第13話 火のダンジョンコア
というわけで、ここの子をルーちゃんの妹とするために、受肉させる事になったわけなんですけれども、ルーちゃんがこうなった経緯はパンさんもはっきりとは解明できてねーので、取り敢えずおんなじ状況を作りましょうかって感じになりました。
はい……そうなんです。
なんと、ダンジョンの、コアルームで妹ちゃんの設定画を描く羽目になりました!
ダンジョン物のラノベや漫画は星の数ほどあるけれど、こうして、攻略前のダンジョン最奥で、コアにお願いされて設定画を描くっつうのは、なかなかないことだと思うぜ。
なかなかに得難い体験だわ……。
「あーでもなー、机がないとなー、描きにくいなあ」
「はい、どうぞ!」
「俺さあ、愛用の椅子じゃないと……」
「あっちからもってきたわ!」
「はあ? うっわ、マジで俺のじゃん! つうかお前、俺の部屋に……ああ、だったらついでにリンゴパッドとペンシルも持ってきて……いや、あれもだいぶ古いから新型が必要だな……なあ、そろそろ発売される頃だし、りんご屋行って買って……」
「いいかげんにしなさい! いいからさっさと描けっての!」
「ぐほっ」
ちい……流石に調子に乗りすぎたか……。
だって、冗談で言ってんのに猫型ロボットみたいにホイホイホイホイだしてくれんだもん。ついつい悪ノリしちゃうのもしょうがねえじゃんな。
まあ、でもリンゴパッドとペンシルあるのはでかい。
俺はデジ絵で育ったから、そっちのがサクサク描けんのよね……しっかしどうすんべな?
ここの子って、火のダンジョンコアとかそういう感じなんだよね? じゃあ、そっち方向の擬人化でいいかな?
炎とか火をモチーフにして……服やら髪やらはそれでいいとして……後は見た目年齢をどうすっかだなー。
「なあ、パンさん。この子、何歳くらいにしたらいいと思う?」
「今のルーちゃんと同じくらいで良いんじゃ無いの? 妹になりたいみたいだし、それでいいでしょ」
「たしかに。今のルーちゃんは……十二歳くらいか? なんかすくすくだよなあ……」
「今のルーちゃんもかわいいけど、もうちょっとだけ八歳ルーちゃんを見守っていたかったわね……」
「うむ……あの頃からしか得られない栄養があるからな……まあ、大きくなってもルーちゃんは変わらずきゃわわなのだが」
「それはそう」
うーん、年齢は十二歳前後……か。
まいったな、ぱっと出てこねえ。ルーちゃんはどうしたっけって、あの子は元々は冬の原稿のオリキャラだったからなあ……こっち来てから考えたわけじゃ……あ、そうだ、リンゴパッドがあるならルーちゃんのデータが……あったあった。
開いて、別ファイルとして保存して……よーし、これをベースにして考えていこう。
髪型は……そうだな、ボブくらいにしてみようか。
体格はルーちゃんと同じ感じで……今の身長は百三十センチないくらいかな?
そうだ、この土地らしく猫耳にしよう……ヒゲは……いらねえよな、女の子だし。
そんで、火を司ってる感あるから、耳のフチは炎が揺らめいているようなイメージで……となれば髪の色と目の色は赤だな。
そうなると、肌の色はやや褐色がよさそうだな。猫耳があるなら尻尾も必要だよな。尻尾の先に炎をまとわせて……服装はアラビアンな感じで。
このラフを元にして……下描きして……ああくそ、レイヤー間違えてるし……くっそ、描き直しだ。
……
…
……ふう、こんなもんかな。
久々に絵を描いたのでちょっと雑になっちゃったけど、肝心なのはデザインだからな……。
「……できたぞ……われながら、頑張ったと思うわ……」
「どれどれ……あ、ふーん」
「なんだよ」
「ごめん、普通に良い感じだったから、上手くリアクション出来なかったわ……」
「ああ、そういう……あとはパンさん、まかせたぞ」
「え、ええ……任せておいて!」
流石のパンさんも、ちょっぴり自信がなさげだわ。
偶発的に産まれたルーちゃんの再現を意図的にしようとしてんだ、それが容易いことじゃないってのは俺でもわかるぜ。
パンさんはやるときゃやる女神だが……この女神様、やるはやるでも、やらかす時もあるからな……。
ああ、不安になって来た……頼むぜ? 失敗してやべえもん生み出したりしねえでくれよ? 邪神像みたいな娘が爆誕してみろ、きっとどう接したらいいかわかんなくて気まずくなるぞ。
「……ふう、じゃあ、始めるわね……」
パンさんがコアの上にハガキサイズの紙を置いた。
そう、さきほどモバイルプリンターで印刷していた、俺が描いた設定画だ。
その設定画に手を置くと、目をつぶって何かをブツブツと呟きはじめた。
コアの周りに魔法陣のようなものが大量に現れ、ソースコードのようなものが流れては消えていく。
おお……呪文的ななにかを詠唱してんのか……すげえな、今日のパンさん、ガチで女神様みたいだわ……こらこら、こっち睨むな! 儀式に集中しなさい!
しばらくの間、ファンタジーのような、SFのような……不思議な感じがする光る文字列がコアの周りをくるくると回っていたのだが、ある時、それがパッと消え……コアに向かって、天から光の柱が降り立った。
この光……めちゃくちゃあったけえ……すげえな、これって多分神気だろう? これまでもちょいちょい、それをかんじる機会はあったけど、段違いに強烈っていうか、変な言い方をすると、古いネタだがめちゃくちゃバブみを感じるわこれ……。
女神の力ってやつなのかね? なんかすっげえ、母親的な包容力を感じる光だ。
『ルーちゃん、ママの方に来てコアに触りなさい』
この声……パンさん……だよな?
いつもと違って凛々しいというか、清楚感溢れる声だわ……。
ルーちゃんが吸い込まれるように光の柱に消えていくと、光量が更に増して……くっ、眩しすぎて目を開けてらんねえわこれ。




