第32話 次の一歩へ
ふう……なかなかに濃い一日だったぜ……。
俺たちダンジョン組は……まあ、最初は色々とアレだったけど、終わってみれば大満足の結果。キンタたちも、ダンジョンを気に入ってくれたみたいで、ほんと良かったよ。
パンさん率いる見学組は……っと。
……あの様子だとかなり楽しかったみたいだな。
「それでね、お父さん! お風呂にあるスイドウがね、かまどがあるお部屋にもあってね!」
「リット、もう勘弁してくれ……父ちゃん、緑のおっさんとやりあってクタクタなんだよ」
キンタのやつ、なんか知らねえけど最後辺りはタルットと相撲取ってたからな……。
どっちも脳筋気味のアホだから気があったのかもしれんな……。
……
…
ダンジョン疲れの狩人組と、見学疲れのおうち組。
食事の間はまだ元気が残っていたものの、お腹が膨れたら一気に疲れが出たのか、今日はみんな、さっさとお部屋に引っ込んでいってしまった。
食堂に残ったのは我々ユウ一家だけ。
まあ、ちょうどいいやと、反省会という名の情報共有を行うことにしました。
「……てな感じだったからさ、弓以外の攻撃手段を考え始めてよ、タルットと相撲取り始めたときには笑っちまったよ。ありゃもう完全にダンジョンにハマったね」
「大成功だったみたいでよかったわ。こっちもバッチリよ。マーサたちはすっかり魔導具の虜になったし、あの様子なら村人たちも絶対に欲しがるわ。ザックくんが作れるようになったら、あっという間に普及するでしょうね」
「それを読んでいたから、魔石もドロップ対象にしたんだが、こりゃ予想していたよりも早めに冒険者たちが通うようになりそうだな」
「はいはーい! ルーちゃんはもっとお友達増やしたいでーす! 冒険者が増えたらぜーったい大変になるもの!」
「たしかに……ドロロンあたりは、もう少しいてくれたほうが助かるもんなあ」
「ユウー! ヒカリがなーヒカリがなー! ダンジョンに帰ってくれないー!」
「良いだろう! 少しくらいならダンジョンは荒れぬ! もう少し一緒にいさせてくれ!」
「くっつくなっていってるだろー!」
「変なやつだな……外ではいつもくっついているではないか」
「ぐっ……ち、ちがうんだよ、ユウー! 聞いて、ねえ、ユウー!」
猫さんたちは……いちゃいちゃさせとくとして……だ。
みんなの意見を統合すると今後の活動方針が見えてくるな。
「まず、ここはちょっと手を入れて宿屋にしようと思う」
「えー! あたしのしんで……い、いえ、なんでもないです。続けてください」
「現状、リパンが使えるのは始まりの村だけだろ? しかたがないとは言え、村の中だけで金が回ってるのはよくねえと思うんだよ。だから外に金を使える場所をってね」
「うん? ということは、ちゃんと宿泊料をとるんだ?」
「そうだな。つうか、ダンジョンも入場料を取ろうと思う」
「ダンジョンまでお金を取るの?」
「ほら……あのシステムだとさ、気合があるやつはゾンビアタックしまくれるじゃんか」
「あー……怖いのと痛いのに目をつぶればできちゃうわねえ」
「そう、その怖いのと痛いのに目をつぶれるっていうか、慣れちまうのはマズイだろ? だから、入場料として5リパン取るようにするんだ」
「死に戻りしたらもっかい5リパン払うってこと?」
「そういうこと。わかりやすいデスペナがあれば、程よい緊張感が生まれるだろ」
「確かに……ねえ、それじゃあ宿泊料はいくらにするつもりなの?」
「宿代は……そうだな、一泊二食付きで10リパンだな。三泊して二日くらいダンジョンに行くとすれば……安く済んでもトータル40リパンか」
「弓が800リパンでしょ、それを考えると高いって思われるんじゃないの?」
