第4話 洞窟の種族
唐突に現れたケモミミ……それをバーグは妻だという……。
異種族間の結婚……そういうのもあるのか、そう思ったが、バーグから聞いていた女性の特徴の話がどうにも引っかかる。
なので、バーグ夫妻には少し待ってもらい、有識者に聞いてみることにした。
「パンさん」
「……」
「おいこら、女神」
「……」
「寝屁神さま♥」
「だ、誰が寝ながらおならしてるっつーのよ!!!」
「なあ、なんなん、あれ」
「……どわーふ……よ?」
「ああ、そうだな。バーグは俺がよく知ってるドワーフだとも。酒が好きでヒゲモジャでちっこめで、ああ、テンプレどおりのドワーフだとも」
「で、でしょう? あんなんどっからどう見てもドワーフじゃないの……」
「じゃあ、バーグの奥さん……ヒルダは?」
「……ど、どわーふよ?」
「マジで言ってる?」
「え、あ……はい……」
「なあ……あれってよ、どう見ても猫人族とか、ニャン族とか……ウサ族と同じカテゴリだろうが!」
「そ、そうかしら?」
「……日本のオタクを一万人連れてきてヒルダを見せて『このファンタジー種族はオタク的になんと言う』って聞いてみろよ! 全員で声をそろえて『ケモロリ!』って言うぞ?」
「そこはバラけるかもしれないじゃない……」
「かもしれんが、だとしても『ドワーフの女性です』って言う奴は一人もいねえよなあ!?」
「いひゃいいひゃい ほほをひゅねりゃないでぇ!!!」
ちっ……今日は珍しく粘るな……いつもならとっくに白状してる頃なんだが……。
こうなったら、ルーちゃんに力を貸してもらうしかねえな。
「パンさん正座」
「え……?」
「いいから」
「……はい」
「ルーちゃん、ここに立ってママの目をじいっと見つめるんだ」
「うん、わかった!」
よくわからんが、またなにか面白いことをするらしいと、ニコニコと笑みを浮かべながらじっとパンを見つめるルーちゃん。
ほんとかわゆ。
「ルーちゃんの澄んだ瞳を見ろ。お前はこの瞳に嘘をつけるんか? つけないよな。さあ、ここの種族について正直に話せ」
「ママ? ちゃんとはなそ? しょうじきに言えばユウも許してくれるよ?」
「……わ、わかったわよ。でも別に悪いことしたわけじゃないんだから。絶対に怒らないでよね」
「怒らない怒らない。仏のユウさんに何言ってんだお前」
こいつが予防線張ってるときって、決まってどうでもいいオチが待ってんだよな。
どうせ、テンプレドワーフだと華がないだとか、モフりたかったとかどうでもいい理由なんだろ?
もうさ、そういうのに慣れっこなのよね。
リプラシルがアホな世界だってのは、もう十分わかってるからさ、少しくらい馬鹿らしい話されても怒らねえっていうか、もうとっくに受け入れてるっつうの。
「あのね……ダイスで決めたの……」
「うん? 今なんて?」
「ダ、ダイスロールで決めたっていったの!」
「は? なんで?」
「う……あのね、このユリカゴ設計してるときにさ、息抜きに友達とTRPGしたの」
「TRPG……ね。まあ、おもしろいよね」
「でね、セッションが終わって一休みしてるときにね『うちのユリカゴにどんな種族置いたらいいかな?』って相談したのよ」
「ふむ、同僚の管理神か誰かに相談したのね」
「うん、同僚のブーちゃんにね。そしたらさ、ブーちゃんがね『ダイスで決めるのはどうかな★』って言ってね、ああ、それ面白いわねーってなったの」
「ん、待って理解が追いつかない……あ、ちょっと追いついてきた、追いついてきた……うん、えっと、リプラシルの種族はダイスロールで決めた、そこはわかった」
「あ、春の大地の子たちはさ、最初に作ったから……TRPG前に配置した子たちなんで、普通だから安心してね」
なにに安心しろと……まあ……キンタたちって妙に顔が整ってるくらいで、後は普通のヒューマンって感じだもんな。
あいつらに関しては、後出しで爆弾が出るようなことがないよって意味なんだろう……まあ、それについては良かったなって思うよ。
けど、それは今関係ないよな。
「それで……さ。なんで男女で種族が違うわけ?」
「う……違うくないし、違わないのよ」
「なんて? 」
「だから違わないの! バーグも、その奥さんのヒルダもドワーフなの!」
?
「俺の耳には、どちらもドワーフと聞こえたんだが」
「……それであってるわよ。種族を決めるダイスをね、間違えて二個振っちゃったの」
「おま、まさか……」
「そう……男がドワーフ族、女が猫族の特徴でシステムに登録されちゃって……でも、システム上はどちらもドワーフ族として登録されてるし、繁殖もできるから良いかなって……」
「あ~~~~!!! 理解が! 理解が置いて行かれたあ!!! 追いつこうとした今、まさに! 理解がマッハ5で置いて行かれたあ!」
「……それでね、ほら、私たち飲みながらやってたじゃない? 気づいたらワールドシステムにちょちょっとやっちゃってね……その、設定UIにダイスを組み込んじゃって……以降も同じノリで……ね?」
「んんんーーーーーー!!! 今聞いてはいけない話を聞いてしまった気がするーー!! 世界の仕組みがダイスロールで決められてるって聞いちゃった気がするーーー! 一般人の俺が聞いちゃダメなやつだこれ! あああああ! 窓に! 窓に! 窓にぃいい!」
「ちょ、ちょっと発狂しないでよ! だいじょぶだから! あんたは既に聞いても大丈夫な立場になってるから! ちょ、やめなさいって! ほら、みんな集まってきちゃうから! ね? ほら、大丈夫、だいじょーぶ……ね?」
はあはあはあ……。
いい加減な設定の世界だとは思っていたが、ここまでいい加減に作られてるとは思わなかったぞ……。
『お前たちって、神がダイス振ってノリで創造したんだぜ』なんて言われたらこの世界の人たちはどんな顔するんだろうな。
……みんな適当だから、なんやかんや普通に受け入れそうだな……。
じゃあいいかあ……俺が悩むようなもんじゃねえしな……モフモフのお耳が生えてても、ロリでもドワーフでいいじゃねえか……。
うん、この話は終わりだ!
自分を無理矢理に納得させ、この件はゴクリと飲み込むことにした。
こういうの、いつまでも引っ張ってるとろくでもねえことが起きるからな……。
ようし、次だ次! 切り替えていこう!




