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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第33話 天国と地獄

 ――見学会二日目


 キンタたちに『今日は付き添わねえから、お前らで好きなように潜ってこい』と言ったら、大喜びでダンジョンに駆けていきましたわ。


 ……キンタのやつ、なんか『タルットとやったスモウってのがよ、面白くてよ!』って、嬉しそうに語ってたが……スモウに夢中になって稼ぎを忘れそうだよなあ。


 ああ……見える。マーサにブチ切れられるキンタの姿が見える……。


 つーわけで、わたくしユウは完全にオフとなったわけで。


 特にやることもないので、のんびりと自宅のリビングでお茶を楽しんでいたりするわけなのです。


 マーサとリットちゃんはすっかり調理魔導具に心を奪われてしまったらしく、今日も我が家に襲来して台所から出てこなくなり申した。


 そこにルーちゃんも参戦し、料理を教えてもらってるらしいのだが、なにやらおやつを作っているようで甘い香りが漂ってくるんだ。


 ああ、なんて素晴らしい時間だろう、これが娘を持つということか……なんて幸せなんだ……なんて浸ってたら床下からうるせえ声が聞こえてきてぶち壊しですよ。


 下にいるのはザックとパンさん、そしてモル助だったな……あいつら村に派遣するモルモルがどうのっていってたけど、何騒いでんだ……?


 ちょっと気になったので地下に降りてみれば……モル助とパンさんがモルモルを訓練……いや、調教していた。


「お前たちはただの不定形生物だ! ふよふよと可愛く揺れ動くだけの存在、それがお前達モルモルだ! だが、お前らはそれでいいのか! ただ愛でられるだけの存在で満足していて良いのか! 良くはないだろう!」


「お主らが我の訓練に生き残れれば、お主らは浄化を司る存在に生まれ変われる事だろう! 訓練を生き抜いたその瞬間からお主らは清浄の魔物へと生まれ変わる! しかし、今のお前たちは卑しいタルットと何も変わらない! 湿原で最低の魔物、タルットそのものだ! お主らは沼の沈殿物をかき集め生まれたタルットと等しい存在でしか無い!」


 ……なにやってんのこいつら……どこの鬼軍曹なんだよ、お前らは……。


 言われてるモルモル達は嬉しそうにはねているし……。


 これ考えたのは、すっげえ気持ちよさそうな顔でモルモルを罵っているアホ女神だろうな……ザックは引いて……いや、感動に打ち震えている……だと?


「すげえっす……感動したっす! 俺も……俺だって、立派な大木になれるんすね! うおおお、がんばるぞお!」


 だめだ、こいつらはもう手遅れだ!


 何も見なかったことにして上に戻ることにした。


 ……

 …


「ユウさん、パンさんから貰った紙を見てこういうの作ってみたんだけど食べてみてくれる?」


 変なものを見ちまったと、疲れた顔で家に戻ると、マーサがニコニコと嬉しそうに微笑みながらホットケーキを持ってきてくれた。


 パンが渡したという、紙がなんなのか気になったので、持ってきてもらうと、それはなんと本だった。


 あーそうか、文字も紙もあったが、それをまとめた「本」というのはまだねえのか。

 

 しかし……これなんなんだよ。


 普通にそこらの本屋で買ってきたかのように、立派な装丁じゃねえの……。


 ふーむ……中身は……多分、レシピサイトをまんまコピペしたやつだな。

 

 ただし、使われている文字はリプラシル語と。


 中身が丸パクリなのはアレだが、ちゃんとローカライズしてんのは流石だよなあ。


 こういうとこはきちんとしてんのに、ちょいちょい抜けてるところがあるから、ほんと惜しい女神様だよな……。


 しかし、本なー。

 

 マーサが字を読めるのを知らなかったが、これなら少し教育をして、キンタの補佐をしてもらうのもいいかもしれん。


 シゲミチくんだけだと、いずれ潰れちまうだろうからな……。


 つうか、一度あの村の識字率をちゃんと調べたほうが良さそうだな。


 後でシゲミチに言っとこっと。


「ほらほら、ユウ! 冷めちゃうよ! ルーちゃんもリットちゃんと一緒にてつだったんだよ? 温かいうちに食べてってば!」


「おっと、そうだな。じゃ、ルーちゃん、マーサ、リットちゃん。いただきます」


 湯気を立てるホットケーキをフォークで切り取り、ぱくりとひとくち。


「うん、めちゃくちゃ美味しい! これなら村でも作れそうだし、流行るんじゃないかな」


「うーん、でもねー……卵がなかなか手に入らないから、ちょっと違うものになっちゃうわね。あと、オサトウだっけ? 甘い塩みたいなやつ。それもないから同じのを作るのは無理よ」


「あー、卵は無理だけど、砂糖ならうちで作ってるのを少しだけ分けてあげるよ」


「ほんとう!?」


「ああ、まあ、ちょっとだけだけどね。村でも作れるようにしてやりてえが、それはもうしばらく待ってくれな」


「ありがとね、ユウさん。色々やってもらってるのにサトウまでもらっちゃって……ほんと、凄い人よねえ」


「うん! ユウさんはほんとすごいよ! 色々助けてくれてありがとう!」


「うんうん、ユウがんばってるもんね。えらいえらい」


 くっ……優しさが目に染みるぜ……。


 これだよ、これ……俺が欲しかったのは、こういうのなんだよ……。


 おっさん共から「すげえやユウさん!」って言われても栄養は摂れねえんだ……。


 ああ……なんだろうこれ……心がポカポカする……。


 ……マジでなんか胸のあたりがポカポカするな?


 まさか……パンさんがたまに言ってる信仰心(リソース)とかじゃねえよな?


 なあ、パンさん……俺って……まだ、人間……ですよね?


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