「キンタたちの動きを見た感じだと、一日あたり10~20リパンくらいの利益が出せそうだから、多分大丈夫だよ」
「それって素材を村で売却するのが前提の話よね? 肉は肉屋に売ればいいし、鉱石はダンの所に直接売る形になるのかしら」
「そうだな。それ以外にも冒険者ギルドで換金できるボーナスアイテムも用意してるから、運がいいやつはモリモリ稼げるかもしれないぞ」
「ああ……あの、謎の人形とか、宝石箱みたいなやつね。お土産で持って帰る人もいるでしょうね」
「ギルドに買い取りリストを貼る予定だから、それに気付けば売りそうなもんだが……まあ、村に持ってくのもありっちゃありだな」
ちなみに魔石はザック行きだ。
魔石はそこそこいいお値段で買い取って貰うつもりだが、当分の間は貸しにしておくつもり。
ある程度儲けられるようになったら、分割で少しずつ払ってもらうのさ。
……完済日はわりと直ぐに来そうだけどな。
「なるほどねー。よく考えられてるじゃないの。これならうまく回りそうね」
「でさ、明後日辺りにみんなを村まで送っていって、そのままダンジョンとか魔導具とかの説明をするって言ってたじゃんか」
「ええ、ザックくんに大規模な工事をさせるんだっけ?」
「そう。まだ本人に言ってねえけど、多分喜んでやるはず……」
「あんた……ほんとそういうとこよ……それで?」
「工事期間はだいたい一ヶ月くらいかなーって思ってるんだけどさ、それが終わったらさ、みんなでちょっと旅に出てみないか?」
「旅に? モルモルやウサ族が居るから留守は任せられると思うけど、どうしたのよ急に」
「前に言ってたじゃん。酒を作り近接武器を振るう種族が居るってさ。そいつらと始まりの村が交流できるようにすりゃあ、面白いことになるんじゃないかなって」
「あー、奴らね……あーね……うーん、それなりに遠いけど、数ヶ月かかるって距離でもないし……悪くないと思うわ。ちょっと寒い所だけどね」
「ルーちゃんとパンさんは一緒に行くとして……クロベエはどうする?」
「おれはユウと一緒に行くよ。はなれるわけ無いでしょ」
「嬉しいけどいいのか? ヒカリはフロアマスターだから、留守番になるんだぞ?」
「べ、べつにいいよ!」
「そ、そんな! クロベエ……私を置いて……いくのか?」
「……帰ってきたら、また遊んでやるからさ、我慢してまっててよ」
「うう……絶対だからな!」
ほんと仲良しだよな、このネコチャンたち。
こりゃ、マジで近いうちに孫の顔を見れるかもしれん……。
「あ……なあ、パンさん」
「なによ?」
「ルーちゃんってダンジョンコアじゃん。ダンジョンから離れても平気なの?」
「今さらなに言ってんのよ……村とか行ってるじゃないの」
「確かに……」
「どれだけ離れてもダンジョンと接続した状態は継続されるし、ダンジョンになんかあっても転移ですぐに戻れるから問題ないわよ」
「なるほど……んじゃ、安心して旅に出れるってこったな」
大工事が終われば、始まりの村のテコ入れはひとまずおしまいだ。
勿論、今後も色々と追加でテコ入れをしていくつもりだけど、それに必要なパーツ、今の村に足りない物を補えるものが、未知の集落にあるらしい。
酒もそうだし、近接武器もそうだな。
どういうわけか、キンタたちには刃物を武器にするという考え方が存在してなかったんだよなあ。
それを作る鍛冶師がいて、使う住人たちがいる。
……パンさんのことだから、そっちはそっちで弓の概念が無かったりすんだろうなあ。
始まりの村の連中と、新たな土地の連中……その二つが出会った時……。
またひとつ、この世界は新たな一歩を踏み始めるだろう……なんつってな。




