第11話 コアルーム
いやあ……高温多湿環境ってやべえですよね。
なにがやべえって、不快すぎて脳が死ぬからやべえんです。
ダンジョンコアを触った瞬間、なんでか知らんけれども暑さを感じなくなりましてね。
ストレージから取り出した冷たい水をパンさんと二人仲良くグイっと決めたら、頭がスカーっとして、みるみるうちに冴えて来ましてね……。
なんというか……先程までのあれはなんだったんだろうなと。
なんかちょっと変なテンションで恥ずかしかったよねって……。
パンさんと顔を見合わせ苦笑いですわ。
「つうか、コアルームに来たの、何気に初めてだわ」
「なに言ってんの、ルーちゃんが住んでるんだから、うちだって立派なコアルームでしょ」
「……確かに……いや、確かにそうなんだが、なんかこう……あるだろ!」
「まあ……わかるけどさ」
ルーちゃんは、塩のダンジョンに本体があるとかじゃなくて、紛れもなく本体自身が歩き回ってる感じだからな……。
まあ、うちのことはいいんだ。
今はせっかくのコアルームを楽しもうじゃ無いか……って、なんか微妙だな?
扉は立派だったのに、お部屋自体は普通の洞窟とあんまり変わんねえ。
もっとこう、さ。
火の神殿みてえな感じでさあ、いかにもな石柱が立っていて、その中央にある祭壇に、メラメラと燃える炎があり、その中に赤く輝くコアが……みたいなさ。
いやまあ、壁から真っ赤に焼けたクリスタルが生えてるっつうのも、なかなか非日常的で、それらしくはあるんだけどな。
ここは火山洞窟モチーフのダンジョンだからなあ……あんま華やかな装飾とかは逆に似合わねえかもしれんな。
天井だって、塩のダンジョンみたいに空があったりするわけじゃねえし……って、なんか随分天井が高いな?
高すぎて天井がみえねえっつうか……なんか奥の方に光が見えるぞ……?
あ、そうだ! 俺のスマホちゃんは望遠レンズがついてるんじゃん。
これでもまだ足りねえか……んならば、デジタルズームじゃ!
……おお、よしよし……いけそうだな……白飛びしてっから、明るいところに露出を合わせて……って、これ……空じゃねえか!
どんよりとした雪雲がガッツリ見えるんだが?
天井が高いんじゃなくて、天井が無いのかよ!
あっ……。
わかっちゃったわ……。
ここはグラグラと煮立つマグマに囲まれたダンジョン……もう、何度も口にしてたじゃねえかよ。
火山型ダンジョンって。
そうかあ、コアルームがあるのって、火山の火口かあ……。
随分と細長くて、深い火口だが……ここは地球じゃなくてリプラシルだからな。
どうせ、パンさんが雑にそれっぽく作ったに違いないぜ。
……パンさんが作った火山って思ったら、急に怖くなって来たな。
大丈夫? いきなり足元からドン! って噴火したりしねえよね?
ここの制御ってこの子がしてるんかね?
……頼むぜ、ダンジョンコアちゃん……火山さんを大人しくさせておいてくれよな……。
コアを撫でつつ、改めて観察をする。
サイズは結構大きくって、幅六十センチ、壁から出てる分の長さは一メートルくらいかな?
赤く燃えた、六角柱ってのがまたかっこいいよな。
そんでこれ、めっちゃ光ってんだけどさ、焼けて赤くなってんのかなってずっと思ってたけど、炎のように揺らめきながら光ってるんだな。
だから、触ったら熱そうにみえるんだけど、触ると熱いどころかひんやりとしてるんだから、軽く脳がバグっちまうわ。
……っと、体も落ち着いたし、本題に戻らねえとな。
「さて……ルーちゃん。どういうことなのか、説明してくれるかい?」
「普段のルーちゃんなら、絶対に一人で行かないわよね? どうして私たちを待たずにダンジョンに入っちゃったの?」
「ユウ、ママ……心配かけてごめんね。けどね、どうしてもすぐに行きたかったの」
「どうしても? 何があったのか、教えてくれるかい?」
「うん、あのね!」
◆◇SIDE:ルーちゃん◇◆
「んん……ふあぁ……朝かあ……ねえ、ユウ、起きて、お腹すいたよ、起きて、起きてって……うーん、ゆうべ、寝るの遅かったのかな……もう、しょうがないなあ」
ゆうべはみんな楽しそうにしてたもんね、ユウも変な顔して踊ってたし、ママはお酒をグイグイ飲んで笑ってたし。
こりゃ、しばらく起きないね……。
「あ、おはようルーちゃん。ユウは?」
「おはよ、クロベエ、ヒカリ。あの二人はだめだね、しばらく起きそうにないよ」
「私が朝方起きた時、親父殿も母上殿も、元気よく騒いでいたからな……」
ああ、そりゃだめだ。
もう、しばらく起きないやつだね。
「ねね、お腹空かない? 向こうでおじさんたちがまだ騒いでるし、何かもらえないか聞いてこようよ」
「お、いいねー! 行こう行こう」
クロベエたちといっしょに、ドワーフのおじさんに聞いてみると、温かいスープを出してくれた。
……ってこれ、ヒッグホッグ汁だ。
「ユウさんがな、〆はこれじゃーって作ってな、それをぐいっと食って、寝ちまったんだよ。〆がなにかは知らねえが、うめえからたっぷり食っていきな」
「あはは、そっか。ありがとう……うん、おいしい!」
これ、ほんとおいしいよね。
私はまだお酒を飲めないけど、朝のスープって感じで好きなんだ……っと、ごちそうさま。
うーん……まだまだママたち起きないだろうし、どうしようかな?
