第34話 村が次の一歩を踏みだすために
体験会の日々はあっという間に過ぎ去って……なんか丁度、三が日にご招待したような感じになったな……。
まあ、いいお正月だったよねってことで、まだ帰りたくないと渋るキンタたちをつれ、始まりの村へと戻ってまいりました。
広場に村人を集め……なくても、なんか『ユウさんが来たぞ、どうせまたなんかやるぞ!』と、勝手に集まってきたので、とりあえずダンジョンの話をしたんだけどさ……。
強く興味を示したのは、狩人と一部の技術者連中くらいのもんで、後は『ふーん』って感じでした。
まあ、そうなりますよねえ……狩りや素材に興味がなけりゃそんなもんだって。
『肉がドロップするぞ』
って言えば……まあ、盛り上がったんだろうけど、今回は別のところで興味を持ってもらいたかったからね。
変な方向に話が流れねえよう、今回は肉ネタを禁止カードとさせていただいた。
そう、今回の説明は二本立て……というか、二本でワンセット、両方を聞いて初めて中身を完全に理解できるというものだ。
その二本目である魔導具の説明……うん、めっちゃ盛り上がってたよ。
薪を使うことなく、家の中でも安全に使用できる魔導コンロ、衛生的で快適な生活をもたらす上下水道とお風呂。
まずは、わかりやすい所から攻めましょうかっていうことで、事前に話し合ってた通り、ザックといっしょにこれらの説明をしたんだが、肉と同レベルで食いつきが良くってさ……。
予想以上の盛り上がりに、ザックは勿論、俺までビビり散らかすハメになったよ……。
そんで、盛り上がる村人たちから飛び出したのが『でも……お高いんでしょう』の一言だ。
ちょっと笑っちまったが、ちゃんと通貨が根付きつつあるなと嬉しかったな。
魔導コンロは一口のものが300リパン、二口で500リパン。
どちらも三段階の火力調節機能付きだが、村民の月収を1200~2000リパンと見積もると……まあちょっぴりお高いよね。
ただ、これはまだ個人でもなんとかなる金額だ。
真にお高いのは上下水道なわけですよ……。
上下水道の工事となると、規模も金額も個人でどうのこうのって話じゃなくなってくるだろ?
こういう時にお金を出すのがどこかと言えば、そりゃあ勿論自治体だ。
村が金を出してやる事業、つまり公共事業としてやるんだ。
財源となる税金までやりはじめちゃうと、いつまで経っても旅立てなくなるんで、今回は特別財源を村に付与して、そこから出してもらうことにする。
上下水道の設備に関しては、ザックとモルモル軍団が担うことになるのだが、流石に可哀想なので、俺もぼちぼち手伝おうと考えている。
そんで、上下水道の恩恵に預かるためには、各御家庭でキッチン・トイレ周りの改築工事をしなければいけないわけなんだが、これも今回だけ特別に俺がもつことにした。
費用をっつうか、俺が家を巡って、タダで改築工事をすることにしたんだよ。
なんでって、その工事ができる人材がまだ居ねえからだな……。
そうなんだよ、すっかり忘れてたけど、上下水道を整備したら、それを使えるように改築しなきゃならねえわけじゃん……。
人材を育てて、一軒ずつ工事して……って、やってたら、いつまで経っても終わらねえわけじゃん。
コンロはまあ、ゆっくりと普及してけばって思うけどさ、上下水道は衛生に直結するから、やっぱさっさと済ませておきたいわけですよ……。
なので、ここは『俺は背中を押すだけ』っつう信念をグイっと曲げて、俺ががっつり介入しちゃうことにしたんだ。
ただ、全部やっちまうのは流石にアレなので、面倒な改築周りは俺がやるけど、その後の仕事、上下水道への接続は、ザックとモルモル軍団に頑張ってもらう事にしたんだ。
これにはもちろん報酬が発生するので、一軒当たり100リパンが村の財源よりザックに支払われることになる。
そんで、水回りができたら欲しくなるのが風呂なんだけど、流石にこれは共用のもの、大衆浴場を作ることにしたんだ。
ほんとは各世帯に設置してやりたいとこなんだけど、キッチン、トイレに加えてバスルームまでとなると、俺もめんどくせえし、ザックたちの作業量がよりひでえ事になるじゃん。
つうか、そこまでやっちまったら、村のためにならねえからな。
デカいのをひとつ作っておけばさ、そのうち『一人でゆっくり入りたい』って思うやつが出てくるだろ?
そう思ったやつが、自力、それが無理なら誰かに依頼をして、家に風呂を作ったらいいんだよ。
それが広まっていけば、いずれは各家庭に風呂があるのが当たり前、ってなるだろ。
つうわけで、大衆浴場からはじめるぞってことなんだけど、これも俺がスマホで雑に建てちゃうことにした。
言ってることがフワフワしてんなって思うかもしれんが、ちゃうねん。
これも風呂を作れるやつが居ねえからってのが理由のひとつなのだが、大衆浴場みたいなのを、真面目に作ったらめちゃくちゃ時間がかかるだろ。
一ヶ月くらいならいいけどさ、あれもこれもってやってたら、あっという間に半年くらい溶けちゃうだろ……俺はさ、旅に出たいわけ。
だから、許される限りはさっさと済ませちゃいたいわけ!
いいんだよ、これも一種のサンプルなんだから。
ちなみに公衆浴場――銭湯は村が管理する公共施設だが、有料で運営することに決めていて、その料金は1リパンだ。
入浴料は銭湯で使う魔石や石鹸等、消耗品の購入費に充てられる他、余剰分は積み立てておいて、公共施設を作る際の資金にしてもらうんだ。
これも一種の税金みたいなもんですな。
……と、言った感じの内容を、もっとわかりやすく説明したところなわけですが。
いくら俺がほぼほぼ手伝うといっても、モルモル軍団がついているといっても、ザックだけじゃキツい。
つうか、既に『コンロを!』『水が出るスイドーを!』と、大盛り上がりの村人たちを見て、ザックの顔色がやべえことになってるわけですよ…
「ほら、ザック。弟子だ、弟子を雇えって言っただろ? 今がいいタイミングだぞ」
「あ……忘れてたっす……そうだ、弟子が居れば……なんとかいけるっすね!」
目に光を取り戻したザックが立ち上がり、村人たちに向かって声をかけた。
『誰か俺を手伝ってくれる奴はいねえっすか。コンロを一緒に作ったり、上下水道を整備したり……新しい物を作りながら、お金が貰える良いお仕事っすよー』
なんて、ザックの言葉を聞いて、ぱらりぱらりと手が上がった。
ひーふーみーよー……五人か、結構上がったじゃないか。
手を上げたのは若者たちで、狩りや農作業を手伝っている見習い連中らしく、今の仕事に不満はないけど、ザックの仕事の方が面白そうだと手を上げてくれたらしい。
「予想より多くの弟子が集まったじゃねえか、良かったな、ザック」
「うっす! これならなんとかなりそうです!」
「そんなザックくんには、ザック魔導具店の店長として頑張ってもらおう」
「なんすか、その素敵な感じの響きは!」
よくわからんけど、嬉しいっすと喜ぶザックくんには、特別に後で店舗も建ててやるからな。
当分の間は、ブラック企業も青ざめるほどに忙しくなるだろうが……俺もモルモルも頑張るからさ……一緒に乗り越えていこうな。




