第9話 宴の後の大事件
……うう……朝か……朝みたいですね……。
頭が痛い……。頭が痛いのだ……。
多少頑丈にされているはずのこの身体を持ってしても、あんだけ飲んだら二日酔いになっちまうようだな……。
おはようございます……ユウです。
目を覚ますと、出した記憶がない自分たちのテントの中に居ましてね……。
隣を見れば、シャツにパンツ姿のパンさんが寝ていまして、めくれたシャツや半分脱げたオパンツ様から、それぞれ見えてはいけない物が見えそうになっていました。
見る人が見れば『事後』と、ニヤリと笑いながらいいそうな状況ですけどね。
……この、バリバリと腹とケツをかきながらいびきをかいているパンさんを見てもまだ言えるんですかね?
大体にして、ルーちゃんも居るんだぞ? 別にそういう空気にはならなかったと思うぜ……ってルーちゃんが居ねえじゃん。
先に起きてクロベエたちと遊んでんのかな?
ストレージから水が入った樽を出し、桶に注いで顔を洗う。幾分かスッキリしたのでテントから出てみたら……ルーちゃんどころか、クロベエとヒカリも居ねーじゃん。
んー……ネコさんたち連れてお散歩にでもいったのかな?
クソデカキャッツ二頭を連れた少女とか目立つだろうし、そこらの住人を捕まえて聞けば行先が分かるだろう……って……。
これは……酷い……。
テントから出たら、そこは広場だった……のは、まあいいんだ。
どうせ、酔っ払ってそのままその場にテントを張って寝たんだろうからな。
問題は、この広場の荒れっぷりだ。
昨日の大宴会の残骸――椅子やテーブル、食器に食材……とにかく様々な物が散らばっていて、それに混じってポツポツとヒゲと猫耳が落ちている。
何も知らねえやつが見たら、スタンピードでも起きたんじゃねえかって思うだろうし、誰かいないかー!? って叫びながら生き残りを探すレベルだぞこれ……。
そしてまた、この落ちてる連中ときたら。
どいつもこいつも、幸せそうな顔してやがってよお……。
まあ、一晩中飲んだら、流石のドワーフも酔いつぶれ……うっわ、氷山にへばりついてるドワーフが何人か居るんですけど……。
ガリガリと氷を削りながら、黙々と酒を飲み続けてんですけど……。
さすがの俺もドン引きだわ……。
「マジかよ……お前らまだ飲んでたのか」
「おお、ユウ! 夕べは凄かったなお前! あんなに笑ったの初めてだよ!」
「ほんとにね! あんたの踊りめちゃくちゃ面白かったわ!」
……踊ったのか……踊ったんだな……踊ったらしいですわ……。
人は記憶を失うほど酔うと、本性が現れるとか言うけどさあ、俺はとにかく陽気になって妖しい踊りや歌等を披露してしまうらしいんだよな……。
そうかあ、また踊ってしまったんだなぁ……。
まあ、過ぎたことはしゃあねえや。
ずっと起きて飲んでたんならルーちゃんたちを見てるはず。ちょうどいいから聞いてみよう。
「ところでさ、ルーちゃん見なかった? うちの可愛い娘ちゃん」
「ああ、あんたの娘かい? デカいの二匹連れて奥に向かったよ」
「危ないからって止めたんだけどねえ、クロベエ達がいるし、私は平気だからって行っちゃったんだよ」
「まあ、あんなでっかい魔獣が居るなら……平気かもしれないけどなあ」
二人の酔っ払いが指をさしたのは、空洞の奥にある深層へと繋がる道……ああ、なるほど……ダンジョンに行っちまったんだな。
ダンジョン……か。
これが塩のダンジョンであれば、なんも心配することはないんだが……な。
ここのダンジョンにもコアがあり、魔物たちはその支配下に居るんだろう?
ルーちゃんみたいに、高度な意識が芽生えていないとしても、原始的な生存本能くらいはありそうなもんだ。
ルーちゃんたちが、いつもの調子でガンガン潜っていったら、外部からの侵入者と判断され、魔物をけしかけられたり、なにかトラップのようなものを使われたりするんじゃねえの?
……やべえな。
クロベエとヒカリはそれなりにつえーけど、それなりにだからな。
なにが怖いって、ここのダンジョン、いつからか魔物が出るようになって、魔獣なんかは空洞の居住エリアにまで来るそうじゃねえか。
そんなやる気勢が、それも、おそらくは結構強まってるであろう魔物たちがひしめくダンジョンなんだ、あの二頭じゃ敵わねえ可能性は十分にある。
……まずはパンさんを起こしてからだな。
急いでテントに戻ると、パンさんがケツを丸出しにして爆睡していた。
ばかがよー!
「おうこら! ケツ出してる場合じゃねえぞ! 起きろ起きろ! 今すぐ起きろ!」
「うんん……ぎゃーーー! なにしてんのなにしてんの! なに女神の生尻叩いてんの! てか、なにパンツ脱がせてんのよ! 事後? 事後なの? うわーーーーとうとうやっちゃった!!!」
「うるせえ! 脱いだのはお前だし、なんも起きてねえっつーの! いいから起きろ! それどころじゃねえんだよ!」
キャアキャアとうるさいパンに事情を説明すると、さっと頭に手をかざして……直ぐにシャキっとした顔をして落ち着いた。
……ああ、回復魔法的ななにかで酔いを覚ましたのか……俺にもやってくれ……ふう、スッキリ!
「なんてことなの……まったく気がつかなかったわ……ごめん、ユウ……」
「いや、俺も爆睡してたし、しゃあねえよ……とにかく急いで後を追おう」
「そうね……急ぎましょう!」
ルーちゃん、クロベエ、ヒカリ……無事でいてくれよ!




