第36話 そしてそれから……
早いもので、あれから一ヶ月が経ちました。
以前は静かだったこの辺りも、ダンジョン目当てで村からやってくる村人……いや、冒険者共ですっかり賑やかになっちまってね。
まあ、それはそれで悪くはないかなって。
前にちらっと『家からダンジョン内を監視できるシステムが欲しいな』って言ってただろ? それをさ、パンさんに提案してみたらあっさり通っちゃってね。
まあ、流石に自宅内に設置してはくれなかったけど、冒険者ギルドの事務所内にモニタが据え付けられてさ、そこから内部の様子が見られるようになったんだ。
暇つぶしがてら、魔物の餌食になる冒険者共を見ているとさ、冒険者たちの口から聞くだけじゃあわかんねえことが見えてくるんですわ。
俺に遠慮して悪いことを言わないようにしてる……てわけじゃないと思うんだ。
だって、最初あたりは、ちょいちょいクレーム貰ってたからな。
主にタルットがうぜえって話だったけどさ……。
わざわざ俺に言うまでもないような、こまかーいところがさ、見てるとわかるんだよね。
あ、これウザそうだなーとか、ここはこうすればもっと楽しく潜れるかなあとか。
おかげでダンジョンのバランスはさらに洗練され、以前よりもだいぶ稼ぎやすくなったんじゃねえかなって思う。
増員したドロロンたちも良くやってくれててさあ、慣れない村人たちの戦闘教員として大活躍よ。
ドロロンたちからしたら、不本意かもしれんが、彼らを討伐することで『俺たちも狩人みてえに戦えるんだ』っつう、自信もつくわけじゃん。
そうやって、コツコツ頑張って、ちょっとずつ戦えるやつが増えてきてるってわけ。
そうそう、ダンジョン前の施設も少し増えたんだよ。
冒険者ギルド内に併設してさ、村から仕入れた薬や食料、それと弓と矢なんかの武器を売る店を建てたんだ。
なんつうのかな、道の駅にある産直みたいな感じの委託販売形式でね、配達係の村人が商品を持ってきて、それと交換に前回の売上金を明細書と一緒に渡すような仕組みなんだ。
お金と明細書はシゲミチの所に回されて、彼がチェックした後、出品した村人たちにそれぞれ支払われるって感じ。
配達係は暇を持て余していた若い奴が何人か交代でやってくれてんだけど、ダンジョンに潜る連中がついでに護衛をしてくれるから道中も安心。
配達係には野営用にテントが貸与されるほか、うちの宿屋に無料で泊まれるってのもあって、今では人気の仕事になっているらしい。
そして、今まで合併を悩んでいた集落からもどんどこ村に流入してきたわけなんだが、それに伴って冒険者の数も爆増してなあ。
流石にリリィ一人じゃまわんねーやってことで、リリィの姉妹である、ラリィ、ルルゥ、レレイ、ロロムの四人を追加で雇い入れ、姉妹仲良く五人で回して貰っているよ。
それぞれが交代で受付、売店、ダンジョンの監視などをしててさあ、すけべなおっさん達からそれはそれはチヤホヤとされているらしいぜ……。
ほんと、男ってやつあぁよお。
ちなみに、宿屋もウサ族姉妹に任せてるんだが、そっちはナ行姉妹だったりする。
支配人代理のナナに厨房担当のニムとヌーラ、宿泊設備担当のネネとノノだ。
ネーミングセンスが終わってんのは自覚するレベルだっつうのによ、前にウサ族たちがわっと名付けを頼んできたじゃんかよ……。
その場で次々付けるハメになったら、誰だってこうなるって……。
今んとこは泊まるやつが多くねえから良いけど、将来的に客がもっと増えたら、宿も増築しないとな。
そうなると、従業員数も増やさないと……か。
……その辺の采配はナナに任せておこう。
増築はウサ族の大工に頼ませればいいし、従業員は声をかければ直ぐに集まるだろうし……。
ウサ族は優秀すぎるからな……あんまし俺がテコ入れするところがねえのよね。
「ユウ、そろそろ村だよ!」
「お、もう着くのか。いやあ、改良したクロベエ車、マジで快適だなあ」
「街道が立派になったおかげもありそうね。ほんとよくやってくれたわ」
「へへ、どうもどうも」
そう、実はわれわれユウ一家は、クロベエ車に揺られて移動中だったりします。
先日、配達係の少年からシゲミチからだと手紙を渡されてね、受け入れ態勢が整ったから、モルモルを連れてきてほしいって連絡を受けたんだ。
どうせだし、そのまま旅に出ちまおうってことでさ、もうね、わっくわくのうっきうきで支度をしてね、モル助の卒業試験を突破したモルモルたちを連れ、クロベエ車で出発したのさ。
今回、見事にモル助ブートキャンプを卒業したモルモルは五匹だ。
パンさんが「成績優秀モルモルはこいつね」と、教えてくれたやつを代表にし、「モルル」と名付けた。
残りの四匹はその補助として「モルモ」「モモル」「ルルモ」「ルモル」と名付けてやった。
今後、こいつらは村で働きながら、需要に応じて各自分裂し、増え、上下水道の仕事のほか、清掃やごみ処理などの仕事をするそうな。
……モル助の教育を受けているから大丈夫だろうが、村人以上に増えて、裏で村を支配したりしねえよな?
「ユウー、さっきから通知がうるさいんだよー。ヒカリ、ぜったい真面目に仕事してないぞー」
「そんなこと言ってっけど、ちょっとうれしそうだよな、お前」
「べべべつにそんなことはない!」
ヒカリちゃんなー。
ダメだって言ってんのに、ギリギリまで『ついていきたい!』ってごねるんだもん。
まあ、気持ちはわかるぜ? 俺が見てねえとこでお前らべったりだったらしいからな。
ぶっちゃけもう夫婦みたいなもんだし、俺だって離れ離れにしたかねえよ。
けどなあ、流石にフロアマスターが長期不在ってのはまずいじゃん。
クロベエは俺と行きたいって言うし、クロベエ車を引くという、大切な役割があるからな……。
パンさんに「どうにかならねえか」と相談したら、しょうがないわねえと……旧Dの声マネをしながら、どこまで離れても念話ができる首輪という、神具を出してくださったんだ。
念話が届くと通知音が鳴り「受信」と念じれば、念話を受けられるらしい。
こうしてワンクッションを置くことにより、互いの都合にあわせて快適に念話ができるという、画期的なアイテムらしいのだが……。
どうやら、五分おきに通知音がなってるらしく、クロベエがすっかり参ってしまっている。
可哀想な気もするが、恥ずかしがって受信しねえクロベエもだいぶ悪いと思うぞ。
さーて、村についたぞ。
前回来た時、俺だけ一週間くらい残って上下水道の整備工事をしてったんだが、そっから二週間か……なんだか、ちょっぴり門が立派になってるな……。
うーむ……ちょっとしたところからも、村の成長を感じるなあ。




