第12話 ユウ、もう一人娘を……欲しいと思わない?
「えっと……今、なんて言ったの?」
「もう! ユウったら! 何回聞いてもおなじだよ? だからね、この子にお願いされたの。私のお姉ちゃんになってって」
お姉……ちゃんだと……?
ルーちゃんはダンジョンコアだから、そう言われるのはまあわかる……わかるんだけど、言われるってのがわからねえ!
「のうのうパンさんや、はっきりとした自我を持つダンジョンコアというのはルーちゃんだけだったのではなかったかの?」
「その通りじゃ、ユウさん。ルーちゃんは私とあんたでこさえた特別な力を得た特別な子じゃからな……ここのコアはどうしてこうなったのかのう?」
「質問に質問で返すな!」
「だってえ……」
「……こういうときは状況を整理するんだ……まずはおさらいだ。ダンジョンの発生条件は?」
「ええと、洞窟なんかにマナが溜まると、稀に結晶化して魔石になるんだけど、それが土地とうまく結びつくと、コアとなって周囲をダンジョン化する……確かそんな感じだったはずよ」
……なんか前に聞いたのよりも詳しい気がするな……まあいい。
「まず、ここがダンジョン化したのは、どう考えてもあの大きな空洞のおかげだろうな」
「ええ、そうね。ここは入り組んでいて、あちこちに広がっているから、とってもマナが溜まりやすい……確実にダンジョンが生まれる環境だと言えるわね」
「問題は、ここで生まれたこの子が特別な力を得ていることだな」
「うーん……火山という、強烈なエネルギーを秘めた場所だから変異した……とかどうかしら?」
「あー、なんかでそういうの見た気がするわ。割とあり得るかもしれん……うん?」
いやちょっと待って。
ここってさ、どう見ても活火山じゃん?
ここの上層部にはヒゲと猫耳たちが暮らす空洞があるわけじゃん?
それも、マグマの熱が境界越しにほのかに届くような距離で、地面から蒸気が吹き出したり、温泉がそこらにあったりするような場所じゃん?
……パンさんはあったかいからって、ここに住民を配置したらしいが、火山がドカンとやらかしたらイチコロじゃん。
空洞に溶岩が流れ込んで、とんでもないことになること間違いなしじゃん。
けど、今も呑気に生活しているあたり、今日の今日までそんな大災害が起きたことはないのだろう。
今はこうして、ダンジョンがあるから、このコアちゃんが噴火を抑えてるんだろうなって推測ができるのだが、パンさんがダンジョンのことを知らなかったっていうことは、元はノーガードだったってことじゃん。
……パンさんはアホだが、住民にくっそ甘いから、なんの対策もなしに住まわせるようなことはしねえはずだ。
……なんか嫌な予感がしてきたぞ。
「パンさんや、ここって今までに噴火したことはあるんかいの?」
「まだそれやるの? 馬鹿ねあんた、するわけないじゃないの。しちゃったらみんな死んじゃうもの」
「するわけない……? つまり、なにか仕掛けがあったのかの?」
「当たり前でしょ。ここはね、火山を暖房がわりにしてるわけ。だから、暴発しないように結界張って抑えてんのよ。ふふん! 私が護りました! みたいな? ドヤァ!」
「やっぱお前じゃねえか!」
「にゅぺっ!?」
パンの額に思いっきりチョップを食らわせてやった。
「な、何をするのよ……痛いじゃないの!」
「……よろしい、スズムシでもわかるよう、やさしく説明してあげましょう」
「スズムシってひっどいわねえ……」
「いいかい? ルーちゃんは塩の洞窟に溜まったマナが、お前の加護や俺の落とし物の影響をおもっくそ受けて生まれたコアだろ?」
「それがどうしたのよ……」
「問題です。この火山には女神様が『噴火避け』の加護をがっつりかけた火口が存在します。そんな場所にマナが溜まったらどうなるでしょーかっ?」
「ピポーン!」
「はい、パンさん」
「簡単よ! 私の影響受けたコアが生まれ……あっ!」
「大正解! パンさんには五ポイントを進呈します!」
ぐりぐりと五回、強めに頭を撫でてやった……あれ、こいつ嫌がんねえな……。
「えへへ……そっか、私の加護の力が影響を与えて自我が芽生えちゃったのね……」
「でもなんで、後から生まれたルーちゃんをお姉ちゃんにしてえんだろうな?」
「なんででしょうね?」
うーん、と唸り、暫く考えていたパンだったが、やがて何か閃いたような顔をしてとんでもないことを言いやがった。
「ねね、ユウ」
「……なんすかパンさん」
「あのね、ちょっと推測でしかないのがアレなんだけどさ、実際に試さないとわからないの……」
「却下で」
「まだなにもいってないじゃないの! ねえ、絶対楽しくなるからやりましょう! ね! ね!」
「その、なにか怪しい遊びに誘うみたいなのやめろ!」
「……ねえ、もう一人娘を……欲しいと思わない?」
「ちょ! やめろ! まだ明るい! って馬鹿野郎! まだそこまでの関係じゃねえだろ!」
「明るい? 何を言って……あ、ば、ばかあ! そういう意味で言ったんじゃないわよ! このすけべ!」
顔を真っ赤にしたパンさんにしこたま叩かれた。
くっそ、なんだこれ、地味にいてえ……変なスキルつかってんじゃねえだろうな……?
「もう! ルーちゃんみたいに身体を作れないかなっていってるの! この子もきっとそれを望んでるとおもうの。ねえ、ユウ、手伝ってよ、おねがい!」
「大正解だよママ! この子もね、私みたいになりたいんだって。皆とお話したり、ご飯食べたりしてみたいんだって!」
お話……か。
ルーちゃんは意思の疎通ができるようだが、それはきっとコア同士だからなんだろうな。
眷属たちとは話せるのかもしれないけれど……あれだな、話し相手が部下しかいないみたいな感じって思うと……。
うん、やってやろう。
いっぱい話をして、美味しいものを食べさせて、あっちこっち連れて行ってあげよう。
ようし、俺に任せておけ!
待ってろ、今すぐパンさんと二人、仲良く励んでやっからな!
「その思わせぶりな言い方やめなさいよ!!!」
勝手に心読んでなに言ってんだよ、このすけべ女神が!




