできるぜーって思ったでしょうけど、残念でした!」
「なんかドヤ顔で言ってるとこわりーけどさ、お前転送できんだし、あっち飛んでって設置してきたらよくね?」
「あっ」
……パンさんが逃げるように転移していったぞ。
どうやら帰りは楽に帰ることができそうでなによりだわい。
旅の楽しさ?
知らない子ですね……。