そうだ、クロベエたちと探検しよう! 昨日はあんまりみて回れなかったからね。
みんなで仲良く空洞を探検だ。
熱い湯気が吹き出す岩に、変な匂いのお池。
……これ、ユウが言ってたオンセンってやつかな?
お風呂みたいだけど、濁っているし、匂いは変だし。入っても大丈夫なのかなあ……。
じわじわ光るコケに、おおきなきのこ。みたことがない物がいっぱいで楽しいね。
「む、ルー様。面白い物が飛んでいるぞ、捕まえてくるか?」
「うん? わ、なんだろうあれ……待ってヒカリ。こっちに来るよ」
まあるくて、赤く光る何かがこっちに向かって飛んでくる。
なんだろう……虫さんの魔獣かな?
……あれ、この魔力……なんだろう、知ってる感じがするな……。
『こっち……こっちにきてほしい……』
(あれ……声が……やっぱりこの子って……うん、ぜったいにそうだ! そっちにいるのね? うん、会いにいくよ!)
「クロベエ、ヒカリ。ダンジョンの探検に行くけど、ついてきてくれる?」
「うん、いいよ。どうせユウたち起きないし、ヒカリと遊ぶのも退屈だしね」
「なっ! 嘘を言うなクロベエ! 今朝はあれだけ喉を鳴らしていたではないか!」
「う、うるさいなー!」
「もう、いいから行くよ! ほら、あの子が待ってるから早く!」
クロベエたちのお尻を叩いてあの子を追いかける。
楽しそうにお酒を飲むおじさんたちに手を振って、奥へ奥へ。
あ……あそこ、境界だ……うん、そこから先が、あなたのダンジョンなんだね。
よいしょっと……おじゃましまー……うう……なにこれ……すっごく……あっつい!
「うわー、ルーちゃんだめだここ、暑くてつらいよ」
「わ、私はクロベエと一緒なら……平気……だが、ここは……くっ、耐えろ私……!」
「うう……会いに行きたいのに……これじゃ……ママでも無理かも……うん?」
どうしたのかな……赤い子が、ふわりとこっちに飛んできて、くるくると私たちの周りを回り始めたよ……あれ……暑くないよ!?
「暑いの、なくしてくれたの?」
『うむ、きづかず、すまなかった』
「ううん、ありがとう! これであなたのところまで行けるよ」
クロベエたちも暑いの平気になったみたいだし、もうへっちゃらだね。
「じゃあ、行こうか、クロベエ、ヒカリ!」
「うん、おれ、もう暑いのになんか負けないもんね!」
「私もだ! そうだ、ルー様、私の背中に乗るといい!」
んー……そうだね、早く会いに行きたいし、その方がいいね。
「わかった、お願いね、ヒカリ! それじゃ、奥へ向かってれっつごー!」
「「おー!」」
ヒカリもクロベエも足が速くてすごいね、ぐんぐん、ぐんぐん奥まで進んでいくよ。
あ、赤いトカゲさんがいる。こっちは沼地の女の子みたいな魔族だね。
ここも面白い子たちがいっぱい住んでて楽しいね。
うちにはいない子ばっかりでみてて面白いや。
どんどこ、どんどこ走って、飛んで。
ときどき、赤い川から大きなトカゲさんが飛び出してくるけど、クロベエがパンチで追い払っちゃう。
クロベエも強くなったよねー。
ときどきモル丸に頼まれて訓練してるもんね、二人ともどんどん強くなってて頼もしいよ。
……あ、大きなトカゲさん……と、その後ろに扉があるね。
どうやら、ここがコアルームみたい。
トカゲさんは……ああ、フロアマスターなんだ、私はルーちゃん、よろしくね。
トカゲさんに扉を開けてもらって、中に入ると、わあ……。
「あらためまして、私はルーちゃん、塩のダンジョンのコアだよ!」
赤くて、メラメラしてて、とってもかっこいい赤い子が、奥の壁でキラキラと輝いている。
『ルーちゃん、わたしは、ひのダンジョンコアだ。どうか、わたしのあねうえになってほしい』
え……私が……お姉ちゃん?